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★【シリーズ】CLT(Cross Laminated Timber)(41)

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CLT実証事業 協議会に参加してきました

 日本住宅・木材技術センター様(以下 住木センター)にて募集・採択がなされた「H28年度CLT建築物等普及促進事業のうち協議会が取り組む実証的建築支援事業」の協議会が、各地で開催され、その内3つが、H29年11月21日~12月1日の間に開催され、2つは専門家委員として(たいへん おこがましい立場ですが)と、1つは協議会メンバーとして参加してきました。各事業ともCLTを積極的に利用した素晴らしい計画です。

 

ここでは、その事業の概要と当日の所見などについて、ご報告いたします。

同じく採択された全14の事業は、住木センター様のPDFを参照下さい。

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H28CLT実証事業.pdf
PDFファイル 198.6 KB

 

1. 松栄建設株式会社様 事務所 

 松栄建設(株)様の事務所建設(福井県坂井市)

 

 平成29年11月21日に訪問し、見学させていただきました。

 この事業のメインテーマとしては、「温熱環境」にあるのですが、構造的な特徴としては、下図のように建物が、構造的に3分割されていて、右端が「告示CLTパネル工法(ルート1)」、中央が在来軸組工法、左側が長ビス(シュミット社製)を使った接合方法です。ビス接合に関しては、ハウスプラス様にて接合試験を実施し、そのデータに基づいてルート3にて設計されたものとのことです。

建物の右端=CLTパネル工法(ルート1)、中央=在来軸組工法、左端=長ビス接合(ルート3)による
建物の右端=CLTパネル工法(ルート1)、中央=在来軸組工法、左端=長ビス接合(ルート3)による
【写真1】ルート1で設計された棟
【写真1】ルート1で設計された棟

【写真2】ルート3で設計された棟
【写真2】ルート3で設計された棟

 

 

【写真1】ルート1で設計された棟には、おなじみ(笑)χマーク金物が、ズラリと配列されています。

 

【写真2】長ビスを用いた、基礎-パネルの引張金物などでは、形状が工夫され引張耐力と施工性が考慮されていました。施工性についても、せん断等も長ビスのクロス打ちで設計されており、ルート1棟に比べ早く施工が進められたとのことでした。

 

 


 

 ルート3となると計算書や適判などハードルが、高いのですが欧州などでは、長ビスがCLTの建設に多用されており施工性の良さが、言われています。

 まだ日本でのCLTパネル工法の設計法が、定められてからの日も浅いので、もう少し時間がかかるかもしれませんが、長ビスなど施工性の良い、また意匠性も良くなる金物によるルート1での設計が可能になることを期待します。

 

 メインテーマ 温熱環境に関しては、松栄建設(株)様独自の工法である「マッハ工法」が採用されるとのことです。

 

 

 室内に空調室という小部屋を設け家庭用のエアコンと送風機を設置し、これ1台で家全体の冷暖房を賄うというシステムだそうです。

 費用の軽減だけでなく居室・水回り・廊下などにおける温度差が、生じず、高断熱・高気密のメリットを最大限に活かすシステムが設置されるそうです。

 CLTの断熱性能と合わせての測定結果にはたいへん期待がもてるのでは、と報告会での結果を楽しみにしています。 

 


 

 

2. 南東北春日ディサービスセンター

建物見学会と 協議会

 

 平成29年11月29日 福島県 藤寿産業(株)様が事務局を務められ、建設が進められている、須賀川の現場見学会とその後、開催された協議会に出席してきました。

  当日は、午前中に事務局からの建築概要の説明と東京大学腰原教授の講演、午後に現場見学会の2部制での開催。参加者は、予想を超え130名ほどで盛況に開催されました。

 

 

 

 腰原教授のお話では、今までの我が国における木造建築における推移と、現在の姿。そして今後への期待、木造らしい木造とは?などのお話がなされた後に、今回の建物の設計にあたっての検討点や趣意についてお話がなされました。

 

 今回の実証事業における主題としては、「床遮音性能の確認」「施工性の確認」にあり、集成材の脚部金物の共有化を目指し開発された脚部金物の施工第1号ということもあり施工性はもちろんですが、価格などについても報告がなされると思います。

 


 

建物用途としては、病院付属のディサービスセンターです。

使用上、小部屋はもちろんのことですが、ある程度の大空間も必要とのことで

建物は、1方向ラーメン構造とし、他方に耐力壁を使用した構造の木造3階建て準耐火構造として設計、施工がなされています。

 

 

 

 

説明の中で開発された左写真の脚部金物は、

鋳鉄で作られており、集成材との接合にはGIR接合が採用されているため、ベース金物部以外は見えてこない、スッキリとした仕上がりとなっています。

 

ただ お話によると素材の「鋳鉄」の採用において

確認申請を通すのに大変苦労したとのことでした。

 

 当社のSAMURAIも含めた、このような新しい材料の利用に関していろいろな意見が聞かれます。「指定建築材料に入っていないものは、使ってはだめ」私もこの考えが正しいものだとずっと思っていたのですが、「入っていなくても、使ってはダメとは書いていない」という話も聞こえてきており、明確にして欲しいのと2000年に削除された法第38条に代わる「新しい材料」「新しい工法」を利用するルートなどを明確に示して欲しいな~と思っているのは、私だけでしょうか?

