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★【稲田顧問】タツオが行く!(第48話)
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「これまでのタツオが行く!」(リンク)
48.2つのイベントを終えて
私の所属する2つの団体の年1度の重要なイベントが、10月と11月にそれぞれ執り行われ無事終了した。一つは、「超高層ビルに木材を使用する研究会」の「総会・記念シンポジウム」で10月28日に行われた。もう一つは「鉄骨構造技術支援協会(SASST)」の「鉄骨技術フォーラム2021」で、11月11日に行われた。いずれもコロナ禍ということもあり、会場参加者は三密を避けるため人数を絞り、WEB配信も併用して実施した。いずれのイベントも会場・WEB配信併せて50名を超える参加者があった。参加頂いた方々はもとより、開催に向けてご尽力を頂いた多くの方々に心より感謝申し上げる。
「超高層ビルに木材を使用する研究会」の記念シンポジウムでは、毎年新しい市場である中大規模木造(混構造を含む)をいかにして立ち上げるか、あるいは軌道に載せるかがテーマとなっている。年々少しずつではあるが進展していることは間違い無いのだが、例えば今年は、
・「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律(平成22年10月施行)」の改正
・「建築物に利用した木材に係る炭素貯蔵量の表示に関するガイドライン(林野庁長官通知)」
が施行されたが、多分10年に一度の大きな動きではないかと思う。
そんな中、大手デベロッパの三菱地所の関連会社である「メックインダストリー(MI社)」が鹿児島県湧水町で操業を開始した。これもまた、後で考えれば大きな転機であったということになるのではないかと思う。今年は、MI社の森下社長とJFEスチールの藤沢部長に基調講演をお願いした。木材活用促進の流れの中で、ビッグビジネスのキーマンがどのようなことを考えておられるのか、興味深く拝聴した。やがてある日突然、中大規模木造がブレークする日が訪れるという大きな夢を抱きながら、一方でコストの問題等まだまだ解決しなければならない課題を多く抱えていることも、改めて実感したシンポジウムであった。
一方SASSTの方はと言えば、今年も設計・施工・鉄骨製作会社間の連携不足の問題が気になるフォーラムではなかったかと思う。いろいろな見方はあると思うが私としては、鉄骨構造分野は技術的にも品質管理の側面でも、木質構造分野に比べ一歩先を行っているようには感じてはいるが、一方で厳しいローコスト化の制約の中で、長年に渡る「しこり」のようなものも溜まっているのではないかと危惧する側面もある。
問題は、大きな夢を描きながらも現実には多くの課題に直面する木質構造分野と、長年の技術の蓄積には自信と誇りを持ちながらも日常の経済的制約に苦悩する鉄骨構造分野をうまく結びつけることができないかということである。2つの団体はいずれも小さな団体だが、縦割りの窮屈な社会の中では、それを多少は逸脱できる柔軟さも備える存在である。この2つの団体の連携を図ることで、何か新しい道が見えてくるのではないかと思うのだがどうだろうか。
(この文章は山佐木材とSASSTの2つのメルマガに、同じ内容を寄稿しています。)
(稲田 達夫)