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★【シリーズ】バイオマスについて(13)代表取締役 佐々木幸久
我が国林業の実力を如何に高めるか
その1 森林のポテンシャル 日独比較
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前回、我が国林業の実力を高める必要があると書きました。
「林業の実力を高める」とはどういうことなのでしょうか。
我が国は森林の利用率が非常に低いと定評があります。
以下の資料によると、OECD加盟国30ヶ国のうち、国土に占める森林面積比ではフィンランド、スウェーデンに次いで我が国は上位3位に入ります(注:森林面積ではありません)。
ところが、森林利用率では低い方から韓国、メキシコに次いで3位であるというのです。ここで言う森林利用率とは伐採量/成長量です。成長量は重要な指標ですが、ここでは触れられていません。しかし樹種によってもまた育林によっても大きく異なります。その全国的な数字の性格な把握は、伐採量の把握に比べても、なかなかに面倒なことです。
私はこれらの国の内、フィンランド、カナダ、オーストリア、ニュージーランド、米国、スイス、オーストラリアについて林業の片鱗を見てきました。いずれもその国の条件に適合する優れた林業手法を編み出し、合理的で近代的な林業経営を実現していて、興味は尽きません。
本稿ではドイツについて資料などを基に、我が国林業の主に成長量、伐採量について比較してみます。ドイツを取り上げるのは大規模所有者が余りおらず、かつ林業従事者の賃金は極めて高いにもかかわらず林業が概ねうまくいっているからです。
2004年10月5名(内1人は通訳)からなる視察団に加わり、ドイツの林業、加工、木造建築の視察・調査を行いました。調査先の中に約100haを所有する自伐林家と、フライブルグ州立林業試験場があって、ここでの視察・調査は実に印象的で、まさに「目から鱗」でした。
ドイツの森林面積は1000万haあり、我が国2500万haに比べて約40%です。当時ドイツの丸太生産は5000万m3/年(5m3/ha)で、ドイツ国内の木材消費量にほぼ匹敵しているということでした。
研究所によって長期かつ全国的なインヴェントリ調査(※)が行われました。その結果、全国的に14m3/haの成長量があることが判明しました。その調査成果を踏まえて州政府は伐採量を1haあたり平均8m3と定めました。全国では10年後に8000万m3の丸太生産を実現するというものです。
私は研究所の所長がそのように将来の原木生産の数値目標(?)を明言することに非常に驚きを覚えました。我が国では考えられないことです。この視察後何年か経った頃でしょうか、ドイツからの輸入材がこれまでになく目に着くようになりました。聞くところによると現在では目標伐採量を実現しているとのことです。
※インヴェントリ調査
我が国の成長量調査と同じようなものか?ただ受けた説明から、研究所の重要任務として、この調査が非常に重要視され、極めて熱心に行われている様に感じた。
ドイツの数値を我が国森林面積2500万haに当てはめると、我が国森林の生産ポテンシャルは、8m3/ha×2500万ha=20000万m3となります。
当社直近の原木仕入れ値は、13600円/m3ですから、原木だけでも毎年3兆円近い国富が生まれる筈なのです。それが実態はどうか。
林野庁の森林林業統計要覧2014年版によれば、素材生産量は1850万m3であり、ポテンシャルに比べて10%以下ということになります。OECDの統計では森林利用率が我が国40%、ドイツ50%となっていますが、確かにドイツはほぼその通りですが、我が国は残念ながら10%というのが実態であります。
なぜドイツと我が国ではこのような大きな差があるのでしょうか。何らかの理由で成長量に差が生じているのか、それとも成長はしているのだが、山からの搬出が思うに任せず、結果としてこのような差が生じているのでしょうか。
原因と考えられることを以下に列挙します。
1.樹木の成長そのものに差があるのだろうか?
1)気候に差があるか?
2)地質に差があるのか?
3)樹種・品種に差があるのか?
4)育林技術に差があるのか?
5)管理不在=放置によるものか?
6)齢級の差によるものか?
2.樹木そのものはドイツ並みに成長しているが、山に放置され出て来ないのだろうか?
1)担い手不足・高齢化?
2)補助金の仕組みが悪い?
3)輸入材を野放しにしたせい?
4)流通、加工のせい?
5)森林の所有形態?
実はこれらの疑問点は、ドイツの調査後に九州で行われた林学関係のさる研究会に呼ばれたとき提起した項目なのです。はっきりした回答(反応?)は得られませんでしたが、ただある研究者の方から「生産量については、全森林面積2500万haで考えるのではなく、人工林面積でだけ捉えたらどうか?」と遠慮がちの提案がありました。
我が国森林の生産性の低さは問題です。
その原因と解決策は次回に。
(代表取締役 佐々木幸久)