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★【社長連載】 Woodistのつぶやき(14)
我が国林業七不思議(解題編)
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私が思う「我が国林業七不思議」
さて、このシリーズ「我が国林業七不思議」編も、前回まで7回にわたって「七不思議」の一つ一つを語ってきましたが、いよいよ大詰めを迎えました。
前回のおさらいです。
45年で皆伐した場合の山元所得は、1ha当り194万円。
その内訳は、皆伐時所得176万円+間伐所得18万円であること。
90年で皆伐した場合の山元所得は、1ha当り706万円。
その内訳は、皆伐時所得442万円+間伐所得264万円であること。
この数字からわかることは、最初の45年の所得はたかだか194万円、この時皆伐せずに間伐・択伐をしながらあと45年待ってから皆伐すれば、706万円の所得になる、すなわち最初の45年の次の45年間では、706万円-194万円=510万円の所得が生まれるのです。
早々と皆伐した場合、その結果思ったほど所得は上がらず、しかも伐採後にお金を掛けて苦心惨憺しながら再造林というのは、誰が考えても理屈に合いません。それにも関わらず皆伐する動きが止まらない理由については、当メルマガ前々号Woodistのつぶやき(12)で、次のように考察しました。
現在皆伐が非常に盛んです。ほんの十年前に主流であった間伐主体でなく、こうも皆伐志向へ急激に変わったのはなぜでしょうか。
私はその理由を次の4点によるものだろうと考えています。
1.戦後植林してきた森林が成長し、「伐期が来た」と発信され始めた。
2.価格はともかく需要は旺盛である。
3.山主が高齢化し、後継者もないこととて経済性を無視しても早期に換金したい。
4.素材生産業者が意欲的である。
ここでは
3.山主が高齢化し、後継者もないこととて経済性を無視しても早期に換金したい。
を取り上げます。今まさに地方の多くの森林がそのような状況に立ち至っているからです。
後継者のいない高齢山主は焦っていて、誰でも買ってくれればいくらででも売り払うでしょう。当然再造林をすることは夢にも考えられません。事情を思えばそれを責めることも出来ません。
皆伐して裸になった山を山主亡き後、誰が引き継ぐか。町か、森林組合か。もし私に引き取れと言われれば、たとえ値段はゼロでも断然断ります。これから50年間費用のみ掛かって所得が殆ど生まれない山を買うことは考えられません。
しかし伐れる状態だけれどもまだ伐っていない森林なら話は違います。先ほど述べたように、これからきちんと経営していけば確実に収益が上がる見通しがたつからです。売り主も今皆伐したときの収入と同額で山ごと買ってくれて、しかもその後きちんと山を守ってくれるなら、多いに満足されるのではないでしょうか。
森林はある程度面積がまとまらなければ組織的な林業経営は出来ないので、集約する必要があります。面積は広いに越したことはありませんが、40年から50年生の山が20~50haくらいまとまれば、これは必ず儲かる林業経営が可能になるだろうし、私も買いたいくらいです。
先般7月5日~6日にかけて、九州の朝倉市などを中心に大変な豪雨がありました(「平成29年7月九州北部豪雨」)。何と福岡県、大分県での死者34名と言うことです。心からご冥福をお祈りする次第です。
この時福岡県によると36万m3の流木が発生したということです。1ha当り立木材積300m3ならば1200haの森林から、もし200m3なら1800haの森林から立木が流出したことになります。健全な森林経営がなされていれば若干なりともこの数字を減らせたはずというのが常識です。
急斜面に大きな樹木が沢山あると、大量の雨が降ったとき、その重量を地盤は支えきれません。また樹木の繁茂は山肌に陽光が入らず、下草(下層植生)が育ちにくくなります。10年に1回くらい間伐して、陽光を地面に届くようにしてあげる必要があります。ところが持ち主が細分化されていて、しかもその山主が地元にいないならば、必要なときに必要な手がなかなか打てない。
私の見るところ、もう公有化するしかありません。急傾斜地区から優先して、場合によっては寄付を求める、あるいは有償ででも緊急に公有化し、一部は治山工事も含めて適正な状態になるよう手入れすることが最優先課題であろうかと思われます。
(代表取締役 佐々木 幸久)