クルーズ船「ボレアル号」で行く南極の旅(4)

 

 自宅を出てから5日目。気象に恵まれて予定の30日朝到着予定が半日早く目的地に到着。

 午後から南極上陸となる。想像もできない大量のペンギン親子たち。運営会社はツアーや旅行でなく、「エクスペディション」であると位置づけている。辞書を引くと「探検(隊)」或いは「遠征(隊)」と出てくる。

 

1月29日(火) 前回紹介のゾディアックボートに乗ってアイチョウ島へ

 いよいよ今回最初の上陸地点である「アイチョウ島」に向かう。最高部が標高75m、島の全長1.5kmという小さな島だ。

 不安が全くないと言えば嘘になる。何でも最初の体験は心配が先立つ。無事に帰って来た時のために、熱いココアやクッキーなどがバーカウンターに準備してある。それを横目に見ながら、服装点検を受け、旅行社が準備してくれているパネルを持って、出発の記念写真を撮りあう。

 



 今回写真が多いが、何せ初めてでこちらも物珍しく、写真を撮りまくっている。いずれ落ち着いてくれば、減ってくるだろうから、お付き合い戴きたい。

 

 スタッフの「エクスペディションガイド」は、ペンギン、アザラシ、クジラなど海洋生物などの研究者、地質学者、或いはその卵であるという。非番の時はボートを貸与されて、それぞれ調査、観察あるいは撮影などを行っている。船の停泊中は、常時3、4艘のボートが本船周辺を遊弋している。これが楽しみで参画しているのかもしれない。

 

 海岸線でのおびただしいペンギン。これから海に入るもの、上がってきたものが交差する。腹が真っ白なのは海から上がってきたところで、汚れているのはこれから入るところである。営巣の場所はここ海岸縁でなく、島のてっぺんも含めて高いところにある。ここでは「ジェンツウペンギン」と、「ヒゲペンギン」を見ることが出来る。

 

 外套(パルカ)の赤が私たち、黄色がエクスペディションガイド。私たちの上陸に先立って、上陸地点の設営、歩行コースや進入禁止ラインの設定などを行っている。終了後はコーンやロープ、道具などを撤収する。今日は午後のみだが、明日からは午前、午後の二回、なかなか大変な仕事だと思う。

 島のあちこちに群居しているペンギンたち。左側の手前と奥に二つのグループ、中央右側に分散して多数いる。右側端の山頂の高いところにも多数のグループがかすかに見えている。あそこからあの小さな足で日に何回も上り下りしているのだ。手前がぐちょぐちょしているのはペンギンの糞。

 

「ジェンツウペンギン」の親子

 JRのカード「スイカ」に載っているのは、このジェンツウペンギンであるという。

 左側がヒナ、右側が親。ヒナと言ってももう親と変わりないほど大きくなっている。えさをやるのを嫌っているように見える場面を見る。大きなひなが親を追いかけているのだ。自活を促しているのだという。もうほんの少したつと今のこの産毛が生え替わって、自分で餌を取りに海に入れるようになる。

 ヒナがここまで大きくなっているのは、ここが最も北側で比較的暖かいためであり、これから南下するとヒナはもっと小さい、或いはまだ卵を抱いているという光景を見ることになる。


 

一方こちらは、「ヒゲペンギン」

ヒゲペンギンのグループ。あご(頬か)にすっと一本黒毛が通っている。

望遠にしたところ。ちょっとピンぼけになってしまったが。



 ペンギンの新鮮な糞は、餌の甲殻類である「ナンキョクオキアミ」の赤い色素と、鳥類の排せつ物の特徴である尿酸の白。これが雪や氷の上だと赤色のみが目立つのを後で知る。

                

 人間からペンギンに不用意に近づくこと、彼らの歩行を邪魔することは厳禁されている。カメラを構えている私に向かって2羽のヒナが近づいてきた。こちらは驚かせぬようじっとしているしかない。

 写真下の黒いものは私の雨靴の先である。 


 

一羽は人間相手に飽きて一羽が残り、人間(私)をじっと見ている。雨靴をつつくところまで接近。

 


 

 カモメ(この島に営巣しているというミナミオオフルマカモメか)に襲われるペンギン。群れからうっかり離れたヒナは襲われやすいという。

 

無事終えて母船を見る。ペンギンの糞などを船に持ち込まぬように、雨靴を入念に洗う。再び船上へ。入口の薬液槽で雨靴の消毒を入念に行う。

 


      

 出発から帰るまで、おおむね一時間半。部屋に帰ってお湯を沸かし、紅茶を入れこれにミニバーのウィスキーをたっぷり入れて飲む。

 夕食ではビールもワインも欲しいだけ飲める。それでも締めは部屋での焼酎のお湯割りである。ぐっすり眠って明日に備える。

 (佐々木 幸久)


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コメント: 2
  • #1

    股上です (金曜日, 10 4月 2020 13:15)

    南極Expedition日記を後読みしてます。

  • #2

    ヤマネコ (木曜日, 11 2月 2021 02:44)

    同じツアーに参加していました50代の夫婦です。懐かしく旅行記を拝読しております。
    本当に本当に非日常の素晴らしい体験でした。
    ところで、JR東日本のスイカはアデリーペンギンとのことです。
    これから続きを拝読いたします!