M田のぶらり旅・「冬もまた楽し 復活 手打ちそば蛍」

第25回 霧島市 「冬もまた楽し 復活『手打ちそば蛍』」

 霧島温泉郷の南側を山々の風景を楽しみながらゆったりと走るドライブにはもってこいの道がある。県道2号を霧島市永水付近で北に折れ、霧島神宮駅、みやまコンセールを左に見ながら、国道223号線を横断して、湧水町栗野まで約35km、霧島グリーンロードと呼ばれている牧園広域農道だ。北に見え隠れする霧島連山の眺めはことさらすばらしい。

 国道223号を栗野方向に横切るとまもなく霧島市営関平鉱泉所の道の駅がある。ここのすぐ上にある「関平温泉」から湧水町に向かう道すがら、点在する温泉に立ち寄ってみるのもまた楽しいことだろう。

 大寒を過ぎ冬も本番、南国鹿児島にも雪が降る。寒さ厳しきこの時季には温かい手打ちそばが食べたくなる。ふうふう湯気を飛ばしながら、つゆまで全部飲みたくなる。そんなときお勧めなのが「手打ちそば蛍」なのだ。関平鉱泉所から湧水方面に2km、道ばたの電光看板が目印だ。

  

 

 看板から100mほど径を上がった左手、小川を渡るとシンプルな切り妻のお店が見える。

  

 

 左に10台ほど停まれる駐車場。その先に、可愛い山羊たちと、背中の白い猪が愛想を振りまいているのが微笑ましい。紺暖簾をくぐると、すぐ左手が厨房になっており、旦那さんとおかみさんが迎えてくれる。右手には小川の上にしつらえられたデッキにテーブルが置かれ、夏場はクーラーいらずの涼風が心地よい。ここでおろしそばをいただけば、汗がすーっと引いていくこと間違いない。

 

 

 梁桁を現しにした店の奥には、きちんと整頓の効いた二坪ほどのそば打ち室があって、旦那さんが朝からその日の分のそばを打っているという。この部屋と、思いのほか広い打ち台と長い麺棒がお店の品格を感じさせてくれる。

 おかみさんから湧き水を汲んでいるというお水をもらってメニュー表を見る。

 

 

 冷やしおろしそばといきたいところだが、霧島山麓、外は雪、ここは鴨と山芋をのせた温かいそばを大盛りで頼むことにした。

 

 

 細麺のそばは、十割といえども切れてしまうことなく、するすると喉ごしがいい。燻製された鴨の香ばしさととろろ芋で、からだの芯から暖まっていく。小皿に添えられた柚のみじん切りを振りかければ旨さも倍増だ。大きなどんぶりにたっぷりの透き通ったお出汁まで完食してしまった。

 

 店のテーブルひとつひとつに、1冊ずつ小さなノートが置いてある。そこには、平成の年代からお客さんたちがしたためた、自分のこと、旅のこと、お店のこと、お蕎麦のことなどが記されていてる。このノートには、お店とお客さんたちとがいっしょに歩いた歴史が刻まれていて、そのことを旦那さん夫妻がとても大切にされていることが伝わってくるのである。

 兵庫からUターンして、生家の跡を整備して始められたという「手打ちそば蛍」。実はこのお店が2年近く休業していた時期があった。3年ほど前にメインロードである牧園広域農道が崖崩れで関平鉱泉所から先が交通止めとなり、それとほぼ同時期に旦那さん、おかみさんともに体調を崩されてしまったそうだ。25年近く続けてきたこの店も閉店やむなしの考えも浮かんだのだが、旦那さんが土日だけの営業で、メニューもそばだけならお客さんを受けられるんじゃないかと判断をされて復活したのだとお聞きした。

 

 再開されるのを心待ちにしていた多くのお客さんが喜んでおられることと思います。まさに復活の味ご馳走さまでした。

 

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手打ちそば蛍:霧島市牧園町三体堂1811-4

       営業:土曜・日曜 10:30~15:00 (売り切れ次第終了)

       TEL:0995-78-2606

       インスタグラム:https://www.instagram.com/qingzi9855/ 

(M田)

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コメント: 4
  • #1

    永吉です (金曜日, 31 1月 2025 10:52)

    綺麗な景色と美味しいそばいいですね�️私も正月に初めてそば打ちをしましたが大変でした。短く太い麺になり、不評でした。また、チャレンジします�✨

  • #2

    けんぞう (土曜日, 01 2月 2025 08:46)

    趣のある佇まい、雰囲気の良いお蕎麦屋さんですね。喉越しの良い二八蕎麦も良いけどやはり九州の少し甘めのつゆで十割蕎麦が一番好きです。年越しも取り寄せしています。(^^)
    このお店も長く続けていただきたいです。

  • #3

    しょう (火曜日, 04 2月 2025 11:53)

    毎回のことだが、コラムを読む度に心から食べたくなる。
    自由に書き込めるノートは、かつての喫茶店などにはよく置いてあったが、この令和の世では珍しいかも…。そのノートも読んでみたくなった。
    お店のご夫婦、お身体を大切に長く続けていただきたい。

  • #4

    徳田 新之助 (水曜日, 05 2月 2025 14:23)

    趣のあるいいお蕎麦屋さんですね!
    そばももちろんですが、おいなりさんも期待できそう、、
    行ってみます(^^♪