2月も月末を迎える頃、東京は江東区辺りに行く用事ができました。
M理さんが素早く手配してくれた宿は下町風情豊かな深川、門前仲町。大衆酒場が軒を連ねる通りを抜けた静かな場所でした。すぐ近くを墨田川の支流、大横川が流れています。朝の打ち合わせまでの時間をつかって、この川沿いをぶらりとしてみることにしました。
2月26日午前6時、ホテルを出発。少し肌寒さを感じます。昭和11年の動乱が発生したこの日は雪だったそうですが、今日は、曇り、午後からは冷たい雨になりました。
ホテルのすぐ裏を流れる大横川にかかる石島橋から下流に向け歩き始めました。この橋からは、両岸を覆う桜並木が上流も下流も見えるところまで続いています。春の花見はさぞや賑わうことでしょう。滝廉太郎が明治33年に作曲した「花」はまさに桜花盛りのこの辺りの情景を歌ったものなのでしょう。そのころにもう一度訪ねて昼から一杯やりたいものです。
すぐ下流に架かる黒船橋の通りを超えて、散歩道沿いに進むと、対岸にレトロな建造物が見えてきました。株式会社ヤマタネさんの倉庫が並んでいます。高いビルで作られた四角ばかりの都市風景の中で、三角屋根の建物群は、見るものをほっとさせる力があるようです。いつの時代に建ったのだろうか、出入り口はこちら側なら、きっと船で荷を運んだのだろうか、はたまた、この10番倉庫では何を扱っているのだろうかなどと、しばらく佇みながら思いを巡らしてしまいました。
さらに下って、有名な「永代橋 あみ亀」の屋形船を見ながら巽橋を渡ると、もう隅田川に合流します。「春のうらら」というには季節が少し早すぎますが、「隅田川」という詞が出てくる歌は他に知らないので、口ずさみながら、ここから大川を左手に見ながら上流へ向かって歩きました。川に沿った遊歩道は人通りも少なく、ときおりイヤホンをしたマラソン人が走り去るだけで、下手な歌を聞かれる心配もありません。
ほどなく青い大きなアーチ橋が見えてきました。永代橋です。大正15年(約90年前)に竣工したこの橋は、国の重要文化財に指定されています。橋長185.2m、幅員22mの重厚感あふれる、「帝都の門」と呼ぶにふさわしい姿に圧倒されてしまいました。同時にまた、その時代にこのような大橋を架けようという発想と、実現した技術力に驚かされます。
短いぶらり散歩でしたが、やはり、東京は日本の歴史や文化、そしてビジネスの中心なのだという思いを新たにすることができました。
朝の打ち合わせの時刻が迫ってきました。東京隅田川のぶらりはここまで。
(M田)
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