メールマガジン第132号>稲田顧問

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★【稲田顧問】タツオが行く!(第88話)

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「これまでのタツオが行く!」(リンク

88.ベネズエラと選挙

 

 

 高校の地理の授業で、「ベネズエラ」をテーマにしたレポートに取り組んだことがある。随分前の話なので、なぜベネズエラだったのか経緯は定かではないが、当時のベネズエラは世界有数の原油の埋蔵量を誇る国であり、税金もなく教育費等も無償と、世界でも有数の豊かな国といわれていた。このような情報は、我が家には「平凡社世界大百科事典全32巻」があったので、それを調べればこの程度のレポートすぐに作ることができた。

 ただ、それだけでは何か物足りない気がしたので、本屋さんの岩波新書のコーナーを眺めながら必要な情報を探すのが、私の当時のやり方であった。その時読んだのが、どんな本であったかは残念ながら覚えていないが、その岩波新書を参考にしてベネズエラの経済は石油に依存し過ぎており、今のままで漫然としていたのでは、石油が枯渇した時に大変な事態を迎えることになる。石油がある内に独自性を持った新しい産業を興すことができるかがこの国の課題である、というようなことを書いた記憶がある。地理の先生は丸井先生といって、名前の通り温厚で穏やか先生であったこともあり、そのレポートは好評価であった。

 

 さて、今年の正月、そのベネズエラの大統領が米国に拉致されたというニュースが飛び込んで来た。最初は全く意味が分からなかったが、米軍は何発か爆撃を加えた後、米軍の特殊部隊がベネズエラに侵入し大統領を米国に連れ出したということのようである。米国の言うところでは、この大統領は不正な選挙で大統領になったので本来は大統領ではないそうで、さらに麻薬の密貿易にも深く関わっているとのことで、米国の法に照らして米国の司法省が逮捕したというようなニュースが流れていた。

 しかしいずれにせよ、どのような凶悪な犯罪者であったにせよ、国境を越えて引き渡しを行う場合には国際法に基づく正規のルールがあるはずであり、多くの報道機関は米国が重大な国際法違反を犯したとするニュースを流した。しかし一方でベネズエラの状況を見ると、多くの国民は逆に喜んでいるとのことであり、そもそも四分の一の国民は既に生活苦に耐え切れず国外に脱出しているのが実態とのことである。その人達も今回の米国の暴挙に拍手喝采を送っているとのことである。

 昨年のノーベル平和賞受賞者のマチャドさんという人とトランプ大統領のツーショット写真が新聞記事に掲載されたが、その記事ではマチャドさんは、「トランプ大統領こそがノーベル平和賞に相応しい」と絶賛しているとのことであったがいよいよ訳がわからなくなる。

 ただ60年を経た、私のベネズエラに関する情報の中で、多分2つ明らかになったことがある。一つは、ベネズエラがこのような事態に落ちいったのは必ずしも石油が枯渇したからではない。報道によればベネズエラは今でも世界有数の石油の埋蔵量を誇っているとのことである。この点に関しては60年前に書いた私のレポートは間違いであった。二つ目は、いかに国の状況が恵まれていたとしても、為政者が怠慢であれば国は落ちる所まで落ちるということである。このことは肝に銘ずる必要がある。

 

 さて今年に入ってからの2つ目の大ニュースは、我国の衆議院の解散総選挙である。多くの政党は消費税減税を掲げており争点もそれほどないことから、表向きは平穏である。しかしあえてベネズエラを対岸の火事として見るのではなく何らかの教訓を得ようとするのであれば、漫然としていれば60年もすれば国のあり様は大きく変わると言うことである。

 ベネズエラの様な事態にならないためには、国は短期的な小手先の事ではなく、確固とした長期的な展望を持っていなければならない。選挙についても様々な驚くようなニュースが毎日飛び込んで来るが、ここは原点に立ち戻って冷静に精査して、60年先、百年先の我国の在り方を考えながら清き一票を投じる事が重要ではないかと特に思う昨今である。

 

(稲田 達夫)