メールマガジン第53号>役員挨拶

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★役員からのメッセージ     監査役 神田 稔

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つぶやきにつぶやく

 メールマガジン46号 社長のWoodistのつぶやき(13)に  【さる森林組合長は、「それは高齢の山主が待ちきれない」からだと喝破しました。若い頃植林し、猛暑の中下刈り、つる切りに励んだ山を子供達は見向きもしない。残しても感謝もされないだろう、であるならば伐採していくらかにでも換金して自分で使ってしまおう。組合長の言葉から想像するとこのような情景でしょうか。】とある。

 

 小生の叔父は81歳であるが、祖父が植林した杉の木を昨年の12月伐採業者に売却した。冬の日当たりが悪く、家の周囲のスギのみ切りたかったが、抱き合わせならと伐採業者が提示した価格は40万円。その山は以前知り合いの伐採業者が190万円の値をつけた山であった。年数を確認しようと輪切りを持ってきて数えてみたら80年は経っていた。丁度祖父が子供の学資を工面するために高祖父が植えた杉山を伐採し換金していた時代と合致する。祖父は伐採後再植林し山の手入れを怠らず現在に至り美林となったのであるが、材価が低下したとはいえ悲しいかな、苦労の甲斐もない価格になってしまったのである。 

 

 2000年前後、木造橋がブームになり日本全国で架橋された。わが社で携わったものは、宮崎杉の木橋、熊本阿蘇望橋、鹿児島金峰2000年橋、高知紅香橋等数十橋になる。その時使用されたラミナはヤング係数の高い材が必要で、高年齢級の大径材が仕入れされた。地産地材ということもあり仕入れ価格は通常の価格より高く設定された。宮崎木橋はラミナ幅22cmの2ヒンジのアーチ橋であるが、材料調達を考え鹿児島木橋はラミナ幅18cmの2ヒンジのアーチ橋である。使用したラミナの色は南九州産杉の特徴である色の濃いものが多かった。しかしながらヤング係数は高かった。積層構成の材料選別は杉の色合いよりヤング係数が重要でり、仕入れ担当者はそれを重要視したようである。しかし今回の輪切りは「よか木じゃね」と喝破された。

 

 現在は目にすることのない家造りであるが、K島のH邸の軒先を支える縁側のスギ桁は6間(それ以上か?)あった。桁セイは数十センチあったかと思うが、これくらいの桁を取れる超高齢級は曲げ強度もかなりあるのではなかろうか?今回輪切りしたスギの直径は60cm。年輪は平均3.75mmであるので、家づくりに応えられる曲げ強度と桁行は幾らのものが取れるかと思うとワクワクとする高揚感で期待と想像は膨らむのである。

 国産杉にこだわって家づくりに取り組んでいるある住宅会社は、広い開口部の桁は集成材を使っている。価格と強度期待であり、わが社にとってはありがたい客筋ではあるが、このような高齢級スギが出材される現状を考えると手間暇がかかる。桁の価格は上がるかもしれないが建設費に占める木材代からすると些少で、もっとこだわって使っても特色のある家づくりにこだわる顧客は増えるのではと思うのである。

 

 私の友人は広大な山林を所有していてほとんどが広葉樹である。伐採してパルプに売るように提案したことがあったが、曰く「木を切ったらはげ山になる」とのことであった。広葉樹の自然更新、近年ナラ枯れによる山林被害を説いても頑として聞く耳を持たなかった。相応の年金と借地料があり、手っ取り早い収入には飛びつかないのは何故か不思議でならなかったが、個人の生き方にそれ以上は言えない。数年前ある団体から、狭いながらも我が家の70年生の杉山も間伐の提案頂いたが、「間伐してやるので山元に払う原木代は無い」とのことで前出の友人同様間伐を断った。

(神田 稔)