肝付町の東岸は、太平洋の荒波に洗われて、山裾が削られ白い崖や巨石となって海辺まで迫り、荒々しい海岸線を形づくっています。特に岸良から佐多に掛けては、石鯛釣りのメッカとなっているようで、あの「釣りバカ日誌」にも登場しました。山佐木材の釣り部の面々もかなりの頻度で通っているようですが釣果についてはちらほらとしか聞き及びません。
そんな海岸ですが、「岸良(きしら)」と「辺塚(へつか)」、ふたつの湾の奧にだけ砂浜が横たわり、訪れるものを柔らかく迎えてくれるのです。どちらも花崗岩質の山から川によって運ばれた、石英を多く含んだ白っぽい砂におおわれています。今回は最南の辺塚海岸に行ってきました。
ここは国道448号を船間から県道74号に乗り換えた先に位置しているため、訪れる人はほとんどいないようです。日曜日のお昼過ぎに着いた砂浜には、親子連れらしい足跡が残っているだけでした。私まで入れてこの日3人目ということでしょうか。波打ちぎわを歩くと、踏みしめる音が聞こえてきそうなくらいきれいな砂です。
梅雨空の下、穏やかな波音に包まれながらあっちの端まで行ってみることにしました。歩いて往復しても20分とはかからない距離です。砂浜の一番北の端におもしろい模様を見つけました。
海亀が上陸した足跡です。この亀は上がってはみたものの、何かが気に入らず手前でUターンして海に戻ってしまったようです。
この美しい辺塚海岸に、これから夏に向けて何頭もの海亀が這い上がり、卵を産み、厳しい自然の中で生命を繋いでいくことを祈りたいと思います。
もうひとつ。
この地域の家々に限って、庭先に植えられていた「ヘッカデデ(辺塚だいだい)」と呼ばれる柑橘類があります。
「だいだい」の名は付いていますが、沖縄のシークヮサーや大分のかぼすの仲間だそうで、8月頃の青い実は酸っぱくて、さっぱりとした良い香りがします。
半割にして焼酎にいれると美味しいんです。今はジュースやドレッシングにも加工されて市販されています。青いうち収穫せずにそのまま冬を越す頃には実は黄色く熟して、果汁に甘みが乗ってきます。
もちろんこのまま飲んでも美味しいのですが、刻んだ皮をジュースで煮込み、マーマレードにすると絶品。香りとほどほどの苦みがパンやヨーグルトに良く合います。
大隅半島でもさらに奥まった手つかずの地域。この辺りは、陸路は急峻な細道しかなく、また海路は外洋の荒波が厳しく、昔は人の行き来が容易ではなかったようです。今は時間さえ作れば、その手つかずの魅力を存分に楽しむことができる。
ぜひ足を伸ばしてみられてはいかがでしょうか。
(次も海にいきたい M田)
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