GIR研究会では、今回「GIR接合による中大規模木造事例及び設計法」セミナーを開催いたします。まだまだ認知度の低いGIR接合を用いた事例や現状、新たな設計手法等を提供させていただきたいと考えています。
ぜひご参加ください。
・日程:2023年12月8日(金)
・時間:13:00~16:00(受付12:30
・場所:木材会館大ホール
(東京都江東区新木場1-18-8)
・参加費:無料
・定員:100名(会場)・40名(Web)
・内容
第1部
基調講演「GIRのこれまでとこれから」
第2部
◆GIR工法 及び 事例紹介
◆GIRを用いた4Fラーメン概要説明
◆4Fラーメン設計法説明
・申込み:https://forms.office.com/r/ZevTSXPgDe
(申し込み締め切り 2023年11月23日)
・問い合わせ:info@gir-ken.com
2022年8月17日(水)日刊木材新聞
山佐ホールディングス(鹿児島県肝属郡、佐々木政典社長)は、林業経営に参入するため山佐林業(同)を設立した。グループ企業内の安定的な原木確保と、放置林の増加など社会的な課題の解決を目的としている。同社が素材を生産し、山佐木材(同、有馬宏美社長)が製材や集成材ほかの加工、ヤマサハウス(鹿児島市、森勇清社長)がプレカットと住宅施工を行うというグループでの一気通貫型モデルの確立を目指す。
山佐林業は6月23日に設立された。資本金は500万円で、従業員は役員のみで5人。現在、山佐グループで20haの社有林を所有しているが、当面は100haの確保を目標に林業経営基盤の構築に取り組む。ヤマサハウスが販売する住宅の構造材を賄えるだけの素材生産を目指すが、具体的な開始時期は未定だ。現在は社員や顧客、協力会社関係者などを中心に山林相談を受け、査定見積もりや調査などを行う。
第2段階では社有林のさらなる拡充や経営受託も含めた素材生産など垂直統合モデルの構築、第3段階では多面的な森林経営管理や近隣県での森林所有も視野に森林経営の高度化を図る計画だ。社有林面積が増えた場合には、森林を管理する社員の雇用も検討している。
山佐木材は杉、桧の製材のほか、集成材事業では中大規模向けの構造設計から製造、加工、建て方までの一貫受注を中心に手掛ける。構造用集成材の生産量は月300~400m3。
ヤマサハウスは山佐ホールディングスの中核企業。年間200棟規模の住宅を販売する地場ビルダーで、構造材に鹿児島県産材を積極的に使ってきた。昨年のウッドショックでは資材調達にやや苦戦することもあったという。加えて、放置賃が増えており災害リスクにもつながることから、持続可能な林業経営と原木の安定供給のため林業会社立ち上げを考え、1~2年前から準備を進めてきた。山佐ホールディングスは今年から、「企業使命観」として「鹿児島を、鹿児島に関わる人たちにとって、もっと、ずっと住みたい場所にする」を掲げている。佐々木社長は「林業や経営を持続させることが一番の狙い。責任をもって一般消費者まで届けたい」と話す。
『木のある暮らしを、明日につなごう』を合言葉に、鹿児島初の木育キャラバン開催が決定しました!
東京おもちゃ美術館セレクトの楽しい木のおもちゃが県民交流センターに集合します!
鹿児島県木育インストラクターや鹿児島大学の皆さんのワークショップも予定しております。
当社は協賛会社として、また実行委員会のメンバーとしてお手伝いしております。
ご興味のある方はインスタフォローしてくださいね♪
・日程:2022年9月10日(土)、9月11日(日)
・場所:かごしま県民交流センター6階
(鹿児島市山下町14-50)
・参加費:無料(ワークショップは一部材料代の負担あり)
・申込み:https://teket.jp/3712/12989
※感染対策のため事前予約制(8月1日正午より申込開始)
※予定人数に達しましたので予約受付を終了しました。
多数のお申込みありがとうございました!
・定員:各回250名
①10時~ ②12時~ ③14時~ 入替制
・問い合わせ:kagoshima.mokuiku@gmail.com
いつも弊社ホームページをご訪問いただき、誠に有難うございます。
このたび、英語と繁体字版のサイトを開設いたしました。
・英語版:https://yamasa-woodist.com/
・繁体字版:https://yamasa-woodist.com/zh-fanti/index.html
多くのお客様にご満足頂けるホームページを目指し、内容を充実して参りますので、
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
Thanks a lot for visiting YAMASA MOKUZAI website.
We are pleased to inform you that we have opened our English and Traditional Chinese website.
We will keep updating and improving our website and hope to delight our customers greatly.
