超高層ビルに木材を使用する研究会:第4回総会および記念講演会

 10月15日(土)、当社が事務局をつとめる「超高層ビルに木材を使用する研究会」の第4回総会、記念講演会が福岡大学工学部で開催されました。

 この研究会は今年で設立4年目を迎えました。福岡大学工学部の稲田達夫教授を中心に、主に九州内の有志10名ほどで設立しましたが、会員の皆様からのご紹介や、趣旨にご賛同いただいた方々からの入会希望により、法人会員14社、個人会員51名になりました。事務局として皆様のご支援に感謝申し上げます。 

 

 例年、10月の総会にあわせてゲストをお迎えして講演いただいておりますが、今年は宇都宮大学の中島史郎教授と林野庁木材産業課の服部浩治課長補佐に講演をお願いしました。

■日時:10月15日(土)13:00~会員受付開始、14:00~一般受付開始

■場所:福岡大学 工学部11号館 1階1111教室

■内容

(1)13:30~14:00 総会

(2)14:15~16:00 総会記念講演会

 <基調講演>「中高層建築物の木造・木質化の可能性」

             宇都宮大学地域デザイン科学部建築都市デザイン学科教授 中島 史郎氏

 <林野庁講演>「都市の木質化のための新たな技術の活用」

             林野庁木材産業課木材製品技術室課長補佐 服部 浩治氏

(3)16:10~17:30 パネルディスカッション「鋼構造オフィスビル床のCLT化について」

 <パネリスト>

稲田 達夫氏  福岡大学工学部教授

中島 史郎氏  宇都宮大学地域デザイン科学部教授

服部 浩治氏     林野庁木材産業課課長補佐

麻生 直木氏  (株)竹中工務店東京本店設計部構造部門部長

佐々木幸久氏  山佐木材(株)代表取締役

(4)18:00~20:00 懇親会 福岡大学内フォレスト(中央図書館1階)

稲田達夫会長
稲田達夫会長
約70名の方に参加いただきました
約70名の方に参加いただきました

 

以下、内容を抜粋してご紹介いたします。

■ 稲田会長挨拶

・研究会は丸3年経過。サステナブル建築物等先導事業に11件が採択されるなど、研究会が始まった頃に比べると、中・大規模木造建築に対する動きは非常に活発化している。来年は新しい建物の見学会等が活発に催され、それらが口火となって、今後大規模物件の木質化が急速に広まることを期待している。

・中島史郎先生について

自分が「木材工業」という雑誌に投稿した記事を、山佐木材の社長が読んだことが研究会設立のきっかけであるが、「木材工業」に寄稿しないかと仲立ちをしてくださったのが中島先生。 このことが無ければ研究会も無かっただろう。

 

■ 基調講演「中高層建築物の木造・木質化の可能性」(宇都宮大学地域デザイン科学部 中島史郎教授)

・6~10階建ての建物の3分の1を木造で建てると仮定すると、新たに55万m3の木材需要、11階以上の建物の3分の1の床を木質化すると仮定すると、さらに135万m3、合計すると200万m3の木材需要が生まれる計算になる。

→CLTを使用することにより更に木材使用量は増える可能性

 

【木造建築物の中高層化 国内事例】

つくばの建築研究所内に建設された枠組壁(2×4)工法6階建て試作棟

 

・1~2階は2時間耐火のため21mm厚の石膏ボードを3枚ずつ両面に被覆

・耐力を高めるため12mm厚のカラマツ合板を両面に張り、CN65釘を50mm間隔で千鳥打=壁倍率14倍相当

・内壁側に北米で開発されたMidPly Wallも使用

・通しボルト(タイダウン金物)を使用


【木造建築物の中高層化 海外事例】

カナダ ブリティッシュ・コロンビア大学の18階建て学生寮「Brock Commons」

 

・1階とエレベーターシャフト部分はRC造

・柱は集成材、床はCLT

・you tubeで施工の様子を見ることができるが、施工スピードはかなり早い

(音が入っていますのでご注意ください→)

・コロンビア州の法律Wood Fast Actにより木材を優先的に使うことを定めていることも背景にある


中島先生ご講演の様子
中島先生ご講演の様子

 

■ 林野庁講演「都市の木質化のための新たな技術の活用」(林野庁木材産業課 服部浩治課長補佐)

・2014年11月に国交省と林野庁が一緒になってCLT普及に向けたロードマップを発表

・今年は3/31付と4/1付でCLT関連の告示が施行され、材料基準強度、一般的な設計法、燃えしろ設計法が示された「CLT元年」と言える

・供給体制としては、現在、国内に7つのCLT工場

・鉄骨造の床や、耐震壁といった部分的利用にも期待

▲平成28年7月末現在のCLT工場分布図(平成28年9月に㈱中東もJAS取得)

服部課長補佐ご講演の様子
服部課長補佐ご講演の様子

 

■ パネルディスカッション「鋼構造オフィスビル床のCLT化」

 防耐火、建設コスト、CLTの可能性、日本の林業経営、超高層ビルへの木材活用、先導的プロジェクトへの支援策のあり方等の課題について議論がなされました。

パネルディスカッションの様子(左から稲田会長、佐々木幸久氏(山佐木材)、中島先生、服部課長補佐、麻生直木氏(竹中工務店))

 

 この研究会は、必ず懇親会もセットで開催されるという特徴がありますが、今回は福岡大学内のレストラン「フォレスト」にて、約40名の方に参加いただきました。大変盛り上がり、このあと二次会、三次会・・という方たちもいらっしゃったようです。(いつものこと)

乾杯は井上正文先生
乾杯は井上正文先生
塩屋晋一先生
塩屋晋一先生

 

当日の様子は、日刊木材新聞にも掲載されましたので、あわせてご紹介いたします。

ご参加、ご協力いただいた皆様、誠にありがとうございました。研究会への入会希望は事務局までお願いします!

事務局 佐々木(真)

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2016年10月22日(土)日刊木材新聞
20161022日刊木材新聞(超高層木研総会).pdf
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