М田次長のぶらり肝付町の旅・宇宙編①

JAXA(宇宙航空研究開発機構)内之浦宇宙空間観測所は、肝付町の東南端、太平洋を眼下に見下ろす高台に位置しています。

ここから、あの“はやぶさ”が小惑星“イトカワ”に向け発射されたことで一躍脚光を浴びました。昨年夏には、イプシロンロケットの打ち上げにも成功しています。

 

この観測所は、1962(昭和37)年、東京大学生産技術研究所の付属施設として内之浦に設置されました。

その2年後には東京大学宇宙航空研究所鹿児島宇宙空間観測所(KSC)と改称され、最新の宇宙科学研究計画が進められました。今から半世紀前、東京オリンピックが開催される頃のことです。

宇宙科学資料館。上から見ると風車のよう?
宇宙科学資料館。上から見ると風車のよう?


この計画では、ロケットや衛星・観測機器などの開発と併行して、それに必要な建築施設の研究開発も進められたそうです。

 

建設の建築プログラムの中心となったのが、池辺 陽(イケベキヨシ)氏です。

池辺氏は、長く東京大学の教授として、工業化という方向から建築をとらえた作品を残していますが、当時は、生産技術研究所での宇宙研究のグループに参加し、施設研究を担当していました。

彼は「建築としては70棟近くに及ぶシリーズが形成されている。」と著書に記しています。

その池辺氏の設計した作品群が、長期にわたる劣化に耐え、今も当時の姿を残しているものがあるのです。


JAXA内之浦宇宙空間観測所を訪れた人が、まず目にするのは 門衛所の右手に建つ「宇宙科学資料館」でしょう。

鳥瞰すると6つの羽根を持つ風車(かざぐるま)のようにも見える5階建てのビルです。と思いきや、立体的には六角形の吹き抜けを軸として、5つのユニットが、仕舞われていたそれぞれ一回り大きいユニットから引っ張り出されて開かれたようなイメージのデザインになっていると思いませんか?

逆にカシャン、カシャン、カシャン!と入れ子のように仕舞うことができるような気もしてきます。

見学者は右上に写る橋から5階部分に入り、見学しながら螺旋状の階段を降りていく
見学者は右上に写る橋から5階部分に入り、見学しながら螺旋状の階段を降りていく

見学者は、一番高いフロアーから順に右回りに次のフロアーに降りていくことになります。まさにネジを締める(閉める)回転に誘われるのです。

しかし、中心の六角形の吹き抜け(いまはロケットが入っている)を見上げると、今度はネジが開放される回転を体験することになります。

建物内は吹き抜けになっており、真ん中にM-3Sロケットが立っている
建物内は吹き抜けになっており、真ん中にM-3Sロケットが立っている

今、この建物は展示室の改修工事中です。建物の設計図も展示してもらえば、楽しみは何倍にもなりそうな建物です。

 

「単に扉が開く、閉じるということのハードな意味でなしに、建築自体が開き、或いは閉じる一種の呼吸運動ともいえる動きを続けていくことに、建築と人間のつながりが成立するといってよいのかもしれない。」(31 開くこと閉じること P83)

いやはや、随分なこじつけになってしまい、池辺教授に怒られそうですが・・・

(次回に続く)

 

引用は特記ない限り 池辺陽著『デザインの鍵-人間・建築・方法-』より

取材協力 小林省三様