2021年10月27日(水)南日本新聞
旧高山町で創業し、県産材にこだわる地域の製材所として「木材の可能性をどこまで広げられるか」という問いに向き合い続けてきた。2年前まで社長を務め、経営の先頭に立ってきた佐々木幸久会長(75)は「挑戦こそ組織を腐らせない秘訣」と語る。
1991年、国内で初めてスギ構造用大断面集成材の日本農林規格(JAS)認定を取得。北米産材が主流だった集成材市場に名乗りを上げ、県産材の大型木造建築利用に道を開いた。
同年9月に完成した城山観光ホテル(現城山ホテル鹿児島)のレストラン・ホルトを皮切りに、これまでに手掛けた大型木造建築は1500件を超える。人口減社会の到来に伴って木材の住宅向け需要は縮小しており、今や大型建築の木質化は林業・木材業成長の要と期待される分野となった。
挑戦はさらに続く。木造の高層建築を可能にする欧州生まれの「直交集成板(CLT)」にも早くから着目。2012年に県外2社と日本CLT協会を発足させたほか、主に九州内の産学官と連携した研究会も立ち上げ、普及に努めてきた。19年に三菱地所(東京)などと手掛けた集合住宅「パークウッド高森」(仙台市、地上10階建て)は、床材にCLTを採用した国内初の高層建築だ。
現在は、鹿児島大学と共同開発した「SAMURAI集成材」の実用化に取り組む。鉄筋を埋め込んで強度を高めた新建材で、大手ゼネコンと連携した施工例もある。
挑戦を原動力に、県産材の用途拡大を支えてきた山佐木材。有馬宏美社長(63)は「これからも郷土が誇る企業を目指して努力を続けていく」と力を込めた。(三宅太郎)
木構造振興株式会社主催でCLT等木質建築部材技術開発・普及事業の各採択事業の成果報告会が実施されました。
・日時:令和3年3月12日(金)10:00~16:15(弊社の発表は14時頃)
弊社事業名「柱梁鉄骨造、床CLT構造の中大規模ビル型建物向けのCLTを用いた制震壁システムの開発」
・場所:全国町村議員会館 2階会議室(東京都千代田区一番町25番地)
【3月12日追加掲載】3月16日から3月31日まで、3月12日に行われた報告会の録画がストリーミング配信されます。すでにお申し込みされている方は発行済みのURL・ログインID・パスワードでご視聴できます。
新たにご視聴を希望される方は、下記リンク先の「お申し込みはこちら」よりお申し込みください。折り返し「参加案内メール」が送信されます。
2020年12月16日(水)日刊木材新聞
大断面構造用集成材やCLT、鋼材と木材をハイブリッド化した集成材「SAMURAI」など様々な木質構造部材や中大規模木造建築に取り組んできた佐々木幸久山佐木材会長に日本のCLTをめぐる状況について聞いた。佐々木会長は「非木造建築の一部を木材に置き換えていくことを考えるべきだ」といい、床専用のCLTやCLTを使った制震壁などの開発を進めている。
私が初めてCLTを知ったのは2000年ごろ、小松幸平京都大学教授(当時)にオーストリアで面白いものがある。興味があるなら案内するといわれて、10人ぐらいでオーストリアを訪問した。
そこには開発されて間もないCLTがあった。当時、木造3階建て事務所が建てられ始め、柱、梁は大断面集成材で頑丈だが、壁や床は適応する材料がなく、建物として安っぽく見えるきらいがあって不満だった。
CLTを見て、これは多層階木造建築のためには良い床材、壁材になると思った。帰ってCLTを試作しようと考え、探したところ合板工場の中古のプレス(7尺)が見つかり、購入し、幅はぎ、FJをしたラミナでCLTを作ってみた。
ただ、当時はCLTは規格、基準強度がなく構造材としては使えなかった。それでも100立方㍍ぐらいは作ったと思う。日本ではCLTを構造材として使うのは当面無理だと考え、この時は事業化を断念した。
せっかく設置したプレスは、当時需要が出始めた木橋の2次接着に重宝した。150、200㍉厚の構造用集成材の4丁積層などをして600~800㍉厚、1000✕2000㍉の集成材を2次接着で作った。
CLTについて国内の流れを変えたのは、銘建工業の中島浩一郎社長で、その後レングスの中西康夫理事長(当時)とともに3社で日本CLT協会(任意団体)を作った。行政の後押しもあり、CLTもJAS化され、設計法なども確立していった。協会は一般社団法人化し、会員は増え、CLT利・活用は国を挙げての潮流となったが、これらは中島さんの功績だ。
私が20年前にオーストリアで見た時はCLTの加工は大きな丸鋸を使い、人手で行っていた。十数年後に同じ工場を見た時は、NC加工機を数台使い、出荷を待つ大型トレーラーが数台待機しているという大規模、近代的な工場に進展していた。
ちょうど私が社長に就任した昭和の終わりから平成の初めにかけて建築基準法が改正され、何か新しいものができると考え、大型木造に取り組んだ。構造計算も自社でやらないと誰も出来ない時代だった。公共需要が多く、10月ごろから忙しくなり、翌年2月ぐらいまでが大変忙しく、後の時期は暇になるという繰り返しだった。
忙しいときは体育館だけで年に10件くらい受けた年もある。平成の市町村合併で、箱もの需要は減少し、ブームとしての木造建築はいったん終わった。
ただかつてのように売り込みに血道を上げずともごく普通に木造建築が採用され、構造計算は既に行われているという状態になった。マーケットが成熟してきたといえる。
