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★【社長連載】 Woodistのつぶやき(28)
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現場見学会に参加
先日仙台市の「(仮称)泉高森2丁目プロジェクト作業所見学会」が行われ、参加した。この建物の床と壁の一部に当社のCLT製品が使用されている。
この時期仙台市で日本建築学会が行われており、これに併せての見学会である。学会に参加していた塩崎常務も別日程で参加、前号の当メルマガで報告している。技術的なことはそちらを参照戴きたい。
施主の三菱地所さん、施工の竹中工務店さんの担当者から、以下のような丁寧なご説明があった。
・コスト面からすべてを木造には出来ず、鉄骨との併用になっている。
・木材の加工精度は高く、鉄骨の精度を上回る。
・床の設置工事は極めて円滑に進み、1日見ていた工程が半日で済んだ。
・鉄骨の柱梁の間にCLTをはめ込んだ壁構造体は極めて強固で、実験データによっても鉄骨ブレースを大きく上回る。
・今見えているCLTの壁、床とも耐火上被覆されて木材は見えなくなる。
・但し「燃エンウッド(竹中工務店が開発した耐火集成材)」の柱は、きれいな木目がそのまま表しで残る。
質問が続いた。印象的な質問とその回答を以下に上げる。
・なぜコスト的に安いと言われる輸入材を使わずに国産材を使ったのか。
・特殊な原木でないといけないのか。
・スギで強度は十分に足りたのか。
三菱地所さん、竹中工務店さんの答え
・国内の森林資源が充実し、この資源を活用して森林や林業の促進に貢献したいと考えて国産材を使った。
・またスタートしたばかりの国内のCLT生産工場を発掘し、共に伸びていきたいと考えた。
・発注の直前まで設計がかかり、輸入材では工期に間に合わなかっただろう。
・設計仕様の確定までの時間を考えると、今後も国産材の方が対応し易いだろう。
・原木丸太はごく普通のものである。
・強度的にはスギでも十分であった。
現場では写真撮影禁止であったが、後日室内工事写真を戴いたのでお許しを得て以下に紹介する。
思い出に残る風景(昭和30年代初期)
父の製材工場では月に2回支払日があった。その日は工場、自宅前の道路に、早朝から丸太を積んだ馬車が何十台も並んだ。二輪のもの(馬主は横を歩く)、四輪のトレーラタイプ(御者席がある)などだが、馬一頭で引くのだから一台の馬車に積む量は大したものでは無かっただろう。それでも荷下ろし、材積計算、支払いなど結構な時間が掛かる。最終が終わるのは昼前だったのだろう。小学校への通学路なのでずっと並んだ馬車の横を通って学校に行った。
荷車には桶が二つ積んであって、一つには藁(わら)や草を5~6㎝くらいに切った秣(まぐさ)が、もう一つには「にごい(濁り?)」が入っている。にごいとは、小さく切ったサツマイモや、デンプン粕、屑野菜などをそれぞれの家の竈で煮たもので、ひょっとすると塩も足してあったかも知れない。言わば実沢山のスープである。秣が主食で、にごいは副食という位置づけだろう。
ちなみにデンプン粕とは芋デンプンをとった粕のことで、当時肝属郡内の町々に多くのデンプン工場があった。デンプン粕は永く放置すると悪臭がたつ。工場は操業に大量の水を使うことから川沿いにある。肝付川の汚染度がひどいと全国ニュースになったことがある。もらいに行けばいくらでも殆ど只で貰えただろう。
「痩せうんま(馬)ん(の)にごいくれ(喰らい)」という言葉があった。激しい労働を強いられた馬の中には、秣を食えず副食のスープたる「にごい」しか食べようとしないものがいる。しかし秣を食わないと馬は力が出ないのだ。ずらりと並んでいる馬たちは旺盛に秣を食べる中、中にはよう食べない馬もいる。持ち主はからかいや嘲弄の視線を浴びる、あるいはそれを口にする心ない者もいる。結構容赦がないのだ。恥ずかしく癪でもあるが、大事な大事な財産の駄馬がもう物の用に立たなくなったのではないかと、恐れと情けなさとを覚えもする。「痩せうんまんにごい喰れが!!」と罵り励ましながら、にごいの桶を取り上げて秣桶を、いやいやする飼い馬の鼻先にあてがうのだ。
長時間滞在するので馬は排尿、排便をする。尿は舗装ではない路面に吸い込まれるか、道路脇を流れている農業用水の川に流れていくが、道路上には大量の馬糞が残る。水分の加減が良いのだろう、積んでおくだけで馬糞はすぐ発酵を始めて、良い堆肥になるので人気がある。暫くすると取りにくる人が現れて路上には何も残らないのである。
畜舎の牛豚の糞尿をそのまま積んでもただ悪臭を放つのみで、いつまでも発酵しない。これに稲わら、枯れ草、鋸屑(のこくず、おがくず)等を混ぜて堆積するとすぐ発酵が始まる。多すぎる水分が調整されるからである。
水分を調整する材料として、鹿児島特有のしらすを使うのも良いと聞いたことがある。牛豚の糞尿にしらすを混ぜ込むと、「すぐに息をし始める」のだという。これらは成人して農家の人たちと呑むことになって知ったことどもである。
(代表取締役 佐々木 幸久)