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★【シリーズ】CLT(Cross Laminated Timber)(18)

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あっという間の一年でした

平成27年もあと2週間、一年が早く感じるのは、① 忙しいから ② 歳をとったから

さて、私の場合はどちらなのでしょうか?


各事業の追い込みシーズン到来です

当社の場合には、3つの事業を遂行していますが、全てが平成28年3月締切となります。

  1. 林野庁委託事業
  2. かごしま木づかい交付金事業(鹿児島県)
  3. CLT実証事業(日本住宅・木材技術センター、木構造振興)

この3つに加え、(一社)日本CLT協会での事業もいくつかあるので、12月~2月は大忙しとなりそうです。

要素試験は別として、大きなイベントとしては次の4つを終わらせなければなりません。


①   CLT床2時間耐火性能評価試験

昨年度より継続している検討の集大成ともいうべき、耐火構造の大臣認定取得に向けた試験を12月8日、11日と、来年1月25日、27日に受験します。

合格し大臣認定を受理したら、いよいよ鋼構造の床にCLTを使った設計が可能になります。

ご興味ある設計者の皆さん、是非ご検討お願いいたします。


加熱試験に向けて、性能評価機関の検査員立ち合いで、上面(床面)の加熱試験体を組み立てました。



 

② 鋼構造CLT床 施工確認試験

上記①で設計が出来るようになった場合、施工方法・施工性能が確認できていなければコストアップの原因となったり、工期短縮を特徴としている乾式床工法の特徴が活かせなかったりします。

そこで、昨年度CLTだけの施工性を確認する為に作成した鉄骨モックアップを再利用し、今年度は被覆材の施工性確認試験を実施します。

また、せっかく被覆材まで施工するならと、その後には「歩行振動」についての測定も欲張ってしまいました。

③ 使用感の確認

設計が出来、施工が出来ても出来上がった床の使用感が良くなければなりません。

先の②の歩行振動に加え、床の「遮音性能」についても測定を計画しています。

CLT単体での遮音性能は、お世辞にも良いとは言えないことは、皆さんご存知と思います。そこで、耐火性能確保の為の被覆材との組合せや天井・床材の組合せでどのような性能になるのか?の確認を予定しています。

④ SAMURAI 再度登場します

来年度、当社ではCLT工場の増設を計画しており、昨年度同様、鹿児島大学塩屋教授のご協力のもと、SAMURAI集成材をフレームとした設計を進めています。

梁間25mをSAMURAIで架け、桁方向はCLTの耐力壁を使い、1つの建物で2つを使ってしまおうという設計を補助事業で行っており、これも3月締切です。



全国でCLTイベントが盛りだくさんです

当社(鹿児島)だけで これだけの事業をしているのですが、全国を見渡すとより多くのCLTに関する事業が進行中です。そのいくつかをご紹介しますと・・・


平成27年

   12月 5日(土) CLTを用いた住宅の完成見学会 @三重県伊勢市

   12月 9日(水) CLT実験棟構造見学会 @茨城県つくば市

   12月15日(火)  日本木材学会 木材強度・木1質構造研究会2015年秋季研究会

            中規模木造オフィス見学会 @宮崎県日南市

平成28年

    1月16日(土) 住宅展示場モデルハウス構造見学会 @岡山県倉敷市

    1月19日(火)、26日(火) 振動台実験 @兵庫県三木市

    1月20日(水) 第3回CLT建築推進フォーラム in KOCHI

    1月30日(土) 真庭シティホテルサンライズ 構造見学会 @岡山県真庭市

    2月中旬     ぷろぽの高齢者福祉施設 構造見学会 @奈良県

    2月26日(金) 第4回CLTフォーラム @一ツ橋ホール(神保町)

    2月下旬     CLTワークショップ @高知


11月19日からCLTの建て方を開始した つくば実験棟

軒とベランダ 3mの跳ね出しが特徴的です。

 

日本CLT協会内の各WGでの検討内容の実験・確認をすることを目的としています。

この建物のニックネームは、CLT協会の河合専務により「CoCo CLT」と命名されたそうです。

ダウンロード
CLT実験棟構造見学会 配布資料
CoCoCLT.pdf
PDFファイル 2.0 MB

こうした事前の事業の動きは、平成28年度の強度・設計法告示に向けての準備作業です。



平成28年度(早々?)いよいよCLTの告示が出される予定です

 昨年6月、国土交通省様と林野庁様との連名で上記ロードマップが出された時には、「え~っ!まだ2年も後なの?」って思ったものですが、もう来年早々って言葉を近頃よく耳にするようになりました。「早々」という言葉は、言う方と聞く方では、受け取り方が違ってくるようですが(笑)、さて実際の所いつ頃になるのでしょうか。楽しみですね。


 設計法に関しては、今年度の建築学会でのミニセミナーや某委員会での情報によりイメージは何となく判ってきたのですが、基準強度の告示のイメージが、いまだよく判っていない現状です。

 まず「杉」かな?とも思うのですが、並行して「唐松」も進められているとも聞いています。最近、よく問い合わせがある「桧」については、試験を行っているという話も聞いていないので、「桧」CLTをと希望される地域の方々にとつては、どうなっていくのか心配をされているようです。

 JASの樹種には、集成材と同じ樹種が記載されているので、いずれ全てが設計可能になると思いますが、まず第一弾として「杉」でよいので「早々」の告示化が待ち遠しいものです。



ひとりごと

「鶏が先か 卵が先か?

さきに話しをした「ロードマップ」の最後の欄には、「10年後 50万m3」という数値目標が書かれています。

 以前、大断面構造用集成材がブーム(?)だった時代に工場がいくつも補助事業等で建てられましたが、需要が続かなければ、過度な価格競争などの結果としていくつかの工場が、無くなったという事例もあります。当然ですが、需要に見合った工場数・生産量が吊りあっていないと結果も見えてくると考えられる訳で、CLTの場合も同様に適正なコストで生産量を維持するには、見合った需要を開拓しなければならないこととなります。

 今は、CLT工法での木造ビル等の建設が出来るように設計法の整備も重要な条件ではありますが、併せてCLTの特徴を活かした使い方を考えて使っていかなければならないと考えています。その例として超高層ビルに木材を使用する研究会での検討(鋼構造建築の床)、既に設計が始まっているPC構造の耐力壁への利用やRC構造での耐震補強など。このように木構造にとらわれず使用方法を考えていくことが、需要(生産量)を増やすひとつの方法ではないでしょうか?


次号のひとりごとでは、「見せたい・見えなくても良い」について述べてみたいと思います。


常務取締役技術本部長 塩﨑 征男