ニュージーランド再訪記(5)最終回

 19年前にニュージーランドに行ったときは、既にニュージーランドの国立林業研究所(NZFRI)が民営化され、そしてすべての国有林と国営木材加工工場が、フレッチャーチャレンジに売却されていました。                

 今回訪問したSCIONは、民営化されたFRIの後継組織であったことを知りました。フレッチャーチャレンジ社の巨大な工場も今回見学したRED STAG、その他の会社に分割されたということでした。これらの経緯はよく分かりませんでしたが、激しい国際的競争原理の中で様々な最適解を求めて変遷していったのでしょう。

 20年以上前のあの大胆な民営化は、当時の政権による国柄を替えるほどの行政改革の一環と受け止めていました。もちろんそれは事実でしょう。


 

 ここからは私の想像です。かつてニュージーランドは林業を以て立国すると決意しました。その決意の下、関わった林業研究者たちの覚悟はすさまじいものでした。世界中からこれはと思われる樹木を探してきて、広大な試験林にその苗木を植えました。その遺跡が今回ツアー2日目に訪ねた「レッドウッドフォレスト」です。

 気候風土との適性、林業面での経済性、木材加工原材料としての適性など、あらゆる面から科学的合理的多角的に検証検討して、結果的に外来樹種であるラジアータパインを選定しました。

 そしてそのラジアータパインにも矢継ぎ早に品種改良を進め、様々な目的にかなう多数の品種が作られました。

 このラジアータパインを国木として決定し、国有林を初めとして全国的に造林しました。そして伐採できるまでに成長するや、このやや特異な材質を持つ木を、きちんと合理的に利用するノウハウを確立するために、ついには国営による巨大な木材加工会社まで設立しました。

 まさに近代日本立国を図った明治の功労者たちの如くにです。この時期のニュージーランドの行政官、研究者達が何と志が高く有能で、そして果断であったことか。

 

 私たちが訪問した約20年前というのは、恐らくその目的をほぼ完全に達していて、おそらくは達成感に満たされた中、激しい民営化の流れに潔く静かに身を委ねていたという状況にあったものと思い至っています。

 これらのプロジェクトが進行中あるいは完成期の頃に、この地に身を置かれたのが九州大学の若き学徒であった堤寿一先生だったのだと思います。先生は謹厳で武士的雰囲気のある方でしたが、まさに林業立国のために取り組んでいるニュージーランドの林学研究者たちの志に傾倒し、共感と深い敬意を覚えておられたのではないかと思うことです。それに比べると自国の林業、林学の世界は一体どうしたか、と歯がゆいものがあったに違いないのです。

 今回の旅行で今のバブルの様子を見ていて、直感と想像から思い切って言うのですが、この国はあの頃を分水嶺として、武士的な国から商人的な国に転換したのではないか、ふっと沸いてきた感想です。 

 

(記憶に残る昼食)

○スバイシーポーク+ご飯 

 アジア系の店   砂糖でベタ甘、辛い、汗があふれる   10.8$

 

○インドカレー         

 インド人が多いのだろう。様々な種類があって、うまかった。3度食べた。広大な野菜畑があったが、カレーの具材としてインド人達が作ったものだという。          10~13$

 

○昼なのにモーニング!

    煮た豆とソーセージ、炒り卵、ベーコン、バターを塗った食パン

    安くてうまかった                   9.9$

 

(記憶に残る夕食)

○マオリ観劇と食事           

           ディナー料金69$+ワイン割り勘10$

               他に団長外からワイン差し入れ

 料理は、鶏、豚、羊肉、魚、芋、野菜の蒸し焼き。カレー、シチュー、麺、サラダその他

 

 ディナー料金はホテルに付け、ということになった。翌朝ホテルでこの分精算しようとしたら、「既に支払い済み」と言う。??? 誰や彼や問い合わせて、何と荒川団長がぼそっと「俺が二人分払ったかも知んない」。えっ!!??。だって英語はすごく堪能な人なのに。

 マオリ劇に皆さん参加して、楽しそうだった。ちなみに有名な戦いの前の儀式、「カマテ、カマテ、カオーラ、カオーラ」とは、「生きる、生きる、死ぬる、死ぬる」という神聖なもの。コマーシャルなどで使うのは罰当たりなことのようである。


 

○オークランドにて最終晩餐  レストラン「モリタ」   日本人経営

                            120$

 ニューシーランド最後の夜。心残りの無いように、まさか割り勘負けをしないようにと言うわけでは無かろうが、みんなまあ良く呑むわ呑むわ、ついに料金一人頭120$に。

 

 参加者中ただ二人の女性、M女史と父娘で参加された宮崎県M木材の娘さんとは、二人ながら英語も堪能で、いつも笑顔でありながら気品があって、とかく放縦に流れがちな男どもの気を引き締めて、視察団の品位を汚さない上で大変功労があったことを記して、この報告記を閉じることにします。

(「ニュージーランド再訪記」完)

代表取締役 佐々木 幸久