欧州では壁、床、すべて大判のCLTで建築が出来ている。日本は、道路事情と地震国であることを前提に考える必要がある。柱と梁は構造用集成材、もしくは鉄骨で、床と壁をCLTにする選択肢も考えるべきだ。
福岡大学の稲田達夫教授(当時・現在山佐木材顧問)が、「木材工業」の論文で、鉄骨造のビルの床に木材を使うことの構造的なメリットや、木材需要拡大にかかわる環境面への貢献につながることを述べていた。共鳴を覚え稲田教授に面会し、さらに九州内の専門家らに声を掛け、「超高層ビルに木材を使用する研究会」を13年に設立した。主要構造部すべてを木造にすることを性急に求めず、非木造建築のなかで木材の部分利用の可能性を考えたものである。
山佐木材の事業形態を分かりやすく整理するために考えた概念がある。
第1分野=住宅部材、第2分野=非住宅木造建築、第3分野=非木造建築での部分的木材利用。
福岡大学を定年で退職した稲田教授は引き続き同研究会の会長であり、当社第3分野非木造建築での部分的利用の提唱者でもあり、顧問として迎えた。
稲田顧問の下で検討している課題がいくつかある。前述のJASで認証されたCLTは壁でも床でも何にでも使える優れ物だ。少し発想を変えて床だけに用途を絞ればコスト低減が図れ、非木造建築の部分利用に弾みをつけられるかもしれない。
壁でも制震壁としてCLTと鋼管を加工した金物、LSBを組み合わせたものを考えている。鹿児島大学塩屋研究室と実用化を目指している鉄筋集成材(SAMURAI)とともに新しい木材利用の方途を模索している。
2020年12月16日(水)日刊木材新聞
今年で6回目を迎えたウッドデザイン賞2020の最優秀賞(農林水産大臣賞)に、有明体操競技場(日建設計ほか)が選ばれた。優秀賞(林野庁長官賞)9点、奨励賞(審査員長賞)15点、特別賞(木のおもてなし賞)4点も選定された。表彰式は18日に木材会館で関係者のみで行い、その模様はオンラインで配信される。
ウッドデザイン賞は、木で暮らしと社会を豊かにするモノ・コトを表彰し、国内外に発信するための顕彰制度。今年は昨年より20点多い432点の応募があり、191点が入賞作品として選ばれた。さらにこのなかから合計29点が上位賞に選出され、11日に発表された。
最優秀賞を受賞した有明体操競技場は、日本各地から木材を調達し、カラ松の大屋根、杉の外装や観客席などで木材を約2300立方㍍使用。競技エリア天井の木架構の現しなど日本の伝統的な木造建築の美しさを醸しつつ、多くの観客を迎え入れる競技場としての機能性を併せ持つ、世界に発信すべき建築と評価された。
優秀賞には、CLT PARK HARUMI(三菱地所ほか)、Continuum(九銘協ほか)、木硯(YOAKEほか)、奈良県コンベンションセンター(奈良県ほか)、八ヶ岳カラマツチェンバロ・プロジェクト(八ヶ岳高原ロッジほか)、筑波大学睡眠疫学プロジェクト(森林総合研究所ほか)、FLATS WOODS 木場(竹中工務店ほか)、西脇市立西脇小学校保存・改修に伴う基本計画および工事(西脇市ほか)、1964東京オリンピックゆかりの木プロジェクト(日本オリンピック委員会ほか)が選ばれた。
奨励賞には、椿茶屋(石飛亮建築設計事務所ほか)、東馬込の家(松井郁夫建築設計事務所ほか)、蔵の家(川上聡建築設計事務所ほか)、北海道産エゾマツ材サイレントウクレレ(クワイアンほか)、QRwood(ハッチ・クリエイト・ワークスほか)、Sou(atelierthuほか)、富士屋ホテルRE-BORN(乃村工藝社ほか)、六甲の糸&六甲山の香り(六甲山サイレンスリゾートほか)、木製ブロック ズレンガ(浅尾)、HITASUGIしめ縄(髙村木材)、mother's+(北海道種鶏農場ほか)、みなと森と水ネットワーク会議(みなと森と水ネットワーク会議)、クラフトジンの商品化を通じた里山との関係構築(中国醸造ほか)、古民家・古木サーキュラー・エコノミー(山翠舎)、2✕4工法床構面開発事業(ウイング)が選ばれた。
特別賞には、CONTEXTED(REVearthほか)、THE HIRAMATSU京都(NTT都市開発ほか)、HEXa(GRIND ARCHITECTSほか)、ひねり髪すき(アートフォルム)が選ばれた。
審査委員長の赤池学氏は「ウッドデザイン賞」も6回目を迎え、良い意味での転換期に入ったと思う。建築・空間分野では中・高層建築の木造、木質化の果敢なチャレンジが目を引いた。一般住宅も単に木を使っただけではなく、それを生かした心地良さや適材適所の木の使い方など実験的・提案的な作品が受賞した。木製品分野では、単に素材に木を使っただけの作品は厳しい評価となった。これは、もっと地域のデザイナーやデザイン系の大学と連携して質を高めてほしいという審査員からのエールでもある。斬新で洗練された、次なるウッドデザイン賞の登場を期待している」と述べた。
2020年12月8日(火)日刊木材新聞
野村不動産(東京都、宮嶋誠一社長)は、東京・神田駿河台に同社高級分譲マンション「プラウド神田駿河台」を木質ハイブリッド構造14階建てで建設中だ。同社は、国産木材を積極活用する方針を打ち出すなど、木材利用の促進を強化している。
