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★【シリーズ】CLT(Cross Laminated Timber)(6)
『CLTの参考書』
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現在、日本では国土交通省・林野庁の主導において各研究機関、学識経験者及び各種団体が協力の下、CLT建築物を実現すべく急速な研究が進められており強度基準の整備、設計法の整備や防耐火対応の整備などが、含まれています。
これらは、先日 国土交通省と林野庁が共同で発表した「CLT普及に向けたロードマップ」(当社HPからもダウンロードできます)に記載された期日への実現に向けて 来年度はより一層加速されると思われます。
ただ、強度・設計法・防耐火の法整備が整ったとしても 建物としての要求性能が満足されるとは言えません。遮音・断熱・耐久性・居住性・設備への設計法や仕様も必要ですし製造・加工・施工に関しても情報は必要です。
そこで、(一社)日本CLT協会では、協会内事業として、これらに対応すべく各種WG(ワーキング)を立ち上げて情報の収集と整備を図っています。下表がそれらのWGです。
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WG名称 |
概 要 |
01 |
グランドデザインWG |
2016年の建築基準制定状況を考え 協会メンバー各位の事業展開を活発に行えるように施策を計画する |
02 |
標準仕様WG |
CLT工法の「ある範囲を定めた中で仕様の標準化を図る。標準化の範囲内でCLT工法の告示(仕様規定)原案を提出する。 |
03 |
遮音WG |
床・界壁遮音の仕様開発・性能向上 |
04 |
歩行振動WG |
CLT床の歩行震動等の性能確認・性能向上 |
05 |
防耐火構造WG |
まずは、素版による防火仕様の認定取得 |
06 |
製造・加工WG |
CLTのパネル部材としての仕様標準化・普及促進 |
07 |
接合WG |
CLT接合の仕様標準化・普及促進・開発・規格化 |
08 |
施工技術合理化WG |
CLT工法に適した工業化・施工技術の提案 |
09 |
温熱WG |
現行の断熱基準に適合する標準仕様の設定、断熱付与 外壁仕上げ材の開発提案、室内環境測定 |
10 |
耐久性WG |
CLTの長期接着性能確認、外部露出の耐久性、防腐防蟻処理仕様、雨仕舞・防水仕様の検討 |
11 |
実大構造実験WG |
2月実施予定の実大振動台試験への協力 |
12 |
広報・普及WG |
CLTの普及促進・会員拡大 |
このように、国内においてCLT建築に向けての法令・資料作成に向けて作業を進めていますが、北米や欧州では、どのような資料が整備されているのでしょうか?
まず、有名なCLTの資料としては
CLT HANDBOOK があります。
これは、FPlnnovations より発刊されているカナダ・米国でのCLTに関する技術書で
無料でダウンロードが可能です
http://www.rethinkwood.com/masstimber/products/cross-laminated-timber-clt/handbook
カナダ版と米国版があります。
また米国での製造基準としては、2011年11月に米国国家規格協会(ANSI)に承認された
「ANSI/APA PRG 320 Performance Standard for Cross-Laminated Timber」
があり、他にも欧州ではEuropean standard – CEN、国際基準としては、ISO standard – TC165などが有ります。
資料の話に戻りますが、当然欧州にもCLTに関する技術書は多数発刊されているのでしょうが、書籍をまだ私は入手出来ていません。
一方、無料でダウンロードできる参考書としては、製造メーカーのカタログが充実していてお勧めです。私が訪問した製造会社の例で言えば ストラエンソ社のカタログ等は、全316頁もあり、材料・強度・構造・接合・納まりなども含まれています。これも無料ダウンロードが可能です
http://www.clt.info/en/media-downloads/brochures/broschuren/
もう1社 Mayer Melnhof Holz 社のカタログも充実しています
内容としては、同様 自社製品の強度・設計・接合などを含んでいます。
http://www.mm-holz.com/downloads/mm-broschueren/
(内 MM-crossram )
今後、ゆくゆく日本においてもCLTメーカーの自社カタログの中に構造用集成材のように技術資料として整備されていくのでしょうが、個人的に期待することとしては、標準となる解説書の整備です。
建築学会から出されている「木質構造設計規準・同解説」などのように構造・接合・デザインなどに特化した資料は、もちろん必要ですが、まずは入門書として
古い話ですが、1988年 建築学会から発刊された「大断面木造建築物設計施工マニュアル」
これは、当時木造建築物に関する資料が少なかったこともあって集成材建築物のバイブルのようでした。建築物の概要から始まり、材料特性、各部工法、防火設計、構造設計、積算と施工等の項目について記載された資料があるとよいのでは?と期待をしています。
常務取締役技術本部長 塩﨑 征男