M田のぶらり旅・名古屋で鍛えあげ、鹿児島に広めた中華料理店 「富久はる」と雄川の滝を探す

第27回 南大隅町 名古屋で鍛えあげ、鹿児島に広めた中華料理店 「富久はる」と雄川の滝を探す

 春の彼岸も過ぎ、いよいよ春本番の時季を迎えている。大隅半島では、白木蓮の花びらが散り終わり、海沿いの県道を走ると、つわぶきの新芽を摘み取っているご婦人方の姿をよく見かけるようになった。山ではそろそろタラの芽も膨らんでくるだろう。

 そんな楽しみにあふれた海端の道も山辺の路も身近なまち、南大隅に中華料理の店「富久はる」はある。

 美味しいと評判の小さなお店を探して、知らない街なかを歩き回るのは、子供のころ友だちとわくわくしながら遊んだ宝さがしにも似ている。しかしながら、このお店は、山の中の一軒家だ。こんなところに中華屋があるのかという不安が先に立つだろうが、本当にあるのだから、ぜひ心落ち着けて探してほしい。

 

 

 鹿屋市吾平町から佐多方面に向う肝属グリーンロードを、国道448号線との交差点を越えて1㎞ほど南下したあたりに箇条書きで「・ギョウザ ・シュウマイ ・焼きそば――富久はる」と矢印の付いた地味な看板が遠慮がちに立っている。まずは、この唯一の目印を見逃さないことだ。

 矢印の方向に小径が伸びている。この径を100mくらい進むのだが、途中には民家が2軒ほどあるから、間違えて侵入してはいけない。林の中、「中華料理 富久はる」という看板が見つかるはずだ。ごく普通の住宅の手前に切妻の店があり、前庭は3、4台停まればいっぱいになりそうな駐車場になっている。

 店の建屋には、手前に厨房と6席掛けテーブルがひとつ、左奥にもう一間あって、4人掛けのテーブルが置かれている。つまり10席で満員となる。

 厨房のサッシ戸を開けると、マスターが思いのほか威勢のいい声で、「こんな山奥までお越しいただいてありがとうございます!!」と笑顔で迎えてくれる。たどり着けた安堵感はひとしおである。

 マスターは、中華鍋を振りながら、接客係も兼務しているから、忙しい。メニューと伝えたいことは厨房の壁に味わい深く書かれているのでよく読むと良い。しかし加えて、彼はとても話好き、聞き好きなのである。

 

 

 早速、道路沿いの看板に箇条書きされていた「・ギョウザ ・シュウマイ ・焼きそば」をオーダーしてみた。

 


 

 餃子は、ニラを香り付け程度に入れたキャベツたっぷりの餡が見事に包まれ焼かれている。自家製のたれとラー油でいただく。焼売はひと口大に切ったキャベツと一緒に蒸してあり、キャベツに焼売のしっかりと練られた肉餡の香りが移っている。こちらは辛子醤油で。

 そして、焼きそばは特注の麺にはほんのりと塩味がついており、麺の上に乗っている濃い目に味付けされたてんこ盛り野菜と混ぜながら食べるのがお勧めとのこと。どれも塩辛さは抑えられていて、柔らかい味付け。血圧の気になる向きにはありがたい塩梅に仕上げてある。

 

 鍋を振りながら、麺を茹で、蒸し器を覗いては、マスターはいろいろな話をしてくれる。この日は、名古屋市南区の食堂で長く修業をしたこと。鹿児島市に帰り、紫原の放送局の近くで店を開き多くのお客さんに恵まれたこと。20年ほど前に親御さんの介護をするために生まれ育った故郷に戻って、この建屋で餃子と焼売の冷凍販売にむけた作業所を始め、やがて食堂を開いたいきさつを、少しハスキーな声で聞かせてくれた。

 名古屋時代の話の途中で、こちらが山佐木材に所属していることを伝えると、「修行していた店に、高山の山佐の佐々木さんという方が時々見えて、食事とビールを召し上がっていらっしゃいました。根占も同じ肝属郡なので同郷とういう思い入れでよく覚えています。眼鏡をかけたやせ形のかたで、作業服を着ていたこともあったと思います。」と驚きの思い出話をしてくれた。店を訪れていたのはおそらく、佐々木幸久会長ではないだろうか。餃子をつまみに瓶ビールを吞み、ぬる燗の酒を追加するようすが目に浮かぶようだ。亡くなったことを伝えると、とても残念がってくださった。

 たぶん会長も食べていた名古屋仕込みの中華をおいしく完食し、持ち帰りの餃子と焼売をもらって店を出ると、わざわざ厨房から出て車を見送ってくれた。

 マスター、料理もお話も良かったです。ご馳走様でした。

 

 店をあとにして、肝属グリーンロードに戻り、2分ほど南下すると、「雄川の滝上流展望所」入り口交差点があり、これを左折して1kmで展望所の大きな看板が立っている。150段くらいのしっかりした階段を下ると、流れ落ちる水流と滝壺を見下ろせるデッキが設えてある。大河ドラマ「せごどん」のオープニングに出ていたあの滝を真上から覗き込める迫力の仕掛けだ。

 

 

 よく晴れた午後には、碧い滝壺、白い瀑布と水しぶきの虹も見ることができる絶景のポイントだ。真下の滝壺近くに設置された展望所にはない、思い切りの良い清々しさが味わえることだろう。ここもぜひ探してほしい。

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富久はる:肝属郡南大隅町根占川北9362-1

     電話 0994-24-4380(混雑防止のため予約の電話を入れてほしいとのこと)

     店主 牛牧博文さん 

 

※この店を教えてくれた人:A社長、M部長

(M田)

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コメント: 3
  • #1

    徳田 新之助 (金曜日, 04 4月 2025 15:23)

    日頃の行いがいいと、良きご縁に恵まれるのでしょうね。
    お店も店主さんも料理も良さげな富久はるさん。
    そろそろマイナスインエネルギーも枯渇してきたので、次のドライブ先は南大隅町にします。

  • #2

    しよう (土曜日, 05 4月 2025 22:48)

    いつもの美味しそうな食レポ(焼きそば食べてみたい^^)もさることながら、今回はちょっと人情味溢れる話題で、会ったこともない食堂のご主人や山佐の会長さんの人柄が偲ばれる、ほろっとする話でした。

  • #3

    けんぞう (日曜日, 06 4月 2025 13:12)

    普段何気なく訪れている場所が、実は誰かとの共通の場所だったり、思いがけない再会の場になったりすることがあるのだと思うと、日常の中にも不思議なご縁が潜んでいると感じます。
    また、中華食堂という身近で温かみのある場所が、その縁を引き寄せたのだと思うと、食の場が人の心をつなぐ力を持っていることにも気づかされました。偶然が重なって再び出会うこと、それが自然な形で笑顔や会話につながる様子は、とても温かく、ほっこりする話であり、こんな縁を大切にしたいな、と思えるエピソードでした。
    いつも美味しそうな料理ばかりで羨ましい!