町内のあちこちをウロウロしていると、今までは気に留めなかったいろんなものに目が行くようになってきたようです。先日水を汲みに行った帰りに内之浦中学校の入り口前で小さな看板を見つけました。
「お線香 一輪館」
その下に消えそうな字で「香木」とあります。近くにお店は見当たらず、道路向かいの立派なお屋敷の石門に、店の名を記したこれまた小さな表札が掛かっているだけです。
「こんな田舎にお香屋さんとは。」と気に掛かりつつ、一月近くがすぎた正月も終わりのとある土曜日。男一人でお香を買いに行くのもなんなので、家人を誘うことにしました。今度は機嫌良く同行してくれるとのことでしたから、早速国見トンネルを越えお店を訪ねることに。約20分のドライブで、国道448号との交差点、ここを左折し200mほどで目指すお店に到着しました。
お休みかもしれないね、とちょっと気を遣いながら、柱のピンポンを鳴らして待っていると、60代半ばとおぼしき上品な女性がにこやかに出てこられました。一輪館店主の山本ゆり子さんです。まずはお香のお話しを伺い、軽い香りの一箱を買い求めました。ゆり子さんは、金沢に長くお住まいで10年ほど前に帰郷、ご実家を使ってお店を始められたそうです。
それにしても気になるのは醸し出される心地よい落ち着きです。
お話しをお聞きすると、ゆり子さんは、1960年代内之浦へのロケット試験場誘致に尽力された故久木元峻(くきもとたかし)町長の娘さんでした。この家はおじいさまが病院として改築されたものだそうです。なるほど柱や欄間にもどっしりとした貫禄を感じました。奧の鴨居に掛かっている額は西郷隆盛の自筆の手紙とのこと。
いろいろな話題で楽しい時間を過ごすことができました。その中のエピソードをひとつ。
(ゆり子さん談)
わたしが中学に上がるか上がらないかの頃、内之浦に広島から音楽の先生が来られて、ピアノやバイオリンの演奏の指導をされました。女性の方でした。そのとき高山から二人のご兄弟がご両親と来ており、一緒に教わったのを覚えています。わたしはピアノ、お二人はバイオリンでした。確か上の方はわたしと同い年だったと記憶しております。今もお元気でしょうか?
この兄とは誰なのか、(おおよその目星はついておりますが)謎ということにしておきます。
お香はもちろん、静かでゆったりとした時間を堪能させていただきました。ご馳走様でした。
(このツアー 次あたりで終わるかもよ M田)
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