渋柿会鹿屋支部
酷暑の夏もようやく終わり、やっと秋らしい季節になりました。
ところで、鹿児島では『豆腐』のことを『おかべ』と言います。
これは宮中言葉の白い『御壁』から訛ったとも言われています。
今月はこの豆腐を句材としてみました。
青字は読み方です。声に出して読んでみましょう。
分からない方は近くの鹿児島出身者に読んでもらいましょう!
(注)若い人は鹿児島出身者でもなかなか読めません
給料前あ 安しか豆腐で 繰ゆ繋ねっ
はれまえあ やしかおかべで くゆつねっ
唱 仕方が無かち 我慢い月末
しかたがなかち きばいつっずえ
中村 雲海
【解説】毎月、給料前になると家計の遣り繰りに困って朝夕の料理の質も悪くなり、割合安価な豆腐で凌いでいるのが私共庶民の現状です。稼ぎの少ない我が家では、仕方が無いと諦め半分に我慢の数日。「はれ前」とは給料の支払直前のことで、月末まで遣り繰りしているという意味の句です。
俄客き 湯豆腐か半分 削られっ
にわかきゃき ゆどかはんぶん けずられっ
唱 も一人来れば 小皿れ四分一
もひといくれば こざれしぶいっ
有馬 酎児
【解説】本日の夕餉は湯豆腐。食べようとしていた矢先、俄かの来客があり、『まあ上がって一杯やろう』と湯豆腐を半分に削ってのおもてなし。鹿児島では湯豆腐のことを『ゆどっ』、四分の一を『しぶいっ』と縮めて発音します。
豆腐屋を 一日で辞めた 朝寝坊
おかべやを ひしてでやめた あさねごろ
唱 どしこ喚れてん 起ろたせんじ
どしこおれてん おきろたせんじ
塚田 黒柱
【解説】世間の豆腐屋は未明のうちから仕事に取り掛かり、夜が明ける頃には、もう一段落しているのが普通。昨夜はその気で張り切っていたのに翌朝はいつもの通りの朝寝癖で勿論予定は棚上げ。一読しての滑稽味から掲句した次第。
★解説は渋柿会鹿屋支部の有川南北氏にいただきました。
★写真:山佐木材写真部