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★【シリーズ】バイオマスについて(29) 代表取締役 佐々木幸久
「九州の森林・林業・木材産業交流会 in 五木村」
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九州経済連合会の林業への取り組み
九州経済連合会(以下九経連)では、農山村の振興や森林の持つ多面的機能発揮のため、官民挙げて林業振興に取り組むべき、と提唱しています。そして様々な経緯を経て、九州の森林・林業・木材産業再生に向けた「アクションプラン」を策定するための「九州次世代林業研究会」を設置することを決め、平成23年6月九州戦略会議において、その報告をしたそうです。
以後約2年かけてこの研究会によって「九州地域の森林・林業・木材産業アクションプラン」を作り、平成25年5月に発表しました。このプランに基づき様々な活動を展開、その一つとして九州各地で今回標題の「交流会」を開いています。私も昨年から九経連の会員にお誘い戴き、交流会になるべく参加しています。経済団体が行う林業の研究会であり、林業関連でのそれとは少し視点が異なり、ひと味違う印象を受けます。
昨年2月には鹿児島市で「交流会」が行われ、私もパネリストの1人として参加する機会を戴きました。ちなみにその節大分県庁からも参加者があり、懇親会の席で、「大分県庁内で山佐木材での研修生の募集があって、それに私も応募しています」と挨拶してくれました。それが昨年4月から一年間お付き合いすることになった西胤氏であります。
その後、この「交流会」が日田市、福岡市でも行われました。福岡での交流会では、林野庁香月製品技術室長、福岡大学稲田教授が基調講演、塩屋教授、私もパネリストの1人として呼んで戴いてCLT、SAMURAI集成材について紹介できました。福岡など都市部の方々に知って貰うためにも有り難い機会でした。
五木村での交流会
去る3月7日、この「交流会」が熊本県五木村で行われました。久々の五木村訪問に気持ちがそそられ、一年間の研修も残り少なくなっている西胤氏、当社熊本営業所吉松所長にも声を掛け、三人で五木村での「交流会」に出かけました。天気も良く、まさに仙境とも言えるこの地での、講演会、パネルディスカッション、懇親会、村のスナック(?)での二次会、民宿「いちょう」宿泊と、丸一日の滞在を大いに満喫しました。有名な味噌漬け豆腐などのお土産品も沢山買い込んで帰りました。
藤掛教授のご講演から 現在の年間面積当たり伐採量
この日の交流会では、別添スケジュールの通り、九州森林管理局中山次長と、宮崎大学農学部藤掛教授お二人の講演、そして五木村和田村長も加わってのパネルディスカッションが行われました。
藤掛教授の多岐にわたるご講演の中で、次のデータが示されました。ちょうど当メルマガ2月号(29号)の本シリーズで、森林の活用度について記していたので、これについて考えてみることにします。
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人工林面積 (千ha) |
針葉樹生産量 (千m3) |
面積当たり (m3/ha) |
熊本県 |
281 |
893 |
3.18 |
大分県 |
237 |
947 |
4.00 |
宮崎県 |
351 |
1,614 |
4.60 |
全国 |
10,289 |
17,741 |
1.72 |
年間適正伐採量とは
森林面積当たりの伐採量はどの程度が適正か?というのは非常に重たい課題です。伐りすぎれば資源は枯渇します。私たちはやむを得なかったとは言え、数十年前の過伐、乱伐の報いを十分に受けています。二度と再びこのようなことを繰り返してはいけません。
藤掛先生は生長量をスギの場合、と限定して50年で皆伐時に500m3、年間10m3/haと仮定されました。本来きちんとした正確な生長量データがいつでも入手できるべきだと思いますが、それが無いとすればこのような推定値に頼るしかないのでしょう。一応そのha当たり年間生長量10m3と言うのを受け入れることにしましょう。
年間生長量を上回る伐採量は、資源蓄積に食い込む状態、即ち過伐になります。伐採は生長量の何割かに止めるべきです。
森林面積のうち活きた山の比率は?
民有林の場合、現状では間伐等の作業の大半が森林組合を通じて行われています。従って森林組合が「お相手できる」山が活きた山と思われます。要するに、森林組合が山の状況を掌握し山主とやり取りできている山=活きた山であり、これを「有効林」と言って差し支えないと思います。
「有効林」が森林面積全体の何割あるかは地域事情でいろいろあると思いますが、有効林率を一応5割と仮定しましょう。
皆伐後の再造林率も聞いてみると地域によって高低があるようです。3割から8割くらいの幅が有るようですが、低い地域は今後の精進を期待して一応8割と仮定しましょう。
この「有効林」に再造林率を掛けると、それが「持続可能な森林」と言えます。
すなわち、森林面積×有効林率×再造林率=持続可能な森林
0.5 × 0.8 = 0.4
これから、総森林面積中に占める持続可能林の比率は、仮定の数字ですが、40%になります。
九州の人工林は過伐状態に入りつつある?
ここで私が提言したいのは、年間伐採量の適否の議論は、森林の総面積で捉えるのではなく、「持続可能林」の面積で捉えて欲しいと言うことなのです。それは、何も手を打たない限り今後、持続可能林以外から針葉樹が出てくることは無いからです。
先ほどの藤掛先生の表の後ろに、2枠足してみました。持続可能林 (千ha)と、持続可能林ha当り生産量 (m3)とです。
ただし、あくまで「仮定(有効林率)」と「仮定(再造林率)」を掛け合わせた数字であることをお断りしておきます。
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人工林面積 (千ha) |
針葉樹生産量 (千m3) |
面積当たり (m3/ha) |
持続可能林 (千ha) |
同林ha当り 生産量 (m3) |
熊本県 |
281 |
893 |
3.18 |
112 |
7.97 |
大分県 |
237 |
947 |
4.00 |
95 |
9.97 |
宮崎県 |
351 |
1,614 |
4.60 |
140 |
11.53 |
全国 |
10,289 |
17,741 |
1.72 |
4,115 |
4.31 |
この視点に立ってみると、九州の森林の現在の年間伐採量は果たして適正なのでしょうか。過伐状態に陥っているのではないことを切に祈る次第です。