社内報「やまさ」 1993年(平成5年)4月号 巻頭言
平成4年度工事を終えて
大型木造建築事業部(大断面集成材の製造及びそれを用いた建築)では、平成4年度(平成4年4月より平成5年3月まで)の公共工事が2月末をもってほぼ終了しました。昨年度のほぼ倍増で、民間工事も含めると約30件、面積にして約2万m2に及びました。この間工事の錯綜から、ご迷惑をかけた面があったのではないかと思います。この場を借りてお詫び申し上げます。
多くの方々に御支援を戴いた結果、このように多くの木造建築を施工できた訳で、感謝のほかはありません。この実績を基に現在でもさらになお引き合いを戴いており、一層の質の向上と、納期の短縮化に努めたいと考えています。
さて現在の大型木造建築事業部の仕事は公共工事が主体であり、施工の時期が秋から冬にかけて集中します。工場、現場ともにこの冬かなりの無理をしました。どうにか2月をもって無事に終了出来たとき、本当にほっとしました。担当者達も私以上にほっとしたことでしょう。
ただこの間ずいぶん無駄も多く、問題点があったように感じましたが、仕事さなかになまじ工程や仕事の仕方を変えたりして、不慣れから仕事が立ち行かなくなることを恐れました。とりあえず無駄が少々あっても、皆が馴染んだ方法で何とか仕事が終わってくれたら良い、そして仕事が無事終わったとき、間髪をおかず問題点の検討会を行おう、そうみんなと話し合っていました。
問題点検討会の実施
そのようなことで、それこそ工事が終わるや否やという感じの先月の2月27日、28日、ちょうど30名、佐多町の町営国民宿舎「佐多岬荘」に集合し、研修会を実施しました。会合は随分中身の濃い、有意義なものになりました。内容については後ほど触れることにします。
そしてこの「佐多岬荘」で行ったことについては少し訳があります。昭和50年(事業年度でいえば昭和49年度)に、我社にとって一つの歴史的なと言ってよい会合がありました。知る人も少なくなっているので約18年前にさかのぼってみることにします。
昭和46年に企業進発式と銘打って中期計画の発表会を行い、以来会社のある程度の発展が続いたのですが、組織の行き詰まりや、私達幹部の能力の伸び悩みに、先代社長としては何かもどかしさを感じていたことは想像に難くありません。
そういう時、先代社長の号令で、佐多町の国民宿舎、古い時分の「佐多岬荘」に中堅幹部全員の数十名が集まりました。はじめての旅館での大々的な研修会でもあり、新年早々ちょっとうきうきした気持ちもありました。
ところが先代社長はひそかに強烈な爆弾を用意していました。
その詳細は社内報の昭和50年4月号、創刊間もない第5号の先代社長の巻頭言を読んでください。
私はいまこの時、あの時の精神の昂揚を、少しでも皆と分かち合いたい気持ちがあったのです。
検討会の内容
問題点検討会が始まって、先ほど述べた18年前の故事来歴をまず紹介しました。
我々も新事業をスタートし、創業の無我夢中の時期から、幸いにも各方面からの御支援を得て、事業として形を整えようとしてきた今、まさに正念場にあります。
平成4年度工事を終えてみて、ずいぶん色々問題点がありました。そしてそれらの問題点を見ていて私が感じたのは、これらの問題点は、原因が外部にあるのでなく、80%以上は社内にその原因がある、ということです。
極めて極端な例をあげれば、何か問題があって処理に大騒動して、さて何が原因かと思えば、連絡ミス、打ち合わせ漏れ等ということがよくあります。或いは例えば、組織の問題点もあげられます。組織は受け持ちの仕事をきちんと遂行していくのにはまことに効率がよいですが、受け持ちがはっきりしない仕事になると途端に効率が悪くなります。部門そのものが出来て間もないし、色々問題点が出てきていました。
今回の検討会に先立って、問題点についてのアンケートを寄せて貰っていました。このアンケートをまとめた物を主軸に、まず自部門の問題点を自分達で評価検討し、それと他部門の人に自分達の課の事を評価して貰ったものを重ね合わせるという形で討議を進めました。深夜まで時間を忘れて検討が続きました。思った以上に自他の評価に落差があって、深刻に考え込んだ管理者もいました。
嬉しく思ったことは、参加したメンバーの多くが、確かに問題点は外にあるのではない、自分達の内にあるということを認識してくれたことです。例をあげると「設計課がもっと標準化を図ってくれれば仕事がしやすいのに。」ということをかねがね言っていたけれども、実はそれは自分達の、例えば製造課の課題であり、製材工場の課題であることもわかってきました。そして問題解決には、部門間の十分な連絡調整が必要な事がわかってきたように思います。
今後の課題
部門間の連絡調整が極めて重要であることが、改めて確認されたことに併せて、概ね次のような事が確認されたように思います。
これらについては、3月に打ち出した具体的な方向に基づいて、実現に向けて取り組んでいく決意です。
最近、特に非常に大きな木造建築物建設の動きと、住宅への集成材構法の活用の動きとがあります。本格的な木造建築の時代の到来を予感させるに十分です。先代社長の先ほどの巻頭言の最後の一節「一大飛躍の足場になることを望みます」を借りて、本稿を閉じます。
(佐々木 幸久)