第13回 曽於市財部 県境の駅構内にある食堂「麺処桂庵」
曽於市は大隅半島の北に位置している。北端の曽於市財部町は宮崎県都城市と県境で接する。というより、薩摩人としては、都城盆地の西側にある財部のまちといったほうがぴんと来る。もともと都城市は島津氏発祥の地といわれており、藩政時代の島津三州、いわゆる薩摩、大隅、日向のうち日向の要衝であった。
さらに現在の都城市庁舎は都城島津邸に近接している。もちろん住民の話し言葉は薩摩語である。いまでも、都城市や小林市、えびの市を語るとき、その地と一つ国であるという意識が、私も含め薩摩人の心の底にはあるように思えてならない。
したがって、古来国境を挟んで対峙し、往来を厳しく制限していた熊本との県境にくらべると、行政の境を除けば、「けんざかい」の意味はあってないほどに薄いように感じている。
まして、曽於市本庁舎より都城市庁舎のほうがずっと近いのだから、経済圏としてもこちらに属しているといっても過言ではないだろう。
そして、JR日豊本線も通っていて、都城・宮崎方面行きと鹿児島・隼人方面行きのホームが対面で設置されている。
構内の時刻表をみると下り上りとも一日10本に届かないようだ。乗客数は2015年のデータで一日平均75人だから、いまではさらに減っているのではないだろうか。
駅舎は木造で、向かって右側に多目的ホール「曽於市やまびこ館」として食堂が併設されている。それが麺処桂庵なのです。
どのメニューも食べきれないくらいの量が出てくるという、噂のめし屋だ。なるほど、ここで昼食を終えて、駐車場でたばこなど燻らせながら、談笑している男たちはみな屈強な体格の持ち主ばかりだ。ぺろりとたいらげたに違いない。満足、満足と顔に出ている。
入り口は外にはなく、駅舎の中にいったん入るシステムだ。よくあるサッシ戸を引くと2~4人掛けのテーブル席が6つ、カウンター席が8箇ほど並んでいる。天井も吹き抜けでゆったりとした造りだ。
早速カウンターの中ほどに腰を据え、メニュー表に目を通しながら、隣の席にすわる40代ダンディの食べている料理を横目でチェック。山のように盛られた唐揚げのふもとをスプーンですくって口に運んでいる、大きな皿のよこのどんぶりは蕎麦かうどんだ。こいつを一人で食べきるとはいい男っぷりである。メニュー表下から2段目の唐揚げカレーセットに違いない。
私にこれを完食せよとは無理な注文というものだ。いいかげん分別のある年だし控えめにいこう。海老てんぷら定食ご飯少なめで注文してみた。
なんと大皿にはエビ天と野菜かき揚げが8つずつのっている。ごはんとそばのどんぶりは通常サイズだ。これで1500円は安い。大盤振る舞いに深く感謝しつつ、箸を進める。
天ぷらは揚げ具合もよく、衣もさくっとして良い歯触りだ。最初は塩で、それから天つゆ、おわりに蕎麦の出汁と味を変えながらチャレンジしてはみたが、残念ながらメインの天ぷらは半分食べるのがやっとだった。つくづく寄る年波を感じた次第です。でも大丈夫、プラパックが1箇10円で用意されている。
「今夜は、卵でとじて天丼だなぁ。」とためいきをつきながら、鹿児島行きのホームに出て風にあたるのだった。
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噂のもと:Aさん、Moさん
麺処桂庵:定休水曜日
参考・引用:JR九州HP・Wikipedia
(M田)
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takakuma-A (月曜日, 26 2月 2024 16:19)
けっこうなボリュームですね。
詳細なレポートをありがとうございます。