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★【シリーズ】CLT(Cross Laminated Timber)(4)

       『どこまで高く?木造ビル』

       <21世紀は中高層木造ビルの建設ラッシュ?>

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 近年、欧州、北米や豪州においてCLTを用いた、中高層(7~10階)建築が建てられているのは皆さんご存知のとおりです。CLTの製造量の増加もそれらの要因の一つですが、設計者の考え方や技術も変わってきているという背景もあるようです。




メルボルンにCLTを用いて建てられた10階建集合住宅

近年の完成した建物では今一番高い木造建築物と言われています。



 

 欧州においても我が国同様、木材は20世紀初頭、住宅以外では、伝統的な建築物の建材として用いられ他には、山小屋・別荘・鉄道駅構内などで使用されており、ビルの建材には鉄やコンクリートが主流であり、1980年代終わりまで木材はあまり注目されていませんでした。

 しかしここ10年の間に森林の復活、地球温暖化防止、炭素の固定、持続可能な材料や建設中に排出される二酸化炭素(CO2)の量が他の材質に比べ少ないなど日本と同様の環境と意識の中、CLTという材料の登場もあり、急激に欧州を中心として木造建築は大きく変わってきています。

 さらにコンピューターを用いたデザイン、製造や加工が登場し、木造建築技術士などの養成に投資も行われたそうです。日本においても近年、木造建築物の技術者の育成が重要としていろいろな事業が進められていますが、「技術的な観点から木造建築が理解できる人」が重要だと思われます。

 

 一方、北米での木造ビルの歴史は古く、カナダにおいては、1859年~1940年の間にカナダ全域において煉瓦、大断面製材を用いた5~8階建の木造ビルが建てられており現存しています。しかし残念ながら、1941年の法改正において木造建築の高さ制限や不燃化が、課されそれまでの木造ビルは建てられなくなってしまいました。

 ところが近年、前月にも書きましたが、森林産業の構造改善、国産材利用の目的や政府主導の背景も手伝い、非住宅用途に向けての動きが活発化し、法改正、CLTの製造や設計支援ツールの整備が進められ、集成材、CLTや他の木質材料を用いた大規模建築物が建てられています。

 最近の話題では、公募、審査を経て選ばれた中高層ビル3つのプロジェクトが計画されているそうです。その内の1つバンクーバーに建てられる16~18階の学生寮のプロジェクトは、総額3千万カナダドル、2017年秋の完成を目指し、前述オースラリア メルボルンの10階建て32mやノルウェーで建築中の 14階建、51M(後述)をしのぐ、木造で世界最高のビルになるそうです。

 


その他にも世界各地で高層木造ビルが計画されていますので、そのいくつかを次にご紹介します。

1. カナダ バンクーバー

前号でも紹介したマイケル・グリーン氏のデザインによる 30階建ビル計画


2. スカンジナヴィア各地に拠点を持つ建築会社C.F.モーラー社は、スウェーデンのストックホルム中心部に、34階建ての木造による高層マンションを建設することを提案しています。


3. ノルウェーで建設中の14階建ビル

集成材などの軸組とCLTを壁に用いた工法だそうです。


4. オーストリアの建設会社ロームベルク・バウによる20階建て、高さ約70メートルの木造“高層ビル”の建設計画。世界で最も高い木造ビルで、同国の工科大学と共同考案したとのことです。

まだまだ 他にもあるみたいです。

まさに高層木造ビルラッシュです。こうした20階や30階建の木造ビルが出現した時には、我が国で1968年に地上36階 日本初と言われる霞が関ビルが建てられた時と同様の驚きを感じることでしょう。

 欧州、北米の木造建築の急激な進歩は、ここ10年と言われています。日本でも今、同様に木造建築の見直しと開発が始まっていますが、何とか私が現役で木構造の仕事をしている間にこうした高層木造ビルを日本で見てみたいものです。

 

まずは一歩一歩 前号にも書きましたが、高層ビルの床に木材を使えるように・・が、今の当社の目標です。

10月18日(土)福岡大学で「超高層ビルに木材を使用する研究会」のシンポジウムを開催します。興味のある方は是非ご参加下さい。

詳細は下記HP、問合せは事務局まで。

常務取締役技術本部長 塩﨑 征男

※各写真やイラストは、インターネットよりダウンロードしたものを掲載しています。