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★【特集】バイオマスについて 代表取締役 佐々木幸久
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工場の熱エネルギーを重油から木屑へ
当社で使用するエネルギーは、最も大きなものが加工機械を回す電気と、木材乾燥の際に使用する熱エネルギーです。電気は電力会社にお任せするとして、乾燥に使用するエネルギーは現場で発生させなければなりません。
これまでボイラーで重油を焚いて蒸気を作っていました。加工量の増大とともに使用する重油は膨大な量になり、それでも価格が安いうちは何とかなりましたが、価格は上がる一方で、次第に経営を圧迫するようになりました。
平成19年、約1億2000万円を投じて(うち半分は国費補助)、熱源を重油から木屑に転換しました。このことにより現在の重油価格なら年間数千万円の節約ができ、以来当社の経営は安定化へ向かったと言えます。「CO²排出削減にも貢献」できたのですが、何よりもまず「儲かるようになった」のです。
当社で発生するバイオマスの種類と使い道
バーク
丸太を搬入し、製材前に剥皮しますが、この時にバークと呼ばれる皮屑が大量に出ます。これは晴天時丸太が濡れていなければ良い燃料であり、皮剥機械が回っている間は、ほとんどバークのみで当社の熱需要はまかなえます。
のこくず(おが粉)
製材時にのこくずが出ます。のこくずは、ほとんどが地域で盛んな畜産向けに消費されます。質の良い鹿児島の黒毛和牛を生産するには、子牛の素質(血統)とともに、注意深い熟練の肥育管理が欠かせません。その中で畜舎の衛生面や牛にとっての居心地なども大事な要素になります。のこくずを床に厚く敷くことで、これらの環境を実現するとのことで、畜産農家の方々があらかじめ決められた順番で毎日取りに来られます。
鉋屑
乾燥した後、プレーナー仕上げをするときに出来る鉋屑は、乾燥していて熱量が高い上に、薄片としてほぼ同じような形をしているので、扱いやすくサイロに貯蔵しておきます。燃料投入量の制御がしやすいので、熱量調整や、作業性の悪い夜間に主として使用します。
チップ
製材時の端材からチップが生産されます。この量も使用する丸太の量の約7~8%ですから、かなりの量になります。これは大半が製紙用の原料として製紙会社に引き取られます。当社ではこのチップを燃料用に適合するよう含有水分を調整して、温泉の追い焚き用とウナギの養殖池の加温に使用するボイラー燃料として販売しています。通常出来立てのチップは水分が多すぎて、そのままでは燃料に適さないケースが多いのです。
家庭におけるバイオマス利用
統計によると家庭のエネルギー消費の約半分は、暖房と温水の「熱利用」です。中でも給湯に使う熱は30%であり、毎日お風呂に入らないと済まない私たちの生活からすればそうでしょう。
私は自宅では薪を焚くいわゆる五右衛門風呂(琺瑯引き)を、そして暖房は薪を燃やす暖炉を愛用しています。そのようなことから、チェーンソーも常備していますし、休日は薪割に汗を流します。
昔ドイツで見た薪焚きの温水ボイラーは実に魅力的でした。一般家庭であれば一日二回程度薪をくべれば、タンクの中に400リットルほどのお湯がいつも入っていて、24時間お湯や熱を供給できる優れもので、ヨーロッパでは広く普及していると聞きました。
エネルギーの地産地消
先述のように私は薪焚きの風呂を愛用していますが、熱効率が悪く、ある程度手間もかかります。ヨーロッパのような性能の高い薪ボイラーが手頃な価格で供給されるならば、すぐにでも買って設置したいと思います。
あるいはもう少し規模を大きくして、自動燃焼装置でチップを燃料として温水を作り、温水の供給を出来るようにする、いわゆる地域熱供給を出来るようにすればエネルギーの地産地消が形になると思います。
我が国は広く薄く全国に森林があります。山の無い都道府県や町はありません。木材は軽いのが特徴で、これは様々な長所にもなるのですが、燃料としてはかさばり、運搬コストのかかるものです。大規模に集積するのは運搬に多くのエネルギー(化石燃料である軽油)を要します。
なるべく地産地消で熱エネルギーとして使用することがベストだと思います。
(次号に続く)