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★【社長連載】 Woodistのつぶやき(20)
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承前
譲渡希望のあった山を引き受ける
前号で紹介した、Y市会議員を介して引き受けて欲しいと要望のあった肝付町(旧内之浦町)の山林についての続報である。Yさん、後見人さん立ち会いもと、ご本人さんと年末に譲渡契約が成立して、年明け早々には私の名義に変わった。
山は内之浦湾を見下ろす海沿い南向き急斜面で、いわゆる雑木林(広葉樹林)、面積は13haある。
折角のこの山をどのように活用するか? 社内外何人かに聞いてみた。
1案 磯釣りの基地にしたい
これは釣り好きA君の案というか希望というか。まあ確かに磯釣り好適地ではある。
2案 太陽光発電
社内から。山は南向きであり、収支は完全に見込めるとか。これは一応却下。
3案 椿を植える
鹿児島市の土木コンサル会社役員のKさん。この方は休みの日は、ハスクバーナの本格的チェーンソーを駆使して、薪作りや山小屋作りに精を出す。「五右衛門風呂同好会」の幹事。この方には一度山を直接見て貰い、改めて意見を聞きたい。
4案 蝶が集まる植物を植える
これは蝶採集歴50年の、鹿屋市の歯科医師Sさんの案。
5案 オリーブを植える
これは私。
まあ当分は皆様に相談しながら、あれこれアイディアを楽しむことにしたい。
放置林への向き合い方
大隅森林組合のO参事は私の質問に答えて、「森林組合が事業の対象に出来る民有林は30%しかない」という、何とも厳しい現実を表明した。
林業で補助事業を使うとすれば、森林組合を通じるのが最も早道なので、森林組合と連絡を取っていない(森林組合が連絡が取れない)という、残り70%の森林所有者の森林は、少数の例外を除いて、基本的に放置されていると考えて良いだろう。
森林組合が事業の対象に出来ない理由は概ね次の通りである。
1.持ち主が地元にいない(連絡先がつかめない)。
2.2代、3代にわたって相続の手続きがしてないため、所有者が多数に別れ、容易に合意が得られない。
3.持ち山が零細であるなど、林業に関心がない。
4.補助金がつくにしても、山が若ければ自己負担は発生する。
森林資源は本当に豊富なのか
最近林業活動が盛んになっている。ただそれは持ち主がちゃんといて、これまである程度の手入れをしていた森林についての話である。
森林は「公益的機能を有する」という認識の元、昔も今もかなりの公的資金が投入されている。これは主として森林組合を通じているので、森林組合と連絡の取れない多数の森林については素通りしていく。
行政や研究者の間で木材資源量(=蓄積量という)と伐採量の関係性がよく議論される。その議論は「蓄積量がこれだけあるから、現在の伐採量で資源が枯渇することは決してない」となることが多い。
この時の資源量は、その地域の森林すべてが対象として計算されている。しかし実際には、所有者のはっきりしない、つまり伐る伐らないの意思決定が出来ない山が70%もあるのである(この比率は地域によって異なる。大隅地区は過疎の比率が高いだけにやや高めかも知れない)。
伐れない山を資源量として評価できるだろうか。私はその評価は誤りと思う。とすれば資源量(蓄積)の評価は現在のそれとは大きく異なることになる。半分か3分の1か。とすれば既に蓄積量に食い込む伐り過ぎ、つまり「過伐」状態に陥っている県がいくつか出てくる。鹿児島県もその一つだ。
過伐は林業経営で最も忌むべきこととされている。「林業は先進国でしか成立しない」、と言われているのは政治の未熟や貧困の故に、現金収入が見込める伐採の誘惑を制限する法的、倫理的規範が欠けるケースが多いからである。
我が国は先進国中近代林業に唯一失敗した国、と後世言われかねないと強い懸念を持っている。
肝付町の放置林
ところで肝付町で約6000haの民有林がある。ちゃんとしたデータはないものの、先ほどの話から類推すれば、肝付町6000haの森林のうち4000ha前後が放置林である可能性が高い。
今回放置林になる寸前の13haの森林を私が引き受けた。これは4000haに比べるとわずかに0.3%である。個人で出来ることは知れていると慨嘆するのみだが、これをもっと組織的に、かつ大々的に出来ないものだろうか。
林業会社の設立を検討
これから山との関わりが深まることを想定して、舞台として林業会社を作っては如何かと考えている。今年春頃の設立としたい。
今回の山林購入は会社設立の間に合わなかったので自分名義にしたが、今後山の購入は出来ればこの林業会社で行いたい。自由になる金が少しでも出来れば、山林の購入資金に充てたい。もし志を同じくする人から資金の醵出が得られるようであれば、森林保有・保全を行う基金の設立も考えられる。
近く国の環境税が制定されると聞く。その有効な使途として、零細な放置林を集約して森林集約を行う費用に充てる。集約できた一定規模の森林を、公有林化する、あるいは地元の林業関係者、産業陣が購入し、引き受けていく。
もし地元のみで保有できない規模に至るならば、都市大手企業に保有して貰うことも検討していくべきではないか。何と時代はもはやそのような段階に達している。
(代表取締役 佐々木 幸久)