同社では、大阪府伊丹市の「プラウドシティ伊丹」の近くに木造のカフェがあり、その居心地の良さを生かそうと共用部の木造化に取り組んだ。「プラウドシティ吉祥寺」では、担当者が木材活用でやりたいという話が出た。神田駿河台は都市部でも南側傾斜地に木が多く、都心部で「木質化をキーワードに取り組もう」の機運が高まり、竹中工務店に相談したという。
こうした流れで木造化に取り組み、神田駿河台ではプランニング段階で14階建ての上層部4層に1時間耐火が必要になったために、燃エンウッドの1時間耐火部材を使った。それより下の階は2時間耐火を求められることからRC造とし、耐震壁の一部にカラ松LVL耐震壁(キーテック)にした。
上層部は住戸内の間仕切り壁でCLT(山佐木材)を耐震壁として両面現しで使用する。
LVL、CLTの耐震壁は水平力のみを受けるように設計することで耐火規制を受けずに木材を現しで使用できる。
LVL耐震壁はRCの400㍉厚の壁の一部に用いられる。厚さ170㍉で片面を現しに使用。当初は平面を現しで使おうと考えたが、ショールームでの来場者の反応から「節の出方、色の違い、接着層の色などを気にすることが分かり、木口面をスライスして表面に貼ることになった」(同社)という。
「当社のプラウドシリーズという高級分譲マンションを購入するから、節や経年変化などには厳しい見方をする」(同社企画担当者)。そのため床材には色むらを敬遠する傾向になり、「国産広葉樹では難しい」(同)。
分譲マンションの場合は、完成前にモデルルームを見て購入を決めるので、実際に入居してイメージが違うとクレームにつながる。
同社商品開発担当者は「外装材に天然木を使いたいが、メンテナンスの課題がある」と話す。大規模マンションの場合は、維持管理計画のなかに木材外装を定期的に盛り込むことも可能だが、「小規模マンションの場合は、30年間ノーメンテナンスを求める」。従来は木調サイディングなどを使用してきたが、熱処理や薬品処理などをした木材で使えるものがないかを調査している。
分譲マンションならではの要求性能があるなかで、国産木材の使用を40~50代の購入者に訴求するという。同社は「木材利用は世界的な潮流で、日本は遅れている面がある。量産効果やユニット化などによる工期短縮などのメリットも追及していきたい」と話している。
2020年11月13日(金)日刊木材新聞
野村不動産(東京都、宮嶋誠一社長)は10月29日、同社の新築分譲マンション「プラウド」が掲げる5つの顧客への価値提供のうち、「機能性と心地よさ」「環境と未来への対応」を実現するため、今後建設する集合住宅で国産木材を積極活用していく方針を決めた。
同社は、マンションの共用棟として、「プラウドシティ伊丹」(2018年竣工)、「プラウドシティ吉祥寺」(20年竣工)で木造を採用してきた。今後、独立した共用棟を設置する場合、原則、木造にし、積極的に国産木材を活用する。
現在発売中の「飛鳥山レジデンス」でも国産木材を使用し、計画中のプラウド練馬中村橋マークス」(仮称)や、若潮ハイツ建て替え計画でも木造共用棟の建設を予定している。
また、独立した共用棟を設置できない中小規模の集合住宅でも、共用部の壁や床といった内装、建具、家具などで国産木材を使用していく。
現在建設中の「プラウド神田駿河台」(14階建て、36戸)は、木質構造部材を使用した高層分譲マンションで、構造部材として鹿児島県産杉、山梨県産アカ松を使用。中層階(2~11階)では、LVLハイブリッド耐震壁を、高層階(12~14階)では、CLT耐震壁、燃エンウッドを使用する。
いずれも耐火被覆なしで木材を現しで使用し、木のぬくもりとともに、この建物で暮らすこと自体が環境への貢献となるようにデザインした。
2020年10月21日(水)日刊木材新聞
宮崎市内に地上10階建、地下1階建ての宮崎県防災拠点庁舎が建てられ、8月から運用が始まっている。構造は鉄骨造、一部鉄筋コンクリート造で、4~9階には県産杉CLT耐力壁を採用した。延べ床面積は約2万5000平方㍍(5号館含む)。
庁舎は災害時に県民の生命などを守るため十分な耐震性能を持ち、災害応急対策を円滑に実施でき防災拠点としての司令塔機能を果たせるよう設計された。南海トラフ地震などに備える免震構造の採用などにより、災害応急対策業務や通常業務を継続して行うことができる。屋上には県防災救急ヘリや自衛隊の救難ヘリが発着できるヘリポートを設置した。
また人や環境に優しい庁舎として、利便性やユニバーサルデザイン、環境負荷軽減、経済性、景観など様々な面で配慮している。
CLT耐震壁は7層7プライで、高さ2.6✕幅1.8㍍✕厚さ21㌢。耐力壁以外に1階エントランスホールも、県産材を活用した木質化を図っている。建設工事は2018年1月に始まった。
2020年8月7日(金)日本経済新聞(九州・沖縄)
木質材料を使った大型建造物を目にする機会が増えている。市場拡大をけん引するのが、集成材やCLT(直交集成板)だ。いずれも板材を接着剤で積層したもので、安定した強度を持つ。山佐木材(鹿児島県肝付町)は1991年にスギの構造用集成材で全国初の日本農林規格(JAS)を取得するなど、先駆け的な存在だ。
大隅半島の中ほど、肝属川沿いの田園地帯の一角に広がるのが山佐木材の主力工場、下住工場(同町)だ。東京ドーム2個分に相当する8万6000平方㍍の敷地には10棟の工場が建ち、製材から設計図面に合わせた最終加工まで、ほぼ全ての工程を担っている。
