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★【シリーズ】バイオマスについて(22) 代表取締役 佐々木幸久
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バイオマス視察ツアー
8月20日から21日まで、九州バイオマスフォーラムほか主催の「鹿児島木質バイオマス視察研修ツアー」に参加しました。
集合場所の鹿児島空港に行ってバス乗り場に行くと、驚いたことに定員50人程のバスが一席も余さず満員という参加者だったことです。時代の様相をよく表していると思いました。
視察内容もバランス良く考えられていて、チップや薪の供給元、最近稼働した発電所、熱利用の現場、そして興味深いことに、枕崎の鰹節工場の見学が入っていました。
実は鹿児島県は薪使用量日本一だということですが、それは鰹節生産が日本一であることによります。鰹節の生産には大量の薪を必要とします。
木質燃料の生産現場
当社も木質燃料は生産しますが、あくまで副産物としての生産であり、今回見学したのは燃料生産を主目的にする工場で、考え方の違いなども含め、ある意味参考になりました。
《視察先 前田産業(株) 霧島市(木質チップ工場、自動薪割機)》
《視察先 前田産業(株)前田専務のご自宅 (薪ストーブによる住宅のセントラルヒーティングシステム)》
前田専務は平成25年ヨーロッパバイオマス視察に一緒に行った人です。
その時訪問したスイスチバ社の、念願の高機能ストーブをついに購入されました。
私も購入を熱望しながら、価格の折り合いがつかず、ついに断念。
木質熱利用の現場
《視察先 道の駅たるみず(温浴施設加温用木質チップ温水ボイラー)》
《視察先 鹿児島大学医学部(木質チップ蒸気ボイラー)》
いずれの施設も高額の資金を投じた割りに、燃料費の節減にはさほど効果を上げていないように思われました。恐らく燃料の選択や、ボイラーの機種選定に過誤があったものと思われます。
燃料を高くで買えば収益は上がりません。以前このシリーズで述べましたが(リンク)、カロリー当たりの調達コストが、石油のそれの半分程度以下でなければ投資を回収出来ないのです。燃料はなるべく近場に産するもので、その材料の特性に合わせたボイラーを選択すべきでしょう。
聞いたところでは、燃料について厳格な品質管理をしていて、それを外れたら持ち帰らせる、それが続けば契約解除となるとのことでした。近郊のチップ生産者は閉め出されたのです。
我が国の木材関連産業はそこまで進化していないのが現状で、余り官僚的な対応をしていると、近場の安価な資源を使えなくなり、結果的に自分の首を絞めることになります。もっともまさに官庁なので、担当者の方々は誰も「首を絞められる」実感など無いのでしょうが。
鹿児島市内のプレカット工場ではプレカット加工残材の処理に困っています。これを長期に契約して、何らかの工夫をして熱源にするならば、木質利用による大幅なコストダウンが可能で、しかも一定の購入金額を払えば産業側も大助かりでしょう。
当社では木材乾燥について、石油から木屑に転換することで、償却は別にして年間数千万円の経費削減が出来ました。そのような経済効果を上げることこそが狙いであるべきで、「バイオマス」を時代の流れ、「時代の先取り」、世の指導的立場を取るというような啓蒙的な発想からは、壮大な無駄遣いのシンボル、時代の「あだ花」とに陥る可能性があると思いました。
それらに比べて、枕崎の鰹節工場には、伝統から来る「知恵」を感じました。
(以下次号)