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★【特集】バイオマスについて(8) 代表取締役 佐々木幸久
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これまで5回にわたって、ヨーロッパの自然エネルギーによる電気、ガス、熱の供給システムなどについてレポートしてきました。
ツアーのほぼ最終行程の時期で、バイオマスボイラーメーカーのひとつ「シュミット社」と、薪ストーブ・薪調理台のメーカーである「チバ社」を見学しました。
この2社の報告を以て、シリーズバイオマスエネルギー、ヨーロッパ視察編をひとまず閉じることにします。
温かい薪への想い
この両社の入り口モニュメントが、いずれも薪を使って作られています。
(【写真1】シュミット社、【写真2】チバ社)
厳しい冬の凍えから身を守ってくれる薪、煮炊きに用いて飢えをしのぐだけでなく、穀物や肉をこの上ない美味にしてくれる薪。
このモニュメントを見ていると、人々の薪への視線が限りなく温かいものであるように感じます。昔からの恩義有る薪への、愛情と感謝の気持ちを変わらず持ち続けた人たちがいることを思いました。
またデザインもシンプルながら見事で、私達の生活や意識から遠ざかっていた薪について、鮮烈な印象を与えてくれました。
シュミット社
ヨーロッパでの熱供給事業は、熱源として太陽熱とともに、チップを燃料とするボイラーが最も多いだろうと思います。いくつかある有力メーカーのうちの1つがシュミット社です。
この会社製品の日本国内販売総代理店をしているのが、トモエテクノ社で、同社の岡本社長が今回視察のバイオエネルギー部分の視察日程を作ってくれました。
我が国ではこの会社製品が、圧倒的なシェアを持っています。燃料としてはチップ、ペレット、薪などを使ういろいろなタイプがあります。熱効率が高く、高度に制御された機構を持っています。そして耐久性が高いのも特色です。国産でもいくつかメーカーが出てきましたが、私の知るところ残念ながらその性能、熱効率いずれをとっても、シュミット社を初めとするヨーロッパの製品に叶うものは無いように思います。これらのレベルに到達するには、これからかなりの時間を要するものと思います。
シュミット社はスイスチューリッヒの東方約50kmのエシュリコンという小さな町にあります。今回岡本さんのお手配で、この町の近くにあるホテルに3泊しました。小さいながら設備も良く、朝食もおいしいとても良いホテルでした。
エシュリコンはこじんまりした小さな町ながら、景色も良く、電車も通るなどインフラも整っています。小高い丘の上に立派なレストランがあり、ここで昼食をご馳走になりました。私は遠慮無く鹿肉のソテーを、赤ワインと共に戴きましたが、幸せな時間でした。
チバ社
ヨーロッパ製の薪ストーブはデザインも良く、性能面でも優れています。私もスウェーデン製の暖炉を二十数年使っていますが、満足しています。
今回視察したチバ社の創業は古く、1848年設立とのことです。薪焚きの調理台を作っています。設立後半世紀の後から薪ストーブも作るように成ったとのことでした。
最新のタイプは実に機能的で、魅力的で、本心から欲しくなりました。またストーブにしても調理台にしても、燃え方が違い、炎の色を見ても完全燃焼しているのがわかりました。
薪の長さや大きさがそろっていて、よく乾燥しているなど薪の品質が良いこともあります。もう一つここで聞いたのが、「3つのT」ということでした。
<良い燃焼のための三条件「3つのT」>
①Temperature 温度
②Time 時間
③Turbulence 乱流(空気との混合状態)
薪の品質が良いと書きましたが、専用の「薪製造装置」が有ることを後日岡本さんからご教示戴きました。(【写真6】)
薪の普及のためには、きちんとしたものを作って、それをしっかり乾燥させて供給することが重要だと思います。
ヨーロッパの地方の魅力
2つの工場とも、鉄を切り出し、削り、孔をあける、溶接する等、どちらかと言えば汚れることの多い種類の加工場ですが、その整理整頓、清掃ぶりは実に徹底していて、まさにゴミ一つ無い、という感じでした。
このような小さな村に、シュミット社、チバ社などのような世界中に販売出来るような優れた商品を作る中堅メーカーが存在するということが、ヨーロツパ地方都市の強みと思いました。
街の中心部が分散化、ドーナツ化せずに、昔ながらの教会や街並みの商店街を中心に比較的集中して人が住んでいるように見受けられます。都市部の生活を特に好むということもなく、ごく当たり前に人々が地方に暮らしていて、その地方に中堅のメーカーなどがしっかり根付いている、そんな印象を持ちました。
(代表取締役 佐々木幸久)