M田のぶらり肝付町の旅・いつも飲んでる焼酎工場で秋と冬の境目を教わる

 

 前回、ここ大隅の秋は近頃なくなったようだ、というようなことを書いてしまった気がします。しかしながら、四季の国日本で秋が削除される現象が起こってはいけないはずで、11月も末を迎えた頃、それを証明できるものはないのか?コスモス畑とかバラ園とか何となく「秋っぽいなぁ」とは思わされるけれども、どうも印象的すぎて弱い。「大隅の秋はこれです。」と日本中に胸を張って言えるようなものはないのだろうか。と探していました。

 

 そんな思いを知ってか知らずか、大海酒造株式会社 営業の平後園さんから「今年の焼酎の仕込みもほぼ終わりました。工場見学できます。」とのお声かけをいただきました。

 

 大海酒造さんは鹿屋市にあり、地元で収穫されるさつま芋を原料に美味しい焼酎を醸しているメーカーです。ちなみに、M田とその仲間たちの血中には、ほぼ毎日、ここの焼酎が注ぎ込まれている状況なのであります。 

 

 

 9月はじめから、1日あたり約20トン、地元の契約農家さんが春から丹精込めて作った芋が持ち込まれるそうです。原料の芋はここから洗い場を経て、不良部分を切り取られ、醸造の工程へと流れていくのでしょう。3ヶ月にわたって休む間もなく受入に動いていたこのホッパーも、仕込みが終わった今、きれいに掃除され静かに佇んでいるようでした。

 

 

 二次もろみから蒸留の工程も見せてもらいました。工場の中は、もろみが発酵する音もおとなしく修まっていて、銀色の蒸留器から蒸気が白く上がっており、もろみや原酒のかおりが濃く淡く漂っていました。

 

 

 原酒は、それぞれの旨み成分を残すように濾過され貯蔵タンクに納め、寝かされたあと、杜氏の味覚の基準に達したところで、割り水をして出荷という段取りとのこと。新焼酎が11月に入ってからになるのもこれで納得。今年もいい焼酎が胃の腑に染みるわけですなぁ。

 

 なぜ、11月の末に、仕込み芋の搬入が終わるのか?

 その疑問に平後園さんがあっけカランと答えてくれました。

 「それは霜が降り始めるから~!」(芋は霜で凍ると使えなくなるそうです。)

 

 ボーッと生きていたことにはっきりと気づかされました。

 ここが秋と冬の境目なのです。9、10、11月は大隅の秋だった。これからが冬なのだと。

 

 これからますます焼酎が美味しくなる季節。蔵人のお話しによると、熱々のお湯で割るよりも、好みで先割りした冷や焼酎に燗をつける方が、香りが飛ぶことがなくまろやかで美味しいそうですよ。

 大海酒造の皆様、お忙しいところ、ありがとうございました。お陰さまで、実感できる秋が見つかりました。

(次ははずせない肴かな。 M田)