11月は残念ながら釣果の女神に微笑んでもらえなかったT口田さん。今月は「海を知るには陸の上から。」と、日頃なかなか行けない場所へ磯の調査に行って来たようです。


陸で海を知る/鹿児島県立博物館編

 先月のM田さんのぶらり旅「鹿児島県立博物館 蔵出し企画展 大隅半島」の記事を見て、大隅半島の成り立ちや、そこに暮らす生物たちの標本等が展示されていることを知り「なんと素敵でディープな企画展なのだ。」と、興味を惹かれ、わたしも鹿児島県立博物館に足を運んでみることにした。

 

 思えば小学5年生の研修旅行以来の来訪となる。「こんにちは、」40年の時の重みを潜在的に感じるのか、より重厚感が増した様な気がする扉を開く。優しい館内スタッフさんが展示フロアにご案内くださり遂に企画展とご対面。「おおっ、M田さんの記事で見た光景だ。」心高鳴る。 

 わたしがこの企画展にどうしてここまで熱い期待を寄せているのか皆様は疑問に思うかもしれない。来訪の目的は「地磯の地質の分布状況を知りたい。」と言うことにあった。大隅半島は西側を錦江湾、東側は太平洋に面していて、様々な地磯への釣行を重ねるうちに西側と東側とでは地質が全く異なっており、磯の表情がそれぞれ大きく異なる点が長年の疑問であった。

 西側はまるで彫刻刀で削ったようなゴツゴツとした地質。表面はザラザラしておりグリップが良い。赤茶色で陽気なイメージ。

 

 東側(肝付町から南大隅町北側の範囲)の地質はのっぺりしていて表面がすべすべ。滑り易い場所が多いイメージである。いわゆる「御影石」とされる白っぽい花崗岩。西側とは対照的な印象だ。

 

 企画展の地質展示資料(※上記画像は展示に用いられていたものと同じ産総研の地質図「日本シームレス地質図V2」から引用)を見ると、確かに実際も色分けどおりに分布しており自分の理解と一致する。上記地質図で濃いピンクで表示された場所は、上でわたしが御影石と評した地域で肝付町をはじめとする東側が中心だ。図を確認すると同じ地質は西側沿岸の一部にもつながっていた。なるほど、南大隅町の台場公園周辺から伊座敷にかけての沿岸域一帯は確かに御影石の”ゴロタ浜”が連なる。

 

(大隅半島西側)

 

(大隅半島東側)

 岩石や鉱物に関する知識が全くなく、分かったつもりでも結局殆ど理解出来ていないのだが、地質図の分布を見て疑問が晴れただけでも充分な満足感を得られた。展示資料の地質の生立ちを眺めていると「1,700万年前」や「中生代の堆積物」など、気の遠くなるようなワードにも触れられてロマンを馳せずにはいられない。それだけでここに来た価値があるというものである。

 企画展は岩石のほか、植物、動物、昆虫、鳥など数多くの収蔵品の中から、選りすぐりの剥製等が展示され見応え満点の内容。数々の展示を興味深く見させていただいた。

 「生きることは知ること」と言う言葉を耳にする。当企画展を通じて知見を深めることの大切さを学んだ。今後も積極的に調べ、そして実際に足を運んで、まだまだ知らない大隅半島の魅力の片鱗を見つけながらこれからも情報発信して行きたい。

 鹿児島県立博物館スタッフの方、並びに、紹介してくださったM田さんに感謝申し上げます。

 

 (T口田)