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★【新コーナー】木への想い独り言(1)「木造の消防署」
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木材振興が声高に叫ばれても、一般の人からは「木材は燃える。火に弱い。だから火災でも安心な鉄骨プレハブを建てる」との意見を良く聞く。
私の知る限り、この40年間に日本で木造の消防署の建築例は無いと思い込み、「住宅と木材誌」の平成26年11月号に「地方創成や林業振興対策には、木造消防署100か所プロジェクトを」という記事を寄稿した。
もし日本でも消防署の木造化が一般化すれば、木造住宅への火災不安を解消し、木造敬遠への予防対策につながるのでは、と考えたからである。
ところが、私の寄稿文を読んだ人から「埼玉県秩父市消防署では平成23年から毎年1棟ずつ、木造で4棟も新築されている」との情報を頂いたため、昨年11月、さっそく秩父市と周辺4町の広域消防組合を訪ねた。
本部は3階建て鉄筋造りだったが、周辺の4分署は2階建ての木造であった。秩父市長が平成22年告示の「公共建築物等における木材利用促進方針」を見て決断し、木造化したという。
北分署など3棟は、2階建て、延べ床面積760m2、構造材の大断面集成材を含め、木材使用量224m3は全て地元秩父産材。建設コストは鉄骨造と大差なく、地域木材を活用した木造消防署建築は、最も地域の特色を出し、地元材と地元大工技能を活かし多事で地域振興に繋がったとの話であった。
私の突拍子もない提案の実用例に驚いたが、市長の経歴を聞くと、役人や議員経験者ではなく地元代々の医師で、新しい発想でユニークな街づくりをされている。常識的には困難と思われた木造消防署も、市長の決断一つで出来ることが判った。
全国の各首長も参考にして挑戦されることを期待して書いた私の報告記が、「住宅と木材誌」4月号に掲載されることとなったので、ご一読を期待します。
先日秩父消防署に電話した時に、「あなたの報告記を読んだと思われるM県副知事が見学に来られましたよ。木造消防署の建設事例につながれば良いですね。」と言われました。木材の需要拡大に役立てばうれしいです。
(西園)
編集追記
この後、大分県豊後大野市の消防署分署が木造で建てられることになり、先日完成しました。消防署木造化の動きは九州にも広がっているようです。大分県の消防署には山佐木材の集成材が使われていますので、追って完成物件としてご紹介したいと思います。