 

3. 仙台 高森住宅 

 上記、郡山での協議会翌日の11月30日に 山佐木材(株)下住工場にて協議会が開催されました。今まで数度も開催されている本協議会には、施主である三菱地所様、三菱地所設計様と竹中工務店様、総勢10名が当社までお越しいただき開催しました。

 すでに耐火認定取得への作業は終了。現在、大臣認定を申請中となっているため今回は、竹中工務店様にて検討をすすめられている構造試験の報告と構造認定作業の中間報告と当社工場視察・製造打合せが、主題の協議会でした。

 

4. 実証事業報告会 開催予定

 平成28年度、28年度補正、29年度 CLT実証事業の報告会が予定されています。

 今回は、建設予定地により、東京と大阪の二か所に分けて開催されるようです。

 

 ■東京会場

 平成30年3月8日(木)すまい・るホール(東京都文京区後楽1-4-10)

 11:00~16:30(予定)

 ■大阪会場

 平成30年3月12日(月)グランキューブ大阪 1202(大阪府大阪市北区中之島5-3−51)

 13:00~17:20(予定)

 

 詳細・募集は、(公財)日本住宅・木材技術センター様のHPで行われると思いますので、そちらを参照願います。(近くなってからだとは思いますが)

 


過去物件訪問の旅 PART 2

 11月29日に開催された須賀川・郡山協議会の前日、仙台での仕事が午前中で終わったので、午後にふらっと、石巻方面に過去物件を見に足を延ばしました。

 

 

 左写真は、仙台駅東口のタクシー・バス乗り場にあるシェードなんですが、1期工事(上)では、湾曲集成材を使い、屋外だという事で塗膜系の塗料でコーティングして設置されましたが、塗膜が切れるとそこから劣化が進み、行く度に傷みが広がっていた記憶があります。

 

 2期工事写真(下)では、鉄骨のフレームにそれらしい色のボード貼で施工されています。

 やはり外部では、接着性能は落ちないといっても表面の汚れや劣化は避けられないものだと

感じます。

 



 

女川町 温浴施設 ゆぽっぼ

日帰り入浴施設なのですが、1階はJR石巻線の女川駅舎となっています。

 

東日本大震災で壊滅状態となってしまった同町の将来を海に向かって羽を広げて飛び立つイメージでの意匠とお聞きしました。

 


 

 この物件は、私が山佐木材に来る直前に在籍していた○MKCにて担当させていただいた物件で、構造設計・契約までは、お手伝いしていた後、現場定例会に2度ほど出席し、その後 鹿児島に渡ってきたので、○MKC様にてキチンと施工がなされました。

 

 

その後 近くに「宮城県慶長使節船ミュージアム サンファン館」

http://www.santjuan.or.jp/

という集成材の建物があるのですが、東日本大震災被害を受けた直後に視察に行きました。


 

 写真のように海に面した建物だったため、集成材のフレームは無傷でしたが、壁に配されたガラスは、ほとんど割れている状態でしたが、フレームはしっかり残っていたので復旧を期待して訪れてみました。

ちなみに右の写真でレッカーが倒れているのは、津波が原因ではないと思います。(笑)

 

 

 せっかくやって来たのですが、当日は休館日で中に入れませんでした。残念。

 

 ちなみに 先の写真を撮った調査時には、施設は避難所として使用されていたため、自由に出入りができました。無断侵入とも言います。

 

 

 


 

 これからも、機会があれば過去物件を訪ねる旅を続けたいと思うのですが、30年近く経つと市町村合併やら施設の所有者が変わったり、また私の記憶が薄れたりで見つけられないものもあります。(笑)

 

直近の目標としては、今いる九州の中で古い建物(当初の名前ですが)

・宮崎県南郷村林業者等健康増進施設体育館

・飫肥営林署

・福岡県小呂島(施設用途不明)

・水俣駅前のバス待合所

など、残っていないかもしれませんが、探してみたいと考えています。

見つけたら、報告をさせていただきます。 

常務取締役技術本部長 塩﨑 征男