━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★【会長連載】 Woodistのつぶやき(47)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
岡山から松山へ移動
岡山市の吉備津神社、吉備津彦神社を参拝して、岡山駅から特急しおかぜで松山へ向かう。この列車は「瀬戸大橋線」を通るが、これまで行きと帰りを合わせると十数回も乗っただろうか。瀬戸内海の海や島々の景色を愛でつつ、缶ビールと駅弁、贅沢な旅である。松山駅に夕方到着、夕食も軽めに駅近くのホテルで過ごし、翌朝は松山から列車で内子町に行き、その夜は伊予大洲に一泊して本命の高知市へ向かう予定。
内子町河内の屋根付き橋「田丸橋」
木造の橋は耐朽性に課題があり、一般的に保守に手間や費用が掛かると言われている。ところがこれに屋根を掛けると話が違ってくる。スイスの古都に何百年か前に建設された木橋があると聞いて、昔見に行ったことがある。これが屋根付きで、小屋組みの梁間に古画が掲げてあり、実に美しく古めいて優雅なものだった。このように木橋も屋根をかけるなど配慮すると長い寿命を得るのである。
内子町の屋根付き橋は、江戸時代からあって架け替えながら今でもいくつか残されている。話には再々聞いていたが未見であった。場所は内子駅から少し離れているし小雨模様でもあったので、駅からタクシーで向かった。
小雨の中タクシーを降りて、入り口付近からの遠景、近くからの姿、内観、方杖で橋げたを支える構造を見る。至って質素な素朴なつくりである。
橋の現状 川下側は健全だが、川上側は一部劣化が進んでいる。何らかのメンテナンスが必要なレベルであると思われる。
文化財などの指定を受けている。
内子町まち歩き
屋根付き橋を見学中待ってもらっていたタクシーで、内子町の街並みまで行く。観光案内所でもらった「うちこまち歩きマップ」を見ながら、町並みを歩く。「上芳我邸・木蠟資料館」、「商いと暮らし博物館」、「内子座」などを見る。歩数計を確認すると一万数千歩。
内子町は江戸期藩政時代からから櫨(はぜ)、生糸、藍などの生産が奨励され、豊かな町だったようだ。これが明治になって輸出で莫大な桁違いの富がもたらされる。特にこの地では木蠟産業が爆発的に発達した。
木蠟資料館の説明板に次のような記述がある。
「ハゼが内子地方に植えられた1700年代から次第に生産が増え、蠟搾(ろうしぼ)り、蠟晒(ろうさら)しの技術革新と、明治期に入り文明開化とともに需要が伸び、海外の市場が拓(ひら)けたことから、マニュファクチャーとして産地化が進んだ。
内子で最も栄えた本芳我家は、明治33年(1900年)パリ博覧会の白蠟(はくろう)出品の説明書に、使用者67名、一ヶ年の生産150万斤(900トン)、価格22万5千円(現在の貨幣価値から推定すると数十億円だ)と記載している。
巨額な利益を得、その暮らしぶりは贅を尽くしたものだった。」
この芳我家、その分家やそのまた分家が、それぞれ木蠟事業を行いおおいに繁盛したようだ。本家の芳我家が本芳我家、ほかに上芳我家、中芳我家、下芳我家など呼称された。このうち上芳我家が木蠟資料館として整備され、広く公開されている。
やがて木蠟は石油からの製品に次第に市場を奪われていくのだが、明治から大正にかけて、その繁栄は直接的には芳我家本家やその分家などにもたらせられ、そして町の商工業や町民にもその余慶は大いに及んだことだろう。その頃の富の名残が町並みに濃厚に漂っているように思う。古い家が良く保存され、また町や町民もよりよく活用しようと努めているように感じた。コロナ禍が無ければ恐らくもっともっと賑わいがあったことだろう。
大森屋という和蝋燭(ろうそく)の店で買い物をした。江戸後期から続いている店で、ハゼを使った和蝋燭を自分たちの手で作っているのは、ここを含めて全国で3軒しかないという。
◇大森和蝋燭屋 https://www.omoriwarosoku.jp/
ご夫婦でやっているらしい「洋食マザー」という店で昼食にした。食事と生ビールを注文、最近外食の際のいつものことで、パン(もしくはご飯)をいらないと断る。ここでちょっとした感動の一事があった。ピールがきてから、「ご飯の替わりに、ビールの当てにどうぞ」と、チーズや燻製など4品ほど乗った小皿を出してくれたのだ。最近は外食でご飯抜きで頼んでも、殆どの場合定食の価格は変わらない。一度なぜなのかどこかで聞いたことがあるのだが、「うちはお代わりも無料なので」と言われた。なるほどと思ったのは、昔に比べるとご飯の地位が大幅に下落したということだ。釈然としないまま以来言われるまま払っているが、それだけにおかみさんの心遣いというかセンスが嬉しかった。
内子の町並みが続いている
本芳我家
下芳我家
下芳我家
上芳我家・木蠟博物館
主屋、炊事場、木蠟資料展示館共に、見ごたえがある。
主屋の室内の様子
商いと暮らしの博物館
内子座
二階席から
(佐々木 幸久)