ニュージーランド2日目(2016年6月8日)
アグロドームで羊の毛刈ショー
午前中希望者で「アグロドーム」に行くことに。牧畜や農業の国ニュージーランドの情報発信基地として効果的な施設です。広大な敷地があって、体験農業的な事も出来るそうですが、私たちは観光施設の木造館へ。ここで羊の毛刈りなどの出し物を見ます。
観客は中国、韓国、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド国内。日本人は私たちだけで、全体で最も少ない10人。それぞれの言語の同時通訳者がつきます。ガイドさんの紹介で日本語担当者に挨拶。
弁士が立ってショーが始まりました。この司会が大男で芸達者で、早口で良くしゃべる。それを同時通訳が必死で訳すのを、我々はイアピースから聞くのです。いささか野卑な盛り上げぶりで観客も大喜び。
ころころと羊を転がしながらの毛刈りも自ら実演、19種類の羊のお披露目、外に出ての牧羊犬による羊の追い廻しなど、大したエンターテイナーぶりです。
驚いたのが、仕事としての羊の毛刈り。
羊の毛刈りは大変儲かる仕事だというのです。
その刈り賃は1頭当たり2NZ$とのこと、えっ150円?その値段で本当に儲かるの?
弁士によると毛刈り職人は1日9時間労働で600頭の羊の毛を刈る、つまり1頭当たり1分かからないわけで、その効率に2度目のびっくりです。確かに600頭やれば、1頭2ドルでも1200NZ$、10万円以上の日当になります。年100日なら1000万円、150日なら1500万円以上の年収で、確かに「儲かる仕事」と言えそうです。
しかし1人1日当たり600頭で、年間150日の仕事量を確保するには9万頭の羊が必要です。こういう人が何百人もいて、それぞれが十分な所得を得ているのならば、畜産から食肉、繊維までの巨大なサプライチェーンが出来ていることになります。圧倒的な効率を背景にした、圧倒的な国際競争力が背景になければ出来ることではありません。もっともそれが出来ているから国際競争力が出来たとも言えるのでしょう。
しかし一頭の羊を1分で丸裸に出来るとは。労賃はわずか150円とは。それで1日10万円も稼ぐとは。感嘆しつつもまた慨嘆することでした。
羊の毛刈りを我が国林業に引き比べてみる
我が国でも戦後植えた木が概ね伐り時を迎え全国で伐採が盛んになってきました。伐ったあとには当然植え付け(再造林)をしなければなりませんが、植え付けの人の確保が難しくなっているのです。歩掛かりとしての植え付け費は決して安くないと思うのですが、植え付けの仕事が儲かると聞いたことがありません。
実は一人が1日に植え付ける本数が、主たる林業国の中では我が国が一番少ないのです。あちこちで聞くのですが、最も多いところで1日1人400本、一般的に200~250本でしょう。
一方海外ではどうか。私の聞いた限り、どこでも不思議に同じで1日1000本なのです。
1本当たり植え付け費が100円であっても200本植え付けなら、1日20000円です。一方1000本植えれば、100000円の日当になります。仮に単価が半分でも、50000円。
例えば大学生が、1人ではいやだがサークル仲間数人と休暇中に挑戦したとします。1日50000円で20日働いて100万円になります。
例えば初めての仕事で大変でしょうが、夜の飲食店のアルバイトに比べれば健康的です。やっただけの収入が保証されるのであれば若さで乗り切れるでしょう。
次の課題が生まれます。5人で1日5000本。20日間だと10万本。現状だとまず苗木の供給が追いつかないと思います。
次に植え付けの場所ですが、1ha当たり1000本植えなら5人分の作業場所として100ha、1500本植え付けで75haが必要ですが、誰がこれを継続的に、かつ広範囲に確保できるかです。
我が国では林業が儲からないことになっているので、造林から間伐まであらゆる作業に補助金を付けています。補助事業の受け払いは極めて複雑な事務作業であり、専門教育を受けた林業技術者が多数これに携わっています。ベテランの技術者が本来の業務たるべき林業の技術や構造的問題の改良に携わるいとまもない有様です。
国際的に見て我が国林業は劣勢にあり、施業面積は伸びません。単価は高くても作業量が少ないので、結果的に従事者の全体所得は他の林業国に比べて問題になりません。人手不足はやむを得ないでしょう。
本日の整理
・国際競争力を確保できる商品価格を設定する。
・それに見合う労働単価を設定。 一頭2ドルとはまた何と安い!
・単価は安いが、仕事は継続的にいくらでもある。
・本人の技倆と頑張りで、沢山の仕事をこなす。 一人で1日600頭とは!
・少しでも効率を上げられるよう、配慮する。
・平等になどとの配慮から所得の頭切りなどしない、 1日10万円!
・継続して高い所得を上げられるなら、人材は集まる。
(メモ)
・午後は、初回に紹介した「レッドウッドフォレスト」
・昼食 インドカレー 10NZ$
・夕食 荒川団長1日遅れで到着。団長を交えての合同夕食会 75NZ$
サツマイモのポタージュ、ラム肉ステーキ、デザート
ビール、ワイン
(佐々木 幸久)
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