「国産材の用途を拡大したいというのがきっかけ」。木材の供給基地である鹿児島県で集成材加工を始めた理由を、新永智士総務経理部長はこう話す。それまでは一定以上に太く成長した木しか住宅用として利用できなかった。だが、集成材は「小さいパーツを接着して加工するため、用途が広がらなかった間伐材なども有効理由出来る」。
集成材は丸太を「ラミナ」と呼ばれる板状品に製材した後、乾燥工程で含水率を調整。最後に個々のラミナの強度などを勘案しながら接着剤で張り合わせ、圧締して完成する。一つ一つは自然の材料のため強度が異なるが、強弱をうまく組み合わせて加工することで強度性能を保証できる。
ラミナの繊維を平行にして積層する集成材に続き、10年ほど前からは繊維方向を直交させて積層するCLTにも参入。集成材の内部に鉄筋を渡し、屋根の梁(はり)として使う際のたわみを抑えた「SAMURAI集成材」も鹿児島大学の塩屋晋一教授と共同開発。教育施設や商業施設など中大型建造物への用途拡大にも取り組んでいる。
下住工場では工場棟の一つでCLTを専門に加工する。棟内には巨大な5軸CNC(数値制御)加工機が置かれ、設計図面に合わせて最大で厚さ300㍉㍍、幅3000㍉㍍、長さ1万2000㍉㍍の大型部材を加工できるという。
こうした大判パネルが加工できるため、鉄筋コンクリート製だったビルの床の基礎部分をCLTに置き換え、木目を生かしてそのまま床面として使用するケースも徐々に拡大している。「ライバルは鉄筋コンクリートという感覚が高まっている」(新永部長)と手応えを感じている。
強度の面で一部にベイマツなど外材を使うケースもあるが、原料の9割は国産材だ。大半が鹿児島県産というが、自治体からの受注案件ではその地域の木材を取り寄せて使うケースもあるという。国内の森林資源を有効活用し、循環型のシステムを構築するためにも木造建築の市場拡大の重要性が増している。
(鹿児島支局長 久保田泰司)
2020年7月30日(木)日刊木材新聞
竹中工務店(東京都、佐々木正人社長)は、中高層木造ハイブリッド建築への取り組みを進めている。10階建てを超えるハイブリッド木造は仙台と東京都内で実績があり、今後はハイブリッド木造部分が14層を超える建築へ取り組んでいくため3時間耐火大臣認定取得に向けた技術開発を進めている。松崎裕之竹中工務店・木質建築推進本部長は「燃エンウッドの技術をベースに製作方法の合理化、標準化などに取り組み、コスト削減を図りながら3時間耐火に取り組みたい」と開発の方向性を示している。
同社では2019年3月に竣工した三菱地所の10階建て賃貸マンション「PARK WOOD 高森」(S造との混構造)、20年2月竣工の自社事業「フラッツウッズ木場」12階建て(RC造との混構造、免震)など適材適所に木材を使ったハイブリッド構造による中高層木造を実現してきた。
昨年6月には野村不動産「プラウド神田駿河台」14階建てマンション(RC造との混構造)、今年3月にはヒューリック「銀座8丁目開発計画」12階建て(S造との混構造)が着工している。
2025年に実現を目指いしている「アルタ・リグナ・タワー」は高層木造ハイブリッド建築のコンセプトモデル。このモデルビルは、2時間耐火の燃エンウッドを活用し、上層14層を木造、下層6層をS造で計画した20階建てとなっている。現在はこのすべての階を木造とすべく3時間耐火認定の取得へ動き出した。松崎本部長は「実際の案件でも3時間耐火を検討するケースが出ている。アフターコロナの世界では健康建築や抗菌など木材の機能が注目されてくるだろう。また、木を使うのならば、現しで使いたいと考えている」と話している。
そして単に木材を使うだけでなく、「森林グランドサイクル」という「森林資源と地域経済の持続可能な好循環」の実現を目指している。
ある建築で使う木材を国産材や県産材という広い産地ではなく、山長商店(和歌山県)や田島山業(大分県)、三井物産や東京の林業家の山崎さんなど、様々な森の山主と産地を特定し、建築主や同社社員が訪れて伐採作業を見るなど、直接話をして顔の見える関係をつくっていく。
中央大学多摩キャンパス学部共通棟の工事では学生とともに林家を訪れた。
都会でのキノマチづくりを通じて山の産業を創出し、その資金で持続的な森林づくりを進める。生産された木材からは燃エンウッドをはじめとした様々な用途開発をしていく。
最新の技術として、大スパンを可能にする鉄筋挿入「燃エンウッドSAMURAI」や屋外用に開発した「燃エンウッド柱」、LVLを丸柱に巻いた「木巻ペンカラム柱」、「CLTエストンブロック壁」などを開発し、フラッツウッズ木場に採用した。同プロジェクトは多様な開発技術のショールームとしても活用している。
2020年7月29日(水)日刊木材新聞
三菱地所(東京都、吉田淳一社長)は、ゼネコンなど7社で総合木材事業を行うMECインダストリ―(鹿児島県霧島市、森下喜隆社長)を設立した。同社を生産、流通、販売、一部施工にもかかわる総合事業体とし、従来とは異なる、山側に欲しい木材を伝えるプル型の調達スタイルで、「配筋付き型枠」やCLTなどを使用したプレファブ型のユニット住宅などを開発、新たな市場を創造していく。1シフト年間5万立方㍍の素材を使用し、10年後に100億円の売上高を目指していく方針だ。
