第20回 霧島市 「嘉例川駅から天降川沿いの楽しみ」
お盆も過ぎたのに、南国鹿児島には秋風は吹かず、身体に応える酷暑が続いている。
こんなときは清流沿いの温泉で、涼やかな川風に吹かれながら露天風呂に浸かれば、体調もおおいに整い、明日への活力も湧くに違いなかろうと、日帰りの湯治に出かけることにした。
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鹿児島空港から県道56号線を東に10分ほど下ると霧島市隼人町嘉例川の集落だ。県道から少し左に入ると空港の最寄駅、JR肥薩線嘉例川駅がある。せっかくなので、ここに立ち寄ってみよう。
記念碑には、この駅舎は明治36年(1903年)に建てられ、明治期の遺構として、国の登録有形文化財に指定されたと記されている。ホームの木造の軒は深くかけられ、120年余りにわたって、柱や梁、壁、窓やベンチなどを風雨から守ってきた歴史と風格を感じさせる。内部の事務室や操作設備もきれいに保存され、往時の姿が残っている。線路に沿って植えられた桜並木は、春には見事な風景を見せてくれることだろう。
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嘉例川駅をあとにして、国道223号線との交差点を右折し、天降川に沿って下るとすぐに今回のメイン「日の出温泉・きのこの里」に到着する。空港から直接来れば15分足らずである。天降川の左岸に母屋が建ち、その下流側に30台はゆったり停められる広い駐車場が設けてある。霧島市観光協会によると泉源は1811年に発見されたというから200年以上の歴史を持つ温泉なのだ。
母屋は木造2階建てで、2階部に玄関、その奥がカフェになっている。天井は丸太を活かした吹き抜けだ。テーブルは窓際に置かれていて、天降川渓谷を見下ろしながら、飲み物を楽しめる。ここで、湯守の永松さんからこの温泉と建屋のお話を聞くことができた。
もともとは川沿いに湯舟があるだけの温泉だったようだ。その後、少し川上側に湯屋が建てられていたが、30年ほど前に今の母屋が新築され、古い湯屋は解体されたそうだ。
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永松さんのご案内で、カフェの窓から別棟になっている湯屋を見ると、屋根に長い鳩小屋がしつらえてあり、湯気を逃すガラリになっている。浴室は自然換気が効いているとのことであった。
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階段をおりて、湯屋に向かう。成分表を読むと泉質は炭酸水素塩泉。切り傷、やけどに効くとある。上流の塩浸温泉、ラムネ温泉と同じ泉質のようだ。早速浴室に向かう。一坪ほどの湯舟がふたつ、ぬる湯とあつ湯に分けてある。洗い場は広いがシャワー付きのガランは2箇。
窓の外の木製デッキには水風呂が置いてあり、蛇口から地下水が掛け流しになっている。デッキからの渓流の眺めは申しぶんない。川風が入ってくるので浴室内も思いのほか涼しい。あつ湯と水風呂を何度か往復すると、暑さでなえ気味だった気分もしゃんとなり、汗も引いてさっぱりとした心地になってきた。こういう快さを「整う」というのですなぁ。
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湯あたりに注意するよう張り紙がしてあったので、ロケーションを堪能しつつ、長湯にならない程度で浴室を出た。
さて、日帰りとはいえ湯治に来たのだから、元気が出るような食べ物を買って帰り、自炊しなければ完結しない。昔からの湯治場で有名な妙見温泉街に下ってみた。ここに、自炊に使う食材を扱っている田代鮮魚店がある。特に川魚の品揃えが素晴らしいお店だ。
外の生けすには鯉、鮎が入っていて、これを見るだけでも気持ちが上がる。店内の冷蔵ケースには、魚の刺身や切り身、薩摩揚げなどがほどよい量のパックに容れて並んでいる。目移りしてしまうのも楽しみなのだが、元気の素と言えば鯉こくははずせないので、まずは鯉のあらを、刺身は鯉の洗いと、ここにしか置いてない鯉の皮を注文した。そして、この時期ならではと奮発して、鮎の背ごしを造ってもらった。
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これだけ買いそろえれば、豪華な川魚料理に舌鼓が打てるだろう。包装にも氷を入れてあって持ち帰るにもありがたい。
我が家で湯治を完結、納涼することにしよう。
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日の出温泉・きのこの里:火曜日定休 営業時間10時から20時 大人300円
田代鮮魚店:火曜日定休 営業時間9時30分から17時
参考:霧島市観光協会HP
Wikipedia 他
(M田)
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しよ (月曜日, 26 8月 2024 16:46)
毎回楽しく読ませてもらっています。
空港の近くにこんなところがあるとは!
今度帰省の際に寄ってみようかと思います
けんぞう (月曜日, 26 8月 2024 17:20)
嘉例川駅は去年帰省の際に立ち寄ってみました。
歴史を感じる雰囲気のある素敵な駅でした。
こうしろう (月曜日, 26 8月 2024 20:47)
7〜8年前に母と一緒に撮り鉄の真似事で嘉例川駅に行った方があります
きのこの里もgood
あの頃確か入浴料が200円くらいだった記憶が!!
しかまゆきこ (水曜日, 28 8月 2024 19:56)
いやいや、嘉例川駅に日の出温泉とは!そりゃあ、整ったでしょう。私も今、直ぐにでも飛んでいきたい!あのお湯に、あの川の眺めで、300円とは、なんと貴い!鹿児島の、いやいや、日本の宝ですね。
で、なんと、鯉と鮎のご馳走とは!田代鮮魚店は知らなかったなあ。不覚。その贅沢な湯治でたっぷり命の洗濯されたことでしょう。羨ましい限りでごわす。