M田のぶらり旅・さつまの国「温泉郷の大衆浴場(2)  指宿温泉郷 区営鰻温泉」

第10回 指宿市 温泉郷の大衆浴場(2)  指宿温泉郷 「区営鰻温泉」

 指宿温泉郷で気になる大衆浴場を訪ねている。

 指宿市は、2006年に旧指宿市、山川町、開聞町の三市町が合併して新設された。前回の弥次ヶ湯温泉の所在は旧指宿市街である。そこから車で20分ほど山手に行くと池田湖と鰻池という大小二つのカルデラ湖が並んでいる。池田湖は九州一の大きさで、昔「ネッシー」ならぬ「イッシー」存在の噂が流れたこともある観光スポット。一方、鰻池は直径約1.3km周囲を緑がふちどるこぢんまりとした火口湖である。かつては、水質もよく鰻の養殖も行われていたという。

 

 

 鰻池の北東、鰻地区の奥まったあたりに「区営鰻温泉」が、これまたこぢんまりと建っている。ここは旧山川町に位置し、指宿市街からは10km近く距離を置いた場所だ。温泉郷にはいるのかどうか迷ってしまうほど、まったく静かな大衆浴場である。

 

 西郷隆盛も来ていたと伝えられており、湯屋の壁には「西郷どんゆかりの湯」と大きく書かれている。西郷隆盛は薩摩の温泉郷のあちこちに訪れているけれど、どうやら、うさぎ狩りができる山と、切り傷や筋肉痛に効能のある温泉がそろったところが特にお気に入りだったように思われる。

 この泉源は、指宿地区では唯一の単純硫黄泉で、そちらの効能もそろっている。ただ、脱衣場の壁に貼られている史料を読むと、明治7年正月、この温泉に逗留していた西郷のもとを、佐賀の乱で敗れた江藤新平が訪れ、初日談笑し翌日は何か懇願したが、ついには声を荒げて叱りつけるように帰って行ったという記録が残っており、しかもそのことを、西郷が宿主に対して念入りに口止めしたことが記されている。

 西南の役を前にした時期のエピソードとして、なんとも興味深い。

 

 

 さて、湯屋に入ると軽い硫黄の香りがする。タイル張りの浴室は清潔で、洗い場が3つほど並んでおり、楕円形の浴槽には透明度の高い澄んだお湯が満たされている。少し熱めだがゆったりと入ることができる肌あたりのよい温泉だ。

 お湯に浸かって、見上げると天井は木造で架けられている。硫黄を含んだ蒸気に対応するための配慮がなされているのだろう。

 

 

 ゆっくりと硫黄泉を堪能して外に出ると、湯上がりに湖面から吹く風が心地よい。

 

 

 そして、駐車場の横に、鰻温泉の特徴を体験できる工夫が設けてある。この地区では昔から、家々の庭先に「スメ」という、噴き上がる蒸気を使って野菜や魚などの食材を蒸して料理するかまどが作り付けられている。その「スメ」で作る蒸し卵を入浴者に提供しているのだ。生卵をいくつか購入して係のひとに託し、7分も待てば美味しい温泉卵ができあがる。塩も付けてくれるので、すぐさま熱々をほおばれる寸法である。(やけどに注意!)

 

 

 静かな湖畔に地元の人々が建てた清楚な湯屋で、その土地ならではの「温泉」を楽しめること請け合いである。

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区営鰻温泉  大人(中学生以上)200円、小学生100円、乳幼児50円

営業時間 8:00~20:00(受付終了19:30)

休み 毎月第1月曜日

卵 1個60円(2個以上で「スメ」サービス)

 

参考・引用

 公益社団法人 指宿市観光協会HP

 いぶすき観光ネット

 ウィキペディア(Wikipedia)

(M田)

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コメント: 1
  • #1

    ヨシハラ ケンゾウ (月曜日, 13 11月 2023 13:52)

    蒸し卵が美味しそうですね。
    箱根の卵と一緒で一個食べると何年か寿命が延びるのかも❗️