メールマガジン第98号>稲田顧問

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★【稲田顧問】タツオが行く!(第54話)

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「これまでのタツオが行く!」(リンク

54.島巡り

 今年5月で71才になった。たまに、仕事を辞めたら何をしたら良いだろうかと考えることがあるが、元々無趣味の人間なので、多少心細くなる。私の友人の多くはゴルフを楽しんでいるが、健康と退職後のコミュニティーを持続できるという点で大変良い趣味だと思うが、残念ながら僕はゴルフはやったことがない。

 

 そんな中で趣味というわけでも無いが、結構楽しんでいることの一つに離島巡りがある。2009年に九州に来てからは結構多くの島巡りを行ったと思う。福大在籍時代は、手近な所では博多湾の能古島、ここは家内とも、福岡に来てくれた友人とも、学生とも何度も行ったものである。家内の還暦のお祝いには屋久島(縄文杉まで行ってきました)、その後長崎の五島列島など、これらは3泊くらいしてゆっくり廻って来た記憶がある。

 鹿児島に来てからは、その頻度は飛躍的に増える。宮古島、甑島、硫黄島(ここは戦争の島ではなくて俊寛僧都が島送りになったので有名な島。別名「鬼界が島」とも言う)、種子島、奄美大島(普通にホエールウォッチングができる)、長島(日本で一番公衆トイレがきれいな島)、獅子島などを廻って来たが、最近はコロナ禍の為、医療体制の弱い離島には迷惑をかけてはいけないと思い、暫く自重していた。

 

 しかし、ワクチン接種も進みコロナ禍もそれほど話題にも上がらくなってきたので、そろそろ良いのではないかと思い、甑島に行ってみることにした。甑島を選んだのは景観が美しいという点で傑出した島で印象深かったのと、上甑と下甑の2つの島に分かれており、その2つの島を結ぶフェリーが1日1便しかなかったので、最低でも2泊はしないと、島巡りはできなかった。それが最近「甑島大橋」が完成し、2つの島を1日でも回ることができるようになったという噂を聞いたからである。

 今回の甑島巡りの目的は、甑島大橋を観ることである。(一応その写真を掲載しておく。もっともこの橋は海の上から撮影した方が綺麗なようで、大橋の良さを捉えたとは言い難い写真であるが)実は前回来た時にも甑島大橋のそばの展望台から工事の進捗状況を見たのであるが、もう少しという状況であったので、逆に完成までに意外に時間がかかったなという印象を持っていた。しまし、今回行ってみて、その謎は解けたのである。

 

 驚いたのは、甑島大橋の起点と終点まで行くのには両側共に長いトンネルを通らなければならないのである。甑島は固い岩でできた絶壁の島である。上甑と下甑はそれほど離れていないとしても、最も近い地点間を橋で結ぼうとしても、そこまで行く道は無い。それで固い岩をくり抜いてトンネルを掘って道を作っていたのである。

 島の人たちにとって、同じ名前を持つ2つの分断されていた島が結ばれた喜びは我々には想像もできないことだと思う。単に観光の為ではなく、島の人たちの1つになろうとする執念のようなものを感じたトンネルだと思った。甑島大橋の写真はいろんな所で目にするが、やはりその地に行ってみないと分からないことはあるのだと痛感した島巡りであった。

 

(稲田 達夫)