渋柿会鹿屋支部
鹿児島では元気でいたずら好きの幼児のことを「腕白坊主(あまいばっ)」(注:あまのじゃくから変じたと思われる)または「きかん太郎(きかんたろ)」と呼んでおり、それから少し成長した年頃の子どもを「悪戯坊(われこっぼ)」と呼んでいます。万事興味津々の年頃で、よく狂句のネタになります。今回はその悪戯坊の句を取り上げてみました。
青字は読み方です。声に出して読んでみましょう。
分からない方は近くの鹿児島出身者に読んでもらいましょう!
(注)若い人は鹿児島出身者でもなかなか読めません
悪戯坊 店ん豆腐い 指ぶぬくっ
われこっぼ みせんおかべい ゆぶぬくっ
唱 コラち母親かあ 耳む捻られっ
コラちはほかあ みむひねられっ
棈松 睦酔
【解説】母親と夕餉の買い物についていった悪戯坊が、商品の豆腐に指を突き立てたのを見咎められている景を詠んだ句で、方言では母を「はほ」、豆腐は古い京都宮中の言葉から「おかべ」に転じたとも言われています。
悪戯坊 木の頂上で 爺を揶揄っ
われこっぼ きのてっぺんで じをちょくっ
唱 危ねち叱れば 枝どん揺すっ
あっねちがれば えだどんゆすっ
入来 創雲
【解説】勉強はいまいちの悪戯坊。学校から帰って裏の木に登っての遊び。それお爺様に危ないから早く下りろと叱られても猿のように梢を揺さぶって逆に相手をからかっている風景が面白いと思います。
担任ぬ ノイローぜした 悪戯坊
たんにんぬ ノイローぜした われこっぼ
唱 新米先生や 何時も冷や冷や
しんめせんせや いっもひやひや
三條 風雲児
【解説】新学期が始まって担任は新任の女先生。何につけ悪戯坊に振り回されてノイローゼ気味に悩んでいらっしゃる様子。でも、そんな生徒が後には一番たよりになって印象に残るものではないでしょうか。
★解説は渋柿会鹿屋支部の有川南北氏にいただきました。
★写真:山佐木材写真部