M田のぶらり旅・「おひとりさまOK　洋食の店　伊敷食堂みなと」

第23回　鹿児島市　「おひとりさまOK　洋食の店　『伊敷食堂　みなと』」

　鹿児島県内を徘徊しながら、昼ご飯をおいしくいただけて、しかも、おじさんひとりでもしみじみ落ち着いて食べられるお店を選んで入ることにしている。したがって蕎麦屋、定食屋にかたよりがちなのは否めない傾向だ。

　女子会ランチのお客さんで繁盛している洋食屋さんには、足が向かない。特にイタメシ（この単語はもはや死語か）系に関してはおじさんには敷居が高すぎて、ひとりで入ることはほとんどなかった。

　だが、「伊敷食堂　みなと」は偏見にまみれたM田の先入観を見事にくつがえしてしまったのである。おじさん＋おひとりさまOKの貴重なイタメシ屋さんなのだ。じつはここ、ネットで食堂を検索してヒットを連発しているA社長から「鹿児島市内なら是非！」と紹介されたお店で、これまで左隣のO中華チェーン店に行くためにその看板の前を何度も通っているはずなのに、まったくその存在に気付かなかった。

　店は、両隣の4・5階建てのビルに挟まれた地味なタイル張りの2階建屋、その1階に無駄のない構えで客を迎えてくれる。立ち止まってじっくり読むタイプの告知板は、空色の縦格子に掛けられており、どれも鉄製の唐草模様が洒落ている。

　中に入ると、きれいに拭き上げられたカウンターに10脚ほどの椅子が並んでおり、客は目の前で、注文した料理ができあがっていくのを見ることができるという、まことに楽しみな厨房の配置がされている。

　お昼のメニュー表に書かれた品数は5つ、けっして多くはない。が、客がどれにしようかと迷ってしまうように仕分けがよく考えられ、かつ、この前はこれにしたなと記憶をたどれる数のラインナップなのである。

　ふつう洋食屋に入ったおじさんならば、無難なところで欧風カレーかハンバーグを選ぶところだろうが、せっかく勇気を出してA社長お勧めの洋食屋にきたのだから、今回は思い切って魚介トマトのパスタ大盛りにしてみよう。

　メニュー表通りの魚介類が勢揃いして、トマトソースに浸ったパスタのうえに鎮座した一皿がでてきた。一見したところ、お上品に食べるのはむずかしい状況だが、落ち着いて見ると、まずは手前のイカあたりからアサリ、ムール貝を攻めたあとで大物ワタリガニにしゃぶりついてはいかがかと並べられているようだ。その意図にしたがって食べ進み、貝や蟹は手づかみでたいらげて、メニューではなんのことかよくわからなかったチーズリゾットで締めた。途中で手を洗う必要があったが、これはおじさん達にも似合うワイルドな美味しさだった。

　外に出て、ピンクの告知板に貼られた「みなとの夜カフェmenu」という目立たないポスターを読むと、そこにこのお店のスタンスがはっきりと書かれていた。

「本格洋食をお安く提供し、お酒も飲めるカフェスタイルの大衆食堂です。」

　単にオシャレな洋食屋ではなく、基本は「大衆食堂」という宣言に脱帽しました。ご馳走さまでした。

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伊敷食堂　みなと：鹿児島市下伊敷1丁目50-31　099-220-2515

水曜定休日：昼食11時～14時30分　

　　　　　　夜カフェ　18時～22時

駐車場：月極駐車場4台 

（M田）