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★【特集】バイオマスについて(4) 代表取締役 佐々木幸久
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ソーラーコンプレックス社の視察
住民出資の地域エネルギー活用会社
ソーラーコンプレックス社は、2000年に地域住民20人の共同出資で設立された南ドイツの会社です。このような会社が存在することに、ヨーロッパの知性と地域の活力を実感します。
今では出資者数780人、資本は600万ユーロ(約8億5千万円)に増え、出資金に対し5%以上の配当を続けているといいます。
特に新鮮に感じたことは以下の4つ。
1.森林のエネルギー生産力
1ヘクタールの森林で一年間に生産される樹木は、2000ℓの灯油に相当する。
2.太陽熱を直接利用すれば60倍も効率的
同じ1ヘクタールの面積で太陽熱を直接集める(太陽熱温水器を利用する)と、一年間に生長する木材の60倍のエネルギーを得られる。
3.木材チップの買い上げ価格
「バイオエネルギー村」ビュージンゲン村の同社地域暖房プロジェクトでは、木材チップの買い上げ価格を、重量で買うのではなく、エネルギーの出力実績で買うというのも実にユニーク。チップを1社から購入しているから出来ることである。その価格は1MWH当たり25ユーロ。
チップを重量で買うと品質向上のモチベーションが働きにくい。つまりチップは水分が少ないほど燃料効率は良いのに、水分が少なくなれば軽くなって、売る側は「損」になる。エネルギー発生実績で燃料代を払えば、運賃もあり、少しでも品質向上に努めることになる。木質系燃料取引の本質を突いた売買ルールにいたく感心した。
4.太陽光発電を縮小し、熱供給事業へ
以前は太陽光発電ビジネスを重視していたが、補助制度が変更され有利性が無くなり、最低限に縮小。太陽熱温水やバイオマスボイラーによる熱供給などを重視する方向に転じた。
さて、これらは我が国であっても通用する話なのでしょうか。
以下に上記1.~3.について検証(試算)してみることにします。ごく普通に得られる情報と、分からないことは大胆に「仮定」して、素人流で大雑把な試算であることをご容赦ください。
1.樹木の年間1ヘクタール当たり成長量を燃やした時の熱は、灯油2000ℓに匹敵するか?
【仮定1】1m3の木材の比重を、針葉樹、広葉樹平均0.5とする
このとき1m3の木材は500㎏になる
年間成長量 重量500㎏/m3×10m3=5,000㎏・・・①
【仮定2】年間の樹木の成長量を10m3/ヘクタールと仮定
ドイツでは120年の法正林がほぼ確立しているが、
その成長量は全国的に平均して14m3/ヘクタールとのこと
【仮定3】木材の発熱量4,300㎉/㎏
木材中の水分によるエネルギー低減 500㎉/㎏と仮定
実質発熱量3,800㎉/㎏・・・②
①×② 5,000㎏×3,800㎉/㎏=19,000,000㎉・・・③
【仮定4】灯油の発熱量8,800㎉/ℓ・・・④
★一年間の生長量の木材は、灯油何ℓに相当するか?
③÷④ 19,000,000㎉/8,800㎉/ℓ=2,159ℓ →概ね該当
2.太陽熱を直接利用すれば60倍も効率的なのか?
インターネットで「太陽熱温水器」で検索し、何社かのホームページを確認したところ、一番分かりやすい形で出てきたデータが
「最低57℃のお湯が200ℓ、集熱板面積4m2」でした。
【仮定1】水温17℃の水が57℃になったと仮定
57℃-17℃=40㎉/ℓ・・・⑤
【仮定2】稼働率 360日の50%と仮定(根拠なし)・・・⑥
【仮定3】1ヘクタール(=10,000m2)の中に温水器1基4m2を50%
の敷地効率で据え付けたとする・・・⑦
敷地1ヘクタールで発生する熱量は ⑤×⑥×⑦
40㎉/ℓ×200ℓ×(10,000m2/4m2×0.5)×360日×0.5
=1,800,000,000㎉・・・⑧
★木材より直接回収熱が60倍となるか
⑧÷③ 1,800,000,000㎉÷19,000,000㎉=95倍(/60≒1.5)
→残念ながら少し遠い。「仮定」が少し違っているのでしょう
3.1MWH当たり25ユーロのチップ価格は適正か?
※1MWH=1,000KWH
※1KWH=860㎉
【仮定1】為替相場 25ユーロ=3,500円(1ユーロ=140円の時)・・・⑨
【仮定2】熱効率 90%
木材の発熱量は、2.の【仮定4】3,800㎉を使用・・・⑩
熱量1MWHを発生するために必要な燃料の熱量
860㎉/KWH×1,000KWH/0.9=956,000㎉・・・⑪
そのために必要な木材の重量
⑪÷⑩ 956,000㎉/3,800㎉/㎏=250㎏・・・⑫
1トン当たりのチップ価格(絶乾トン換算)
⑨×1,000㎏/250㎏
3.500円×1,000㎏/250㎏=14,000円/トン
→現在の製紙用チップと比較して妥当なところでしょうか
バイオマス利用のビジネスは大きな資金を要する発電のみではないと思います。小規模企業が企業できるチャンスも十分あるはずです。様々なシチュエーションで、その一々を詳細な経営計画を作る前に、とりあえず私たちの持つ常識の範囲で、日常的に評価考量してみるべきだと考えます。
(代表取締役 佐々木幸久)