メールマガジン第7号>バイオマスシリーズ

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★【特集】バイオマスについて(7) 代表取締役 佐々木幸久
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総合的熱効率を追求するヨーロッパ、発電効率のみを追求する日本

ヨーロッパでは、自然エネルギーとして、太陽熱、バイオマスガス(熱分解とメタン発酵による)、木質系の焼却熱等が利用されています。

そして発電ももちろん行われていますが、主たる用途は「熱利用」で、「発電は従」というところが、我が国と大きく異なります。

現在我が国で計画されている、いわゆるバイオマス発電では、「発電効率」を至上命題としています。発電効率を上げるために、

  1. 発電所の規模をなるべく大きく、ボイラーを高性能(高温高圧)にする。
  2. 「復水器」を使用して、タービンの出口側蒸気を冷やす。

これらのことにより、確かに発電効率は大きく向上します。

復水器で冷却するとき、使用される大量の冷却水は、温排水として排出されます。これを再利用出来れば良いのですが、この温度がかなり低いために、エネルギー源としては利用価値の低いものにならざるを得ません。

しかも余りに設備の規模が大きいので、この大量の温排水を活用することは殆ど出来ません。

すなわち折角のバイオマスが持つ熱エネルギーを、発電にしか利用しないことで、全体的な「熱効率」を引き下げます。すなわち高い発電効率は、熱効率をある程度犠牲にすることで実現します。

 

ヨーロッパに学ぶべきエネルギーの完全消化

今回私達が視察した事業所は、どこも発電効率は追求していませんでした。

むしろ発電効率がある水準を超えると、困ったことになる、すなわちFITの対象から外れる、という仕組みになっています。

復水器を使用しないので、発電効率は10%程度しかないものの、タービンから排出される蒸気は、まだ沢山の熱エネルギーを持っているので、多くの熱利用の用途があります。また規模がそれほど大きくないので、エネルギーの完全消化が可能なのです。

近くにエネルギー多消費の工場があれば、最も効率よく熱利用が実現します。例えば製材工場があれば、燃料も得やすい上に、木材乾燥のために大量の熱エネルギーが必要なので、エネルギーセンターの立地としてはベストでしょう。今回見学した中では、熱利用生産施設として、木材乾燥、ペレット製造などが有りました。

 

5km圏内に熱(温水)が配達される

このような熱利用の製造施設が近くにない場合は、家庭や集合住宅、事業所などに給湯、暖房のための熱が配達されることになります。その媒体は水(温水)が使われますが、上水道に比較すると温度を維持するための配慮が必要なだけに、余り距離があると当然初期の施設コストが膨大なものになります。大体5㎞くらいまでが一般的なようでした。

このような形で、発電と熱利用を勘案して、総合的なエネルギーを利用効率を高めることは非常に大事なことで、我が国でも方向性の修正が求められる時期が早期に到来するように思われます。

 

どのような配管の構造や、敷設をしているのかを紹介します。

写真はSolarComplex社の資料より引用。

写真1 給湯管の置き場

写真2 給湯管の埋設


写真3 給湯管  

発電所にて 常時保管してある様子。行きの管と帰りの管が入っている

(代表取締役 佐々木幸久)