メールマガジン第63号>やまたすく通信

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★【やまたすく通信(5)】

 「森林施業プランナー育成研修(地域実践研修)を受講してきました」

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 前回(10月)に引き続き、今回も研修ネタです。12月11日に大隅流域森林・林業活性化センター・県大隅地域振興局の主催の森林施業プランナー研修(地域実践研修)に参加してきました。

※「森林施業プランナー」および鹿児島県での内容については前回ご紹介しました(やまたすく通信4

 

 今回の研修は、前回理解した提案型施業(施業の必要性の説明や受委託に係る見積もりなどの施業プランを提示し施業を行う)について、具体的に大隅地域の人工林林分を対象にプラン書を作成してみようという目的の研修です。

 

 当日朝は降水確率7~80%となっていて、前夜にも「あー明日は雨かなー」と思いながら集合場所に。集まった受講生の皆さんとも「雨は降らずにもちそうかな、どうかな」と心配しながら、現場研修会場に向かいました。

釣り竿で円形区を取っているところ

輪尺で太さを測っているところ


 

 さて、現地3班に分かれて調査開始!!今回も各班に県の方がサポートについて頂きました。

 調査では、対象とする人工林に、どれだけの木があるか、本数、材積を見積もりたいわけですが、時間も人手も予算も限られている中で、全ての立木を調べることはできません(本当は調べたいところ)。そのため、写真のようにプロットを作って調査区を作って「標準地」を取り、全面積に展開します。

 今回は5.4mの釣り竿を使った方法で、0.01haの円形の中に何本の木が、どれだけの太さ(胸高直径)で、樹高がどれだけあるかを2か所測りました。この調査手法、なかなか曲者というか、実際のところ難しいのは、「どこを標準地に取るか」という点。これ一つでものすごい収穫量になる林分にもなり得ますし、全く採算の合わない林分にもなり得ます。最近では、レーザー測量等々で簡易に、即座に全ての立木を測る技術の開発が進んでいます。素材生産事業の見積もり精度を高めるためにも、低コストでそのような技術展開が進むことが望まれます。

 

 現地での調査終わり間際は、大抵の場合、「この山の施業はどう進めていくか~」といった議論になります。データを作る調査そのものも重要なのですが、一番大事なのはこの「林業に関わる人達同士での山づくりの方向性の議論」ではないかな、と思っています。そして、個人的にはこの時間が一番好きでもあります。

皆で「この山のここは~あそこは~」と議論中

 

 結局、現地会場では雨に降られることなく、無事に研修を終えることができました。その後、事務所に戻って調査結果の集計、収益や費用の積算作業を行いました。と同時に、その先の集計結果を予兆するかのように雨も降り始めました。。。

事務所で集計・積算作業

木材売上だけでは赤字、補助金で何とか賄う結果に


 

 事務所では、調査結果を集計し、費用を積算しました。簡単に言えば、間伐木の出てくる材積を計算し、木材売上と間伐事業に要した経費、費用補填として出される補助金を計算し、最終収支を見込みます。結果は図のとおり…残念ながら、補助金がなければ厳しいですね…という結果。搬出間伐事業の現状、厳しさを改めて確認した気持ちでした。

 また、この補助金の扱いも難しく、余った事業収支を森林所有者にどのように還元すべきか、補助金をどの費用までの補填とみなすか、という点、議論が分かれるところ。収支も調査結果に左右されるところにもなりますし、森林所有者に同意をいただくためにはどのようにすべきか…もう成長が止まってしまっているのではないかと思われる森林の場合、間伐ではなく主伐・再造林が必要なのではないか等々、様々な議論をすることができました。

 

 今後、市町村を中心にした森林環境譲与税や森林経営管理法に基づく施策で、この進め方と同じように進むのか、あるいは、また異なる進め方になるのかは分かりませんが、山を把握する、費用を積算するという点は基本として変わらない視点だと思いながら帰途に着きました。

 

 今回の研修も、調査方法や費用積算の技術的な側面はもちろん、大隅地域の森林の状況を知ることができたり、地域の林業事業者の方々や県・市町村の方とのコミュニケーションが取れたりと、大変ありがたい機会になりました。研修企画、準備、提供をしてくださった県振興局の皆さま、一緒に研修受講した皆さま、本当にありがとうございました。 

(早く本格的に林業を動かしていきたい 新永)