M田ぶらり旅「春の低山を楽しむ 肝付町甫与志岳の花散歩」

第41回 肝付町「春の低山を楽しむ 肝付町甫与志岳の花散歩」

 季節が春から初夏にかわるころ、肝付町高山地区の南側に連なる国見山系に登りたくなる。山系と言っても1000mに満たない低山の連なりなのだが、天気が良ければ西には鹿屋から錦江湾(鹿児島湾)、東には志布志湾から太平洋への眺めを楽しむことができる。とくに登山道沿いの植物が次から次へと花を咲かせるこの時季は、登る楽しみがいっそう増してくるようで、一年を通して、登山者の数が最も多くなっている。

(※参考YAMAP)

 

 

 そんな訳で、菜種梅雨の合間、曇り空ではあったが、一応雨具も用意して登ってみることにした。高山地区から県道542号を南下して、岸良姫門(ひめかど)集落を経て、午前9時に登山口に到着。気やすめの屈伸運動もほどほどに登りについた。

 この山には、登山口から尾根道までやぶ椿が茂っていて、登り径には赤い花が絶えることなく落ちている。登山道脇の朽木の下にギンリョウソウ(銀竜草)が淡い姿を見せていた。茎も花も半透明で下向きに咲く、不思議な姿の植物に、ユウレイタケ(幽霊茸)の別名がついているのもうなずけるような気がする。

 

 

 左手に静かな沢音を聞きながら進むと、道がきつい登りに差し掛かるあたりから、綿帽子をかぶったような形の白い花をつけた低木が増えてくる。大豆くらいの赤い実を残したままのものもある。ミヤマシキミ(深山樒)の小さな十文字の花が緑の葉先に集まって咲いているところだった。

 


 

 尾根道までのおおよそ1時間は、登りに慣れていない身には、休み休み行かないと息が切れてしまうほどの勾配で、ロープの助けも要るような急登も2、3か所待っている。

 登り進む足下に、小指の爪ほどの大きさで鈴のような形をした白い花がこぼれ落ちている。見上げるとアセビ(馬酔木)の花穂が盛りを過ぎたところだった。里では卒業式のころに満開のこの花を見ることが多い。

 

 

 登山口から1時間10分ほどで甫与志岳頂上と黒尊岳との分岐にたどりついた。ここから左に折れるとすぐに頂上に出る。山頂はゆったりとした花崗岩の平場で、お茶を飲んだり、お昼を食べるにはもってこい、晴れた日は展望も申し分ない。今回は雨の心配もあるので頂上での休憩はおあずけにして、分岐から右へ折れて、尾根道を黒尊岳へと進む。小径の端に濃い緑の葉を広げるカンアオイ(寒葵)の仲間が密かに陣地を広げていた。どの株も、とても地味でくびれた花をいくつか、その茎の根もとに咲かせている。

 

 

 標高か、用土の違いによるのかは分からないが、分岐から200mも離れると、その姿を見ることができなくなってしまい、かわって、なよとした姿を見せてくれたのはショウジョウバカマ(猩々袴)だった。猩々(お猿)の名前が付いているのは黄色の花びらが赤く縁取りされているからだろうか。調べてみると、花の赤い種類があってこの和名の根拠になっているようである。

 

 

 尾根道を歩くこと1時間ほど、右手に大きな岩が鎮座している。この岩の上と、北側の斜面に紫にちかいピンク色の花群が見えてきた。アケボノツツジ(曙躑躅)である。花の色に個体差があるようで、岩の上の花は紫が強く、北斜面には淡い花が多いようだ。その名のとおり、夜明け前に現れるビーナスベルトの彩りだ。

 満開の時期が年によって前後するうえ、咲いている日かずの短いこの花を、八分咲きのときにゆっくり堪能できたのは幸運だった。

 

 

 ここから同じコースを引き返し下山する。戻りにかかるころになって、雨粒がポツリと落ちてきたが、急ぎの昼食をすませたあとも、下山し終わるまでは何とか降らずにもってくれた。

 13時30分登山口到着。往復4時間、花を観ながらの散歩遊山でした。低山の花々とぎりぎりのお天気、ありがとうございました。

 2、3日後の筋肉痛を少し心配しながら、帰路についた。

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参考:南方新社刊 大工園認著「野の花めぐり」春編、夏編

   保育社刊 「原色日本植物図鑑・木本編Ⅰ」「原色野草観察・検索図鑑」

   小学館刊「万有百科事典19 植物」

   九州大学宮崎演習林「あかぎ通信」

   YAMAP登山情報「甫与志岳」

登山日:2026年4月9日

(M田)

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コメント: 4
  • #1

    西大路のさん人 (金曜日, 05 6月 2026 15:41)

    山はいいですね。登りはしんどいけど、山頂での満足感、最高‼️しかし、そろそろ、遠くにありて想うもの、になりつつあるなぁ�日本で一番低い山は天保山だったかな?

  • #2

    しよう (金曜日, 05 6月 2026 16:11)

    元々植物に対する見識がないからか、山に登る時は、草花にはほとんど目を向けずひたすらピークを目指していました。
    今回の記事を読んで、山行の別の楽しみ方を再認識しました。若い頃はさほど気にならなかったのですが、今、来し方を振り返ると幾分損をしてきたような気持ちになります。
    これからはもう少し足元の草花たちに目を向けて生きようかしら。


  • #3

    けんぞう (金曜日, 05 6月 2026 19:07)

    いい登山でしたね。
    山の花はいいですね。派手に自己主張はしないけれど、ちゃんとそこにいる。
    最近、朝活の散歩で花を眺めることが増えました。咲き始める花もあれば、静かに役目を終える花もある。その姿が妙に人生に似ていて、以前より花が気になるようになりました。
    また素敵な花の写真や景色、食べ物等を見せてください。楽しみにしています。

  • #4

    シカマユキコ (土曜日, 13 6月 2026 10:24)

    山の花はいいですねえ。ヒーヒー喘ぎながら登る足元や、フト見上げる先で花と目が合うと、苦しさも吹っ飛びますよね。
    それにしても、1日でずいぶんたくさんの花に出会えた様子。だから、山はやめられない?