メールマガジン第34号>社長連載

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★【社長連載】 Woodistのつぶやき(2) 

  歴史的建造物復元に持続可能な材料を用いるよう提案する        

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歴史的建造物復元の動き

 近年城郭など歴史的建造物の復元が話題になっています。林業振興や、地域工務店活性化のため、また広く地域創生のためにも歓迎すべきことです。ただそれに利用される資源、特に木材の調達に不安があるのです。

 もともと我が国では資源に偏りがあって、高齢級(例えば100年生以上)の樹木は極端に少なく、戦後植林したまだまだ若い樹木の森林が大半を占めています。

  即ち歴史的建造物を復元しようかというときに、今の流れでは必ず無垢材で、そして建物は大概大きなものなので、大径で長大なものが主になります。それは当然のように相当の年数を経た樹木になります。

 ところが高齢級大径材の樹木は、先ほど述べたように国内には極めて少ないのです。従ってどこかで復元が決まれば、担当する人は全国からあるいは世界中から木材を集めようと必死になります。

 以前は台湾や世界各地から金に飽かせて、かき集めてきました。そして海外でも資源が枯渇し、強引な調達は批判を受ける可能性が出てきました。また資源不足から現在の銘木相場は著しく高騰、しかも事前の見積もり不可能な不透明な価格にならざるを得ません。

 必要な木材は当初予定していたものよりかなり程度を落とすことになるでしょう。そして品質レベルは低下しながら、予算も少なからずオーバーすることになるでしょう。そして何とか必要な材料は入手できて、事業はめでたくそれで収まりましょう。

 

高齢級大径木資源枯渇の恐れ

 しかしながらたださえ乏しい貴重な国内の木材資源が、この試みによって確実に完全枯渇へ向けて、大きく歩を進めたことは間違い有りません。一方法隆寺や、唐招提寺のような文字通り我が国第1級の建物が、国内には沢山あります。年を経れば修復の必要が必ず出てきます。何らかの事故が無いとも限りません。そのときこれら国宝級文化財の修復に使う木材は果たしてどう調達されるか、おそらくは重大な支障を招くだろうと危惧されます。

 

持続可能な資源=集成材使用の勧め

 そのようなことから復元する建造物の趣旨や意義によっては、高齢樹木という貴重資源の使用をある程度抑制し、持続可能な材料の利用を積極的に進めるなどの方針徹底を図るべきではないかということです。具体的方策としてはケヤキやヒノキなど、比較的容易に調達できる人工林木材を使用することです。径級が小さければ集成材にすればよいのです。

 こうすることで価格は大幅に下がり、また価格の透明性も大幅に高まります。 

 現在は無垢材が手に入らなければ、そのときはコンクリートでと突然飛躍してしまうことがあるのは、私には解せない思考形態のように思われてなりません。その中間に持続可能で供給能力も高い、集成材という優れた資材があるではないかと言いたいのです。

 

具体的なアクションプラン

 では具体的にはどのようなアクションを起こせばよいでしょうか。

 まず、国内森林資源を一義的に管理をする役所は本来林野庁しか有りません。現在は権限が分散されて、どこに責任の所在があるか不分明であるのは大変困ったことです。特にそれが民有林の個人資産であれば抑制する手立てもなく、心ある人も危機感を持っているに違い有りません。                                      

 歴史的建造物復元に際して、その木材利用について法律で規制することは現状では難しいかもしれません。しかしながら何らかの形で、「ガイドライン」を制定することは十分に可能なことではないだろうかと思うのです。これについては文化財管理側行政、すなわち文化庁とで調整する必要があるでしょうが。

 

 ガイドラインが効力を発揮するか。私は発揮すると思います。資源は有限であり、まして残っている数少ない古木は奇跡的に残っているのであって、人々はそれを「神木」と呼んで大事にしているのです。金に飽かせて貴重な心のよりどころでさ高貴な木材を伐採する行為は決して褒められることではないとガイドラインにそのことをきちんと書き込み、自制を求めるのです。それが世にアナウンスされれば必ずそれは共感を呼ぶものと信じます。

  これまで林野行政における関心事は主として人工林であり、その中でも、スギ、ヒノキ、カラマツなど針葉樹が中心で、広葉樹については自然保護や環境保護の見方や考え方がいささか偏っていたこともあって、比較的おざなりであったろうと思われます。広葉樹についてもなるべく正確な資源調査をお願いしたいし、併せて資源造成をもお願いしたいものです。

 

日本集成材工業協同組合としての活動

 また、近年大きな発展を遂げている集成材の性能や可能性について認知度不足があるのも否めません。業界の努力不足が明らかです。業界による供給体制の整備とPR広報活動が不可欠です。 

 実は去る5月20日、日本集成材工業協同組合総会に於いて、同組合理事長に選任されました。以上のような観点から、同組合の活動項目として取り上げて戴くよう役員各位に働きかけているところです。このような事業に必要な技術を保有する組合員もいて、よい結果が生み出されたらよいがと願っています。

(代表取締役 佐々木 幸久)