渋柿会鹿屋支部
秋もようやく深まって、朝夕の冷気にそろそろ衣更えの季節がやってきました。
久しぶりに入れ替える衣類や棚などの中から、いきなり飛び出して逃げ回る嫌な虫、ゴキブリを鹿児島では「油虫(あまめ)」と言って目の敵のように嫌っています。
今月はこの油虫を句のテーマにしました。
青字は読み方です。声に出して読んでみましょう。
分からない方は近くの鹿児島出身者に読んでもらいましょう!
(注)若い人は鹿児島出身者でもなかなか読めません
家宝ん皿 開けっ油虫ん 匂を吸っ
かほんさら あけっあまめん かざをすっ
唱 包装紙どま 胡麻粒だらけ
つつんがんどま ごまつぶだらけ
樋渡 草団子
【解説】せっかく大事な皿を丁寧に包装して仕舞っていたのに、胡麻粒みたいな油虫の糞が沢山溜まり、おまけに変色した包装紙には嫌なにおいがこもって家宝の皿も台無しの態です。
油虫捕い 畳の埃も 叩っ出っ
あめめとい たたんのごんも たたっでっ
唱 うなこん奴ち 力任せい
うなこんわろち ちからまかせい
入来 創雲
【解説】逃げ回る油虫を蠅叩きで追い叩きながら、この野郎よばわりで何回も力一杯追いかけるので、畳の埃まで叩き出しているのをからかい半分で眺めている句です。逃げ回る油虫は案外余裕があるかもしれませんが・・・。
冷暖房 油虫も楽な 世を暮れっ
れいだんぼ あまめもだっな よをくれっ
唱 おまけ食物な 沢山有いし
おまけくもんな ずんばいあいし
池上黒ぢょか
【解説】世の中、生活水準が上がってくると人間様だけでなく、油虫まで恩恵を受けて冷暖房付きの家で相応の暮らしが出来るはずだと皮肉った狙いが面白いと思います。
★解説は渋柿会鹿屋支部の有川南北氏にいただきました。
★写真:山佐木材写真部