メールマガジン第129号>稲田顧問

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★【稲田顧問】タツオが行く!(第85話)

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「これまでのタツオが行く!」(リンク

85.

 

 私はメールシステムの迷惑メール対策は、極力使用しないようにしているので、毎日のように怪しいメールが飛び込んでくる。特に多いのは証券会社や宅配便会社、あるいはクレッジットカード会社である。決済ができないので至急アクセスするように等と誘い込もうとするのが常套手段のようである。

 電力会社やガス会社から未払い金があるので、早く対応しないと止めてしまうぞと脅してくるメールもある。最近あったのは国税庁からのメールで、脱税が発覚したので、今日中に払い込まないと資産を差し押さえるというようなメールも来たことがある。

 

 昔、一橋大学教授の野中郁次郎氏の「知識創造の経営」という本を読んだことがある。暗黙知と形式知というものがあり、情報ネットワークを活用して暗黙知を形式化し共有を図ることができれば、人間の発想はスパイラル的に展開するという考えである。情報ネットワークの有用性を述べたものであるが、この本を紹介して下さった三菱総研の村瀬一郎君によれば、「しかし現実はネットワークの中に存在する情報の9割以上は迷惑メールのようなものであり、それが我国のネットワーク環境を著しく悪くしている」とのことであった。なかなか理想通りには行かないということのようである。

 

 話は変わるが、私は建築構造を専門としていたこともあって、数値計算を通してコンピュータとの関わりの深い仕事をしていた。そんなこともあって、二十数年前のことであるが、東大教授の先輩と一献傾けていた折に、「算法通論」の非常勤講師を探しているのだが、もし良かったらやってみないかとのお誘いがあった。対象は建築学科と都市工学科に進学が決まった学生約100名で、駒場(教養学部)の2年生後期の講義(15回)とのことであった。それまで大学の非常勤講師は担当したことはなかったが、面白そうなお誘いと思ったので、快くお引き受けすることにした。

 講義の方法は、インターネットを活用して講義のホームページを作ってしまえば、講義の時にも、あるいは学生が予習・復習をする時にも、そこにアクセスすれば良いと考えて、その結果出来上がったのが次のようなサイトである。

 

算法通論の講義サイト

 

 講義の内容は敢えてここでは書かないので、興味のある方は上記のサイトを覗いてもらえばと思う。残念なことに所々、リンクが切れているのか、表示できなページもあるが、おおよそどんなことをしていたかは、分かるのではないかと思う。

 講義を担当したのは1999年から2001年の3年間であった。当時は未だパソコンは必ずしも全ての学生が持っているわけではなく、講義も大学が準備したパソコンの設置されている特別の講義室で行った。演習等で得られた成果はフロッピーディスクにセーブするという時代であった。本当はこのサイトを造ってしまえば、資料の準備も不要と思っていたのであるが、そうも行かず毎時間100人分のプリントを準備するのが、結構負担の多い仕事であった。

 

 中々面白い学生も居て、3年目のことであるが、第1回目の講義で「先生のホームページを見ている内に15回分の演習課題を全部終わらせてしまったので提出しても良いか」という強者の学生が居た。あるいは、渋谷から駒場東大前まで井之頭線で通っていると、よく学生と出会うことがあった。多くの学生は知らんぷりをしていることが多かったが、親しく話しかけてくる学生も何人か居た。ある日、「非常勤のSゼネコンのS先生はいつも黒塗りの車で大学に来られるが、なぜ稲田先生はいつも電車なのか」と聞いてきた学生が居た。真面目に応えるのも間が抜けていると思ったので、「黒い車に乗りければゼネコンに、建築の仕事を楽しみたければ設計事務所に勤めれば良いと思う。但しその場合は黒い車には乗れないかな。」というようなことを応えた記憶がある。

 

 建築学会の大会などで稀に、「先生お久しぶりです。」と挨拶してくれる若者がいる。どこで会ったのかと思うと、「算法通論」の講義でお世話になりましたとのことである。そのような体験ができるのも、非常勤の教員をやっていた楽しみの一つでもある。

 

(稲田 達夫)