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★【シリーズ】バイオマスについて(23) 代表取締役 佐々木幸久
「鹿児島木質バイオマス視察研修ツアー」(その2)
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鰹節工場の視察
バイオマス視察で鰹節工場を見る、ひょっとして不思議に思う人もいるかもしれませんが、鰹節を作る際には大量の薪が必要なのです。鰹をさばいてゆでた後、乾燥庫で薪を焚いて加熱乾燥します。単に乾かすだけでなく、ベーコンなどの燻製と同じで、豊かな香り付けにも有効で、この作業を「焙乾」と呼ぶそうです。
鹿児島県の鰹節生産の殆どが枕崎市、指宿市山川町の2カ所で行われ、その生産量は全国のなんと約70%を占める由、断然一位です。その結果、薪の生産量も日本一だそうで、鹿児島県の場合、その殆どが鰹節用でしょう。ちなみに二位が宮城県だそうですが、こちらは恐らく暖房用でしょう。
(注1)鹿児島県の薪生産量:12,115層積m3、二位の宮城県は、6,799層積m3
(注2)1tの鰹節生産のために必要な薪の量は、枕崎では1.5~2.0t、山川では0.5~0.8t。
これは乾燥方式の違い(急造庫、焼津式乾燥庫)による。枕崎では前者が多く、山川では後者が多い。
上記資料は、「鰹節焙乾用薪の利用と供給の実態」(鹿児島大学農学部演習林研究報告 著者寺岡行雄教授ほか。http://hdl.handle.net/10232/20261)に依る。
このレポートは鰹節製造に使用される薪について詳細に調査したもので、興味のある方は是非ネットからダウンロードして読んでほしいと思います。詳細はそちらのレポートにお任せして、当欄は端折ることにします。
鹿児島大学農学部寺岡教授は、准教授時代バイオマス研究のために北欧に遊学、研鑽を積まれた方で、今回の視察団に運営委員長として参画されたので、いろいろと直接教えを請うことが出来ました。
また以前一時活発に活動した、九州内産学官での「儲かる林業研究会」に於いて、中心的役割を果たした方です。このときの成果をまとめた先生のレポートが下記リンクから読めます。
http://www.jafta.or.jp/14_jizoku_hp/web/semminer/sfm_seminar07.pdf
鰹節は世界に誇る食品であり、鹿児島県の誇るべき大きな地場産業でもあるのですが、主に二つの点で現在大きな岐路にあります。一つは遠洋漁業に頼っている鰹の入手が、各国から課される入漁料の負担が高まり、魚価が高騰しつつあることです。
もう一つは製造過程、特に骨を抜く作業などは多くの人手を要し、単純でありながら気の抜けない重労働で、今や外国人労働者の手を借りなければ全くやっていけない状況にある、ということです。
鹿児島県の誇るこの高度の伝統的産業を枕崎で54業者、山川で28業者が支えています。日本食ブームの元、注目を浴び幸先良い印象と裏腹に、脆弱な構造的課題を孕んでいることに気づき、不安を覚えました。
二つとも経営上の大きなリスク要因であり、本来緊急に手を打つべき時ですが、企業の手で解決できる部分と、あまりに構造的で一民間企業では手に余る部分もあるように思われました。
これだけ厚みのある地域産業であってみれば、個々の民間企業と共に、行政も共に取り組んでしかるべき課題だと思われてなりませんでした。