三菱地所では、4年前に社内の新事業提案でCLTを活用した大規模木造建築事業が採択され、CLTユニットを結成。みやこ下地島空港ターミナル、パークウッド高森(S造との混構造による10階建て賃貸マンション)、大通西1丁目プロジェクト(仮称、ホテル、11階建てハイブリッド木造)など複数のCLTを活用したプロジェクトに取り組んできた。
伊藤康敬MECインダストリ―副社長は、「プロジェクトに取り組むなかで自分たちが生産プロセスまで入り込まないとコストダウンは難しい」とし、鹿児島県湧水町の県立栗野工業高校跡地に工場棟、製材棟などを建設する。配筋付き型枠などの新建材とCLTなどを使ったユニット住宅などの生産を計画するほか、2×4製材やCLTなどの部材の供給も行う見通し。
工場は8月7日に着工し、2021年4月に工場部分を稼働して、配筋付き型枠、ユニット型住宅などの販売も始める。22年3月に工場を竣工、同4月からの本格稼働を計画している。現在の従業員は7人、工場稼働時には100人を想定している。
工場は1シフト年間5万立方㍍の素材消費量で、5年で事業を軌道に乗せ、10年後には売上100億円を目指していく。
森下社長は「鹿児島県は南九州から木材資源を調達しやすい。これまで付き合いのある山佐木材に研修などを担ってもらえる」としたうえで、将来は他地域で2つ目、3つ目の生産拠点の整備と山林、素材生産という、さらなる川上への取り組みも視野にあることを示した。
出資比率は三菱地所が7割、残り6社で3割。出資者のコメントは次のとおり。
吉田三菱地所社長「鹿児島は近代日本を切り開いてきた歴史があり、革新的な取り組みでSDGsを目指したい」。佐々木正人竹中工務店社長「都市に木造を建て森林グランドサイクルを確立し、中高層の木質化を進めたい」。大隅健一大豊建設社長「当社は土木が得意。各地で災害が起きるなかで治山治水は大事な政策。地域活性化、地方創生に寄与したい」。中嶋孝次松尾建設常務「5年前に老朽化した本店を木造で建て直そうとし、2年前に6階建てハイブリッド木造の社屋が完成した。床にはCLTを使った」。永山在紀南国殖産社長「当社は鹿児島の地域総合商社。林業機械、木質バイオマス発電にも取り組んでいる。高品質、ローコストの木製建材の販売に寄与したい」。長谷部義雄ケンテック社長「鋼製トラスに代わる新建材は、温かみがあり、高級感がある」。有馬宏美山佐木材社長「平成に入り大断面集成材、杉と米松のハイブリッド集成材、最近はCLTに力を注ぎ、都市部のニーズへの対応を考えている」。
2020年7月28日(火)南日本新聞
不動産大手の三菱地所(東京)は27日、栗野工業高校跡地(湧水町)に整備する木材加工施設を拠点とした総合木材会社「MEC Industry」の設立を発表した。建設業など全国の7社が出資して設立され、鹿児島県からは南国殖産(鹿児島市)、山佐木材(肝付町)が名を連ねる。
三菱地所によると、鉄筋コンクリート造りと鉄骨造りに木を取り入れた新建材を供給する「新建材事業」と、大型木製パネル「CLT」などを使用し、工場で作った部材を現場で組み立てる建築工法で、一戸建て住宅を提供するのが主な事業。敷地内には製造棟や製材棟が整備される。工場の操業は2022年4月の予定で、雇用は100人程度を見込む。
27日、都内で設立会見があった。南国殖産の永山在紀社長は「新設の工場は高校の跡地。雇用創出と地域活性化に大変有意義」と話し、山佐木材の有馬宏美社長は「人材育成、木材加工、技術的な面で協力をしていきたい」と述べた。
2020年4月16日(土)日刊木材新聞
山佐木材(鹿児島県肝属郡、有馬宏美社長)の2019年度の構造用集成材とCLTを合わせた契約物件数は50件だった。そのうち同集成材を主体とした物件数が31件で、残りがCLTを主体としたもの。
同集成材の月産量は300立方㍍で、前年度並み。ただ物件用数量は1割程度減少しており、製品販売が素の減少分を補った。製品販売では長大物や特殊寸法またプレカット工場等からの受注がメーンだ。
構造用集成材の供給、完成工事の実績としては、龍南中学校屋内運動場(鹿児島県)や安心院地域複合支所(大分県)など。
集成材事業は中・大規模物件向けの構造設計から製造、加工、建て方まで一貫受注がメーン。20年度は昨年度より問い合わせが多く、計画案件を見ると物件数も多くなる見込み。ただ新型コロナウィルス感染症の影響が今後どの程度出てくるかが懸念され、既に営業活動でも支障が発生しつつある。
同社が開発・普及支援する杉構造用集成材の材長方向に鉄筋を挿入し性能を高めた集成材「SAMURAI」の基礎的技術の蓄積は終了している。今春、指定建設材料の品質に関する性能評価(法37条性能評価)の予備審査に入る。ただ「乗り越えなければならない課題解決には今しばらく時間を要する」(有馬社長)。
CLTの直近1年間の供給量は1500立方㍍で、鹿屋女子高校多目的ホール棟(鹿児島県)などに供給した。構造用集成材、CLTともに今年度、生産設備の増強などの計画はない。
2020年3月3日(火)日刊木材新聞
野村不動産(東京都、宮嶋誠一社長)は、竹中工務店(同、佐々木正人社長)の設計・施工で木質系構造部材を使用した日本初の14階建て高層分譲マンション「プラウド神田駿河台」(RC造+木造ハイブリッド構造、36戸)を建設していることを発表した。
同マンションは、東京都千代田区神田駿河台の580.71平方㍍の敷地に、建築面積211.36平方㍍、延べ床面積2529.45平方㍍の規模で、2019年10月に着工した。
