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★【大学研究室だより】 南京林業大学(その5)・小松幸平先生より
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ご無沙汰いたしております。今回は昨年の夏(8月)から暮れ(12月)までの間に体験した印象深い出来事の幾つかをお伝えします。
8月の中旬に、インドネシア・スマトラ島のパレンバン市で開催された第3回国際構造工学大会(http://iconbuild.unsri.ac.id/)に招待され、「高剛性・高靱性な集成材構造」と題する基調講演を行いました。主催はパレンバン市に本部を置くスリビジャヤ大学で、インドネシアとマレーシアの土木・建築系の研究者が多数参加しました。
今から17・8年前に、インドネシア・マレーシアの大学・研究所と日本の京大・木質科学研究所を中心とする大学との間で拠点大学交流事業という国際交流事業が始まりました。交流第1陣として日本に招待された数名の研究者の中に、今回私を招待してくれたスリビジャヤ大学のアニス・サガーフ氏が含まれていました。サガーフ氏はその後、スリビジャヤ大学の総長にまで昇りつめ、今回国際会議を開催するにあたって少し畑違いではあるものの、私を招待してくれました。参加者の99%はコンクリート、鉄、橋梁、道路、地質等の専門家でしたが、皆さん温かく集成材構造の話を聴講してくれました。サガーフ氏の男気に心から感謝しています。
【写真1】 会議開始前の招待講演者席の様子。
中央が議長のアニス・サガーフ氏
【写真2】会議終了後、スリビジャヤ大学土木工学科大学院での特別講義後の記念撮影
10月中旬に、中国の寧海(Ninghai)という海辺の町で、「CLTと竹積層材に関する第1回国際シンポジュウム:http://news.njfu.edu.cn/newsshow.php?cid=1&id=7300」が開催されました。私は、日本のCLTに関する話と、LSBとCLTの相性の良さに関する話の2題について講演を行いました。講演依頼のあった当初は30分ぐらいの講演という事でしたので、パワーポイントを沢山用意しました。しかし、いざ蓋を開けて見ると講演者の数がかなり増えていて、私の講演時間は15分に削られたため、用意したパワーポイントの枚数を半減させるのに苦労しました。
【写真3】 講演する「斜め打ちスクリューの研究」で有名なイタリアのトマシー教授
主催者側からは何の事前説明もありませんでしたが、最近ではこのようなやり方にも慣れてきたので、冷静な気持ちで対処できるようになりました。このシンポジュウムの目的は、ヨーロッパやカナダで盛んなCLT建築を中国にも普及・導入することにあったようで、中国系カナダ人が発表する場合は、観客に分かるように中国語で発表が行われたため、中国語の分からない私のような外国人にはお手上げ状態でした。それでも、バンクーバーに建設された現在世界最高の18階建てCLT建築の意外な盲点が分かったりして、なかなか興味深い内容のシンポジュウムでした。
12月に入って、ついに本格的な構造実験をやるチャンスが巡ってきました。研究所だよりの第1号(リンク)でお伝えした「闕先生が設計・発注した構造耐力試験装置」がいよいよ稼働可能となったのです。長い間設置場所を探し求めていたのですが、とうとう南京林業大学・土木工学院・工学実験センターの一角に設置することが正式に認められました。この工学院実験センターは、私の所属する南京林業大学・材料科学工学院のメインキャンパスから地下鉄を乗り継いで40分ぐらい南下した所にあります。【写真4】に示す立派な外観の建物で、本格的な各種土木工学実験を実行可能な素晴らしい反力床、反力壁、加力装置そして大形のクレーンを備えた実験施設です。同じ南京林業大学でも、学院名が違うとこうも基本的設備に違いがあるのかと、院生共々少なからぬショックを受けました。
【写真4】 南京林業大学・土木工学院の工学実験センター
【写真5】は新しい試験装置にセットされた集成材柱-梁接合試験体を示します。この研究プロジェクトは、闕先生が獲得した中国政府の科学研究費を使った研究ですので、その研究費での実験であることを示す立派な横断幕を掲げて実験をしました。今回は鋼板添え板斜め打ち全ネジスクリュー接合でモーメント抵抗接合部を構成する新しい方式を試みました。詳細はまた後ほど。
【写真5】 集成材柱―梁モーメント抵抗接合部の正負繰り返し加力実験