この夏、可愛らしいネーミングのゲームソフトがリリースされました。
会社の中でも、町中でも、ところかまわず、スマホを片手に「アッ、いたいた!」とか「でたぁ!」とか大騒ぎになっております。いたり、出たりしてるのは「バーチャルなモンスター」の仲間だそうで、道ばたにころころ転がっているのだそうですが・・・。
私の中では、この世に、いたり、出たりしているのは、ツチノコとか妖怪の類であり、なかなか目にすることはかなわず、できれば一生お会いしたくないほうの「リアルで妖しげな化け物」たちでした。
そして日本では、昔から夏真っ盛りのこの時期になると、そちらの類が出ることになっているようです。
実は、ここ大隅高山地区(現在の肝付町)は、メジャーな妖怪の出身地といわれています。あの鬼太郎に出てくる白いひらひらした、人?のいい妖怪、その名も「一反木綿」。
伝説によれば、志布志湾に面した波見地区、権現山に住んでおり、夕方薄暗くなる頃、肝付川を遡りながら一反の布のようにひらひらと飛び、人を見つけたらぐるぐる巻きにして絞め殺してしまうという恐ろしい化け物です。
特に、四十九所神社の前の道を通る子どもたちも襲うそうで、何でもいちばん後ろにいる子どもが狙われるらしく、ご老人から、昔はこの道にさしかかるとみんな死にものぐるいで走ったものだと聞いています。
そこで、ある日のお昼前(夕方以降は本当に出たら怖いので)、すみかの権現山に行ってみることにしました。
麓の波見荒瀬集落からよく舗装された林道を車で走ること10分余り、30台はゆっくり停めることのできる登山口大駐車場に到着。
観光地並みに水洗トイレも整備され、清掃も行き届いています。「権現山=一反木綿」をキーワードに観光地としてアピールしたかったのかも、と勘ぐりたくなるほどの力の入れようです。
まずは、山頂に向かってみましょう。
頂上へ向う細道が、うっそうとした二次林の中を通っています。木製の階段があったり、苔むした緩い坂であったり。私外にはおそらくは誰も登ってはいないのでしょう。心細くなるほどの静けさにつつまれています。海から吹き上がってくる風が涼しく汗ばむこともありません。木陰を心地よくゆっくり歩き15分ほどで山頂のお宮が見えてきます。
ここに祭られているのは龍神です。一反木綿の本当の姿は龍神様なのかもしれません。
そういえば、スタジオジブリの映画「千と千尋の神隠し」で龍神「珀(ハク)」が空を飛ぶイメージと一反木綿とはどこか似ているような気がします。
山頂に設けられた展望所からは、鹿屋市から志布志市まで肝属平野を一望の下に見渡せます。人間ながら、ここから肝付川を遡り飛べたらさぞ気持ちが良かろうと思うことでした。
その昔、権現山は海上交通の目印であり、物見櫓だったことは想像に難くありません。人々はここを神聖な場所として崇め、子どもたちを水難や事故から守るために、恐ろしげな妖怪を誕生させたのではないでしょうか。
この穏やかな風景を眺めていると、ここに住まう妖怪「一反木綿」は肝付の守り神だったんだなぁと実感することでした。少し運動になって、気持ちを落ち着かせてくれるゲームでした。
(次は海辺にしようか?M田)
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