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★【シリーズ】バイオマスについて(19) 代表取締役 佐々木幸久
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セーフティネットの必要性
1日働いた後の晩酌は誠にうまいものです。無為徒食のあげくの酒は、私のような酒好きでも何かお天道様に申し訳ない気持ちで、うまくないように思います。この頃余り聞きませんが、「働かざる者食うべからず」という言葉は、私達の意識の中に大なり小なりあるのかもしれません。
といって生活保護制度を否定するものではありません。むしろセーフティネットは絶対に必要であると思っています。
働きたい気持ちが有っても、景気や時の運で職や職場に恵まれないこともあります。また不運や世の理不尽・不条理で、職や財産を失うことも多分あります。もちろん自らの未経験や未熟さゆえに失敗することもあります。かくいう私自身も、まさに経営者たる私自身の責任ですが、事業の見通しを誤って大きな損失を生じたことがありました。全身全霊で打開の途を探り、多くの人たちのご支援のおかげで窮地を脱することが出来ました。それでもその間、路頭に迷うことも始終脳裏にありました。
このような不運や失敗はありがちであり、その際にセーフティネットとしての、必要最小限の衣食住が確保されることは、大変心強いものであろうと思います。そしてさらに働いて若干の収入が得られれば、いずれ再びチャレンジの機会をねらえるというものです。失敗がすなわち人生のゲームセットではなく、それにめげずに努力によっては復活可能なことが、社会の活力持続のためにも必要です。
現金給付の問題
セーフティーネットとして生活に要する費用を個々の人もしくは家庭に現金で給付することは多くの問題があります。国の負担が大きくなる、という問題点はここでは措きます。それよりも社会と給付を受ける人との間に出来る溝、もしくは断絶の方が私には気になります。
またこの仕組みはどうしても費用がかさむ上に、適切な仕事を確保する保証が出来ないのです。費用がかさむ理由は、「一人口より二人口」を一つの例えとして、前回述べました。
適切な仕事の確保を保証できないという意味について述べます。まず一つに、最初から賃金が、生活保護の給付金を大幅に上回るような仕事はそんなにありません。これは現に給付を受けている人にとって、就業動機の大きな阻害要因になります。
また現金給付を受けられても、それは現状生活の維持にぎりぎりであり、その人のこれまでの様々な不運や負の要因を転換できるほどのものであるはずはありません。これら負の要因をかかえたままでは、仮に適切な仕事があって就業できても、人生再建が可能になるかいささか不安が残ります。
現金給付を伴わないセーフティネット
セーフティネットと仕事を保証する途が1つあります。失業者たちの共同生活の中でそれぞれが生活に必要なもの(物とサービス)を自ら生み出す体制を構築できれば、そこには必ず「仕事」が生まれます。食料を生み出す作業、清潔で快適な生活を営むための作業、子供や年寄りのお世話など限りがありません。限りはありませんが、食事の支度や、子供の世話は1人で行うのにくらべ、これらを共同で行えば労力の効率は飛躍的に上がります。
個々に現金給付を受けて、個々に生活すればどうしても一般社会のサービス需給体制の中に埋没してしまいます。給付された現金はある意味失業者のための資金提供と位置づけられます。それが一回限りの消費で流出し、失業者同士の経済活動に還流することはありません。わずか一回限りの回転率では失業者が再び浮上することは困難です。
共同生活の場は1つの村を作る試みになりますが、この中で村民同士が、一方では供給者になり、一方では需用者=消費者になることで、ここに投下された資金は村民の中を還流し、明らかに仕事が生まれ、資金が回転して、収益が生まれてくるのです。
食料やエネルギーが自給可能な生活の場
共同での生活の場を地方にある遊休インフラを活用したらと、前回提案しました。
遊休施設の活用として近年あちこちにある学校跡などは、住むための施設としてうってつけでしょう。しかしながら一応の快適な生活の場とするためには、かなりの改修工事が必要です。これには公費を充てるしかないでしょう。
そして単に居住施設だけでは「仕事の場」ができません。そこで暮らす人たちが働いて、食や生きるための様々な付加価値が生まれて、それをお互いに利用することで自ら生活の糧を生み出していく仕組みを作る必要が有ります。
これらの整備にはかなりの費用がかかりそうです。
それでも総費用をそこで暮らす1人もしくは1家族当たりに均すと、現在の現金給付される1年間の金額以上のことはありますまい。これは最初に1回だけ発生する費用で、2年目以降は不必要になります。
<次号完結予定>
(代表取締役 佐々木幸久)