基本構造はRC造で、中層階(2~11階)はLVLとRC造耐震壁を組み合わせた「LVLハイブリッド耐震壁」、高層階(12~14階)はCLT耐震壁と燃エンウッドを採用した。木質構造と他構造のハイブリッド建築物として14階建ては初になる。
いずれの部材も耐火被覆なしで木材を現しで使用し、積極的に木構造を住戸のインテリアとして使用する。併せて共用部のエントランスの壁、床、住戸内の天井の一部にムクの杉材を使用する。
LVL耐震壁は高耐震性と高生産性を両立。パネルが軽量であることに加え、独自の接合機構で、接合金物を使わずに施工が可能。
CLT耐震壁も地震時の水平力を負担するもので、耐火被覆が必要なく、木材現しで使用できる。
燃エンウッドは化粧を兼ねて使用する。
使用する木材は、鹿児島県産の杉、山梨県産のアカ松など、今回のプロジェクトを契機に、分譲マンションでの国産材利用と促進し、国産材の需要創出を図ることで森林資源の循環と持続可能な社会づくりに貢献する。
なお、建物の竣工は、21年3月下旬の予定。
2020年2月6日(木)日刊木材新聞
竹中工務店(東京都、佐々木正人社長)は3日、山佐木材(鹿児島県肝属郡、有馬宏美社長)、鹿児島大学と共同で「燃エンウッドSAMURAI」を開発したことを発表した。竹中工務店の木造耐火集成材技術と山佐木材と鹿児島大学の共同開発による鉄筋内蔵型集成材SAMURAIを組み合わせた耐火集成材で、大スパンを飛ばせる技術として開発。国土交通大臣の2時間耐火認定を取得し、都市の木造建築で大スパンを可能にする要素技術として活用していく。
燃エンウッドSAMURAIは、梁として使用する構造用集成材の外装部の上下に鉄筋を埋め込み、強度を高める。これにより、伐期を迎えて需要拡大の必要に迫られている杉材を梁として活用しやすくする。中大規模木造の梁では高強度が求められるためカラ松構造用集成材を使用することが多かったが、燃エンウッドSAMURAIでは「2~4倍に剛性を高めることができる。杉を使うと梁せいが大きくなりすぎたが、10メートルスパンで梁せい700㍉を、この技術だと500㍉くらいに圧縮できる」(竹中工務店)
燃エンウッドでは、荷重支持部にモルタルバーなどの耐火被覆層を設け、その外側に燃えしろ層として木材を使用する。これにより、木材の意匠を持った木質耐火部材として使用実績を伸ばしている。
燃エンウッドは、2013年の大阪木材仲買会館、15年のATグループ本社、18年の有明西学園、19年のパークウッド高森等で採用された。そして、2月に完成したフラッツウッズ木場(RC造+一部木造12階建て)では燃エンウッドSAMURAIを12階の屋根の梁に採用している。
同社は、都市と地方生産者をつなぎ、資源と経済の循環を目指す「森林グランドサイクル」の実現を目指して、木造技術の開発を進めている。
2020年1月30日(木)南日本新聞
東京五輪・パラリンピック選手村の交流施設「ビレッジプラザ」(東京都中央区)が29日、報道陣に公開された。かごしま材(県産材)をはじめ全国63自治体から集められた木材が使用されており、4月に完成予定。
ビレッジプラザは木造平屋。計5棟あり、延べ床面積は約5300平方㍍。各国選手の入村式が開かれる施設で、雑貨店や銀行も入る。選手のほか家族や関係者が利用する。
県が提供したかごしま材は、中高層施設も建設可能な大型木製パネル「直交集成板(CLT)」。厚さ9センチの板100平方㍍分が、正面エントランスの一部と、カフェやインターネットラウンジが入る棟(1千平方㍍)の床に活用された。
同日は各自治体関係者が参加した内覧会もあった。県環境林務部の村山浩美次長は「カフェなどでリラックスする世界中の選手に、かごしま材の良さを知ってもらえれば」と期待した。ビレッジプラザは大会後に解体され、木材は返却された自治体が公共施設に再利用する。
・講習会:2020年1月30日(木)13:30~16:20
・場所:天神チクモクビル 5階 大会議室
(福岡市中央区天神3丁目10-27)
http://hall.chikumoku.co.jp/access
・定員:各50名
・参加費:無料
・申込み:添付PDFをFAXしてください
・問い合わせ:TEL 099-224-4543(鹿児島県住宅センター)
2020年1月17日(金)南日本新聞
山佐木材(肝付町)や三菱地所(東京)の4社が手掛けた構造を一部木質化した10階建て集合住宅の建築技術が、ウッドデザイン賞2019の最優秀賞に輝いた。NPO法人こどものけんちくがっこう(鹿児島市)による教育活動と、地元の杉をふんだんに使った屋久島町庁舎も優秀賞となった。
集合住宅は三菱地所が仙台市に建設し、昨年完成した。山佐木材の新しい大型木製パネル「直交集成板(CLT)」が構造の一部や床に使われ、今後期待されている非住宅分野での木質化の推進につながる技術として評価された。
こどものけんちくがっこうは、木や森について学ぶ授業を通年で開いている。ツリーハウス作製のような体験活動もあり、地域資源を街づくりに生かす重要性を伝えている点が認められた。
屋久島町庁舎は木造平屋一部2階建て(延べ床面積約3630平方㍍)で、構造材も含めてほとんどを地元産の杉で賄った。建物全体が木材利用推進の発信につながっているとして選出された。
木の良さや価値を伝える建物・活動を表彰するウッドデザイン賞は、国土緑化推進機構などが主催。413点の応募の中から最優秀賞1点、優秀賞9点が選ばれ、昨年12月に東京で表彰式があった。
こどものけんちくがっこう理事長で、鹿児島大学の鷹野敦准教授(40)は「鹿児島から3件が入賞し、うれしい。教育活動を通し、地域資源の適切な利用のほか、森林を含む住環境への関心や親近感の向上につなげたい」と話した。
2020年1月15日(水)日刊木材新聞
1985年に始まった日米間でのMOSS協議(日米林産物協議)で日本国内の木造建築が緩和される方向性が示されると、旧三井木材工業などが先駆者として大型木造建築に取り組み、当初は構造材として米松構造用集成材が主に使用された。91年には山佐木材(鹿児島県)が杉構造用集成材のJAS認定を取得し、国産材利用への道筋を開く。
その後、現在まで非住宅木造建築の構造材の中心は構造用集成材が担っており、強度の出る欧州材のRウッドや国産材ではカラ松などの活用が進んだ。杉は重量の軽さなどが評価され、異樹種構造用集成材の実用化も進んだ。近年では不燃や鉄筋との複合により性能を高めた構造用集成材や合板では厚さ50ミリ以上の超厚合板の開発が進められている。また、構造用LVLがコストメリットや意匠性の高さから採用を増やしている。
CLT(直交集成板)は従来にない早さで2013年12月にJASが制定され、現在では銘建工業(岡山県)、山佐木材(鹿児島県)、西北プライウッド(生産施設=宮城県)、鳥取CLT(鳥取県)、中東(石川県)、サイプレス・スナダヤ(愛媛県)、協同組合オホーツクウッドピア(北海道)など、製造拠点が各地に広がってきた。供給量は年間1万5000~2万立法㍍で推移している。
CLT工法は高層木造建築の可能性を切り開くとともに、木造軸組+CLT壁・床やRC高層ビルなどでのCLT床採用などにも可能性があり、木材使用量を広げることが期待されている。また、賃貸住宅大手の大東建託(東京都)も積極的な活用を検討するなど、ホテルやコンビニなどの店舗、アパートなどで一定の需要量が確保されれば、コスト低減や安定供給につながるだろう。
一方、非住宅木造物件にも地域材を積極的に活用し、地域の建築、木材関係者等への経済波及を重視する動きが広がるなかで、JASムク製材品の供給に関心が高まっている。
現在につながるJAS制度は1967年に制定されて約50年になるが、全体とすれば製材工場数全体の減少とも連関しながらJAS製品供給量は減少傾向をたどってきた。だが、この15年ほどは人工乾燥製材JASの格付け実績数が大幅に増えている。2003年度の人工乾燥材の同実績数(全数検査区分を除く)は36万6300立方㍍だったが、17年度は74万200立方㍍、このうち機械等級区分は29万8600立方㍍が63万6500立方㍍と倍増した。
10年の公共建築物等木材利用促進法施行を受け、11年に国土交通省が策定した木造公共施設の設計指針となる「木造計画・設計基準」では、製材の規格は原則としてJASに適合するものまたは国土交通大臣の指定を受けたものと明記された。また、設計関係者は構造計算が必要な中大型木造物件では品質が明確で、等級と樹種に応じて許容応力度計算時に利用できる基準強度が設定されている機械等級区分や木質等級区分の構造用製材を使うべきと指摘する。林野庁は非住宅物件のJAS製材調達費支援事業やJAS製材工場に対する設備導入補助事業を進めてきた。これらを背景に、全国の中堅以上の製材メーカーがJAS製品の供給に再び力を入れ始めている。特に機械等級区分のJAS認定数は増える見込みで、人工乾燥製材で年間100万立方㍍の供給量が視野に入ってくる。
今年で5回目を迎えたウッドデザイン賞2019の表彰式が、5日にエコプロダクツ展の会場で開かれた。最優秀賞(農林水産大臣賞)に選ばれた「日本初となる中高層木造ハイブリッド建築を実現する技術の実証」(三菱地所ほか)を手掛けた三菱地所、竹中工務店、山佐木材、田島山業をはじめ、優秀賞(林野庁長官賞)9点の関係者へ太田豊彦林野庁次長から表彰状が贈られた。
表彰を受けた三菱地所は「当社は木造に関して高い知見があるわけではないが、ほかの3社の知見を得ることで実現できた。伐採から加工、建設、消費者への販売まで、川上から川下までのバリューチェーンを築いた点を評価してもらえたのだと思う」と述べた。
太田次長は「最近、木を使う様々な動きが出ており、その最先端が今回の受賞作品に表れている。木材利用推進においてウッドデザイン賞は非常に意義があり、今後も応援していく」と語った。
赤池学審査委員長は受賞作品について、「今年始まった森林環境譲与税の使途の模範となるものを選ぶという視点で、5日間侃々諤々の審査を行った。間違いなく譲与税活用のモデルになる」と述べた。また、「最優秀作品のように、大手デベロッパーが木造の中高層ビルに目覚めてきている。こうした大手企業と地方の自治体が戦略的に協業し、ビジネスモデルになっていくことを期待している」と受賞後の発展に期待を示した。
さらに、優秀賞や奨励賞について、「今回は特に、こんなものが木で作れるのかと驚くものが多かった。木の御朱印帳など、発想は斬新だが古くて懐かしい作品も多かった。また、森のなかで結婚式を開く新しいビジネスも出てきた。今後、木材にとどまらず森林の新しい利用の形もどんどん出てほしい」と語った。