11月2日(土)ウィーンにて
空港から市街地行きの列車に乗りましたが、網野教授ほか数人は別の予定があって少し先まで行くとのこと、電車で別れて私達数名はホテルへ向かいました。
電車を降りてすぐ、前を歩いていたYさんが突然硬直、うめき声を上げました。
「バッグを忘れた!」
何とパスポート、財布、カードなど何もかも入っている手回りバッグを、電車に置き忘れたというのです。一同悄然としながらとりあえずホテルに入りました。
すぐに網野教授に連絡しましたが、すでにその電車を降りたところでした。それからは、日本大使館は?カード会社は?警察は?保険会社は?と、皆で手分けして電話をかけまくり、ホテルロビーの一角を騒然とさせました。
その最中、網野教授から電話が。何と奇跡的にも見つかったという連絡です。
網野教授達のお手柄でした。「あの電車は折り返して帰ってくる可能性が高い」と、ひっきりなしに到着する電車の車中を、ホームから目を皿のようにして見続け、そしてYさんのバッグを発見、その車両に飛び乗り、置き引きに間違われないように「有った!有った!」と叫びながらバッグを回収したという実に胸のすくような活躍でした。
一部始終を目撃したSさんは若い人たちのめざましい活躍ぶりに感激のあまり、オイオイ泣いたとか。
Yさんはいかにも九州男児らしい快男児ですが、その怒濤の狂喜乱舞は今でも鮮やかに目に浮かびます。その日は全員がYさんの奢りの口福に預かった次第です。
11月3日(日)、4日(月)
今日の便で帰る皆さんを近くの駅まで見送りました。
私達夫婦は同じホテルにあと2泊滞在します。冷たい小雨の降る中、ウィーンの街を当てもなく終日歩き、また電車に乗りました。
映画「第三の男」で有名なプラーター公園の大観覧車に乗り、シュテファン大聖堂の尖塔に行く何百段かの階段を上りました。家内は登り切ったときには息も絶え絶えでしたが、私は殆ど息が切れることもなかったので、ちょっとだけ胸を張ったことでした。街ではウィーン名物とワインを頼みました。ホテルでは、日本からはるばる持ってきた日本酒を味わいました。
11月5日(火)
ホテルを引き払い、後ろ髪を引かれるような思いで、一昨日皆さんを見送ったホテル近くの駅から列車に乗り込み、ウィーン空港へ。
そしてオーストリア航空の機中、搭乗前に買い込んでいたヘネシーを、うまいなあとしみじみ味わっていると日本人乗務員からおしかりが。「お強そうですけれども、思わぬ悪酔いをすることもありますので、強いお酒はお控え戴けませんか」と誠に丁寧なご挨拶なので、快く了承、潔くテーブルから酒瓶を鞄の中へ。あとは言いつけに従って飲まぬ風に、テーブルの上に酒瓶を置かず、鞄の中から取りだして、飲んだらまたしまう、きれいに飲み終わったらそのまま気持ちよく就寝、目覚めたらもう日本上空です。
成田到着後、最近運行されている成田発LCC便に乗って、鹿児島へ。こうして足かけ11日の思い出深いヨーロッパの旅を、無事終わることが出来ました。(完)
代表取締役 佐